ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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肉が食いてえ。


21話 残酷な施し

モリン村で商売をする。

 

チートは気持ちいいが、露骨なダンピングをやって無駄に敵を作った挙句、俺の仕事も増えるとかになったら困る。

 

なので、チートはガンガン使っていくが、チートな商品はガンガン高価にしていくこととする。

 

安値で良い製品を売るのは、現地産業に対する経済的な侵略行為である!

 

良かれと思って?なんだてめー、バリアンか?

 

安くて品質の良いものを売ればみんなハッピーだと?世界がそんなにシンプルだと?

 

俺達ガキじゃ考えられんくらいに難しいんだよ、世の中ってやつは。

 

確かに、心情的には、現地人が死のうが何しようが知ったこっちゃないさ。だが、周囲全てに喧嘩を売るほどサイコパスってねえんだわ、俺らは。

 

「あ、あの……」

 

おや、土臭そうな貧農のメスガキ。

 

薄汚れたボロ服を身に纏い、枝毛だらけの髪を乱雑に縛った、サンダルのガキ。

 

「今日は、わたしの弟のお祝いの日なの……。弟においしいものを食べて欲しくて……」

 

なるほど。

 

知らねーよボケ。と、言いたいところだが……。

 

お祝いの日ってのは……、このガキが大体八歳くらいだと見れば、弟は七歳ってところか?

 

この世界は、中世的な世界観だから、公衆衛生も医療もガバガバのガバァーナ。

 

つまり、ガキなんてすぐにコロッと死ぬ訳だ。

 

こういう貧農みたいな連中は、乳児の段階で三割から五割が死ぬとかなんだとか。

 

そんな訳で、七歳でのお祝いってのは、七歳まで生きられたのを祝うってことみたいだな。

 

七五三みたいなアレだな。

 

貧農には、この七歳のお祝いと、十五歳の成人のお祝い以外は晴れの日とかないそうだ。あとは結婚した時とか、子供が生まれた時とかかね?

 

あーカワイソー。

 

こういう時は、なろう主人公さんのような『施し』をしてやらなきゃなぁ?

 

「お嬢ちゃん、口を開いてごらん?」

 

「え?あーん」

 

うわぁ、疑うことを知らんのかよ。

 

変なもん突っ込まれるとか考えないのかね?

 

……チ◯ポだと思った奴は出頭しろ。俺は麻薬の類を思い浮かべた。

 

無防備に知らん人の前で口を開いたら、怪しい薬とか飲まされるかも……、って考えないのかねーって話。

 

ああ、いや、このガキにそんな価値はないってことか。

 

命が安いってやーね。

 

ほいっと。

 

舌の上に金平糖を乗せてやる。

 

「んっ……?!お、おいしいっ!」

 

貧農のメスガキは、目をキラキラと輝かせ、恐らくは生まれて初めて味わったであろう甘味に酔いしれていた。

 

その証拠に、このガキは「甘い」と言わずに「美味しい」と言った。

 

生涯の中で、甘いものを食べたことがないから、甘いという表現を知らないのだと思われる。

 

「ほら、これが美味しいものだぞ。弟がお祝いなんだろ?特別に安く売ってやる」

 

瓶に詰まった金平糖を見せる。

 

「これ、100フロレンでも買えるの?!」

 

フロレンってのはこの辺の貨幣単位だ。

 

1フロレンで十円くらいかなあ。

 

貧農のガキからすれば、千円でも大金ってことだろう。

 

「特別だぞ、他の人には秘密だ」

 

「うんっ!絶対秘密にするっ!」

 

と、本来なら小瓶一つで5000フロレンは下らないであろう高級な甘味を、そこらの貧農のガキに『恵んで』やる。

 

いやぁ、良いことをやると気持ちがいいナァ。

 

ん……、ああ、この世界では砂糖は舶来品だからな。小瓶一つの金平糖で、五万円はするだろうよ。

 

おや、またもやヨミがキラキラした目でこちらを見ている。

 

「あのような高価なものをあれほどの安値で……。素晴らしい仁徳でございます!」

 

んーん?

 

何言ってんだ?

 

「いや、ぶっちゃけ腐れ外道だよね」

 

とリンドが半笑いで言った。

 

「なっ?!何故でしょうか、奥様?!」

 

「だってあの子、貧農でしょ?甘いお菓子なんて今後一生食べられないのに、甘いお菓子の味を覚えさせるの?」

 

「そ、それは……。ですが、あんなに喜んでいましたし……」

 

「あの子を本当に助けたいなら、お菓子が継続して食べられるようになる為の教育をしてあげるべきなんだよね」

 

「きょ、教育……?」

 

ふむ、まさにその通り。

 

俺が口を開く。

 

「俺の世界には『授人以魚 不如授人以漁』という言葉がある」

 

「え、えっと……?」

 

「意味は、『人に魚を与えれば一日で食べてしまうが、釣り方を教えれば一生食べていける』と言った感じの意味だ」

 

それを聞いたヨミはしばらく考える素振りを見せてから、言った。

 

「……つまり、一時だけの施しは人の為にはならないと?」

 

「そうだな。一度だけ贅沢の味を覚えさせた人を野に放つなんて、残酷な仕打ちだ」

 

「それは……、そうかもしれません」

 

「本当にあの子を助けたいなら、勉強を教えて、礼法を教えて、自分の力で美味しいお菓子が食べられるようにしてやるべきだ。違うか?」

 

「で、でも、それは大変なことです」

 

「そうだな、大変だ。だが、そこまでやらなきゃ人を助けたことにはならないんだよ。自分が気持ちよくなりたいから恵んでやるってのは、善行じゃなくって単なる自慰行為だ」

 

そう言って俺は、店をたたみ始める。

 

あ、店だが、馬車は三台あるから、それに荷物を積んでいるということにしてあるぞ。

 

「高らかにオナニー宣言?」

 

「今そのネタ知ってる人もういないと思うぞ」

 

 

 

その夜。

 

宿場町の宿を二部屋借りた。

 

男女に分かれるとかそう言うんじゃない。

 

片方にヨミ。

 

もう片方に俺とリンド。

 

何故か?

 

「雑貨召喚でコンドーム出せたぞー!」

 

「わあい」

 

つまり、そういうことである。

 




とにかく手を動かしてから考えるタイプなので、プロットを組んだ試しがない。

精々、第一部までのプロットを組んだら、ヒャア我慢できねえ!とか言って本文を書き始めちゃう。

こーいうところ直したいんだよなー。

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