さて、勇者サマを帝都に送り届けなきゃな。
なるべく寄り道せずに、真っ直ぐに帝都に向かおう。
とは言え、本当に馬鹿正直に真っ直ぐに進むと迷うからな。
この世界はナーロッパなので当然、道なんて整備されていない。
街道以外を歩けば、盗賊やモンスターに襲われて、もしくは迷って野垂れ死にだ。
我々は既に、生活に必要なもの全てを自弁できるので、道無き道を行っても平気ではある。
「だが、そんなことをしたら100%道に迷うだろう」
「『道(タオ)』に迷う?」
「『道(タオ)』には迷ってねーよ」
「ゲキゲキカゲキに?」
「上半身グルグルロボやめろ」
「売り上げ悪かったらしいね」
「俺は好きだったんだがなあ……」
そんな話をしつつ、俺達は次の街を目指す。
行き先は、この国最大の穀倉地帯である『ソウルズベリー公国』……、『ラッセル公爵』の領地だ。
このソウルズベリーは、見た感じでは地平線の果てまでずうっと麦畑が広がっていることから、相当広いんだろうなと察せられる。
モンスターによる襲撃対策のためなのか、畑の途中途中に広めの道が通されていて、一面の麦畑が燃えたりしてダメになってもリカバリーが効くようにされているんだろう。
また、麦畑はちょうど収穫の時期らしく、多くの農家が大鎌を振るっている。大鎌とは元来、麦を刈るためのものなのだ。決して、命を刈り取るものではない。
農家達の動きに合わせて、兵士らしき人々も巡回している。たまに近寄ってくる害獣のような草食モンスターを、手持ちの槍で突っついて追い返しているようだ。
麦は……、この国では珍しい高級な乳麦が多い。
道を歩く農家と世間話をしてみれば、ここは魔法的に豊かな土地だそうで、ここで、帝都と、ゴルディアス辺境伯領の一部と、その他の領地三箇所に送る乳麦の殆どを生産しているそうだ。
魔法的に豊か……、つまり、龍脈みたいな意味らしい。
土の良し悪しではなく魔力の有る無しの話な辺り、いかにもファンタジーだ。
もちろん、土がいいにも越したことはないそうだが、どちらかと言えば魔力の有る無しの方が優先的に見られる観点なんだとさ。
魔力が多い場所だと、人も、家畜も、植物も皆豊かに育つんだと。
要するに酸素濃度みたいなもんだろうかね?
酸素めっちゃたくさん注入された水槽では、魚がデカくなるとか聞いたことあるなー。
さて、そんなソウルズベリーの首都である『ストローべ』にやってきた我々。
俺達はとりあえず、このストローべで一晩休んだら、帝都にまっすぐ向かう予定だ。
途中で、宿場町の『ヘービーチ』『ツルコモ』を経由して、帝都に入り、帝都の『ハシュマリム』に行く。
うむ、完璧だ。
で、ストローべだが。
思いの外、街は綺麗だった。
ゴルディアス領はもそうだが、街が綺麗。
王国はかなり汚かったし、窓から糞便を投げ捨てる系だったのに対し、これは凄い事だ。
何故か気になったので、その辺の人に聞いてみたところ、糞便は回収されて肥料にされるそうだ。
江戸かな?
なんでも、昔の召喚勇者に堆肥の作り方を知っている人がいたらしく、帝国ではそれが受け継がれていたらしい。
王国では失伝している技術みたいだ。
なんで王国では……、と聞くと、王国は三百年前の魔王復活の時に多大な被害を受けたからだとか。
じゃあなんで三百年程度であんなに復興してるんだ?
謎が多いなこの世界。
まあ、臭いのは耐えられるがね。
旅行を繰り返した我々は、発展途上国で何度地獄を見たことやら。
アフリカとかもうね、空港に着いた時点でクセェからね?いや、侮辱じゃなくて事実の話。
そもそも、日本が綺麗過ぎるんだよ。
観光地とかはまだ綺麗なんだけど、田舎の方まで行くと中近世レベル……、みたいな国は世界にたくさんある。
地球人だからって文明人を気取っちゃダメだなあ。
まだこの世界ではそんなシーンは見ていないが、もしかしたらこの世界の人に「えっ?地球人は◯◯しないんですかー?遅れてるー!」とか言われるかもだしね。
と言うより、日本人は散々言われてたと思うよ。ペーパーレス化やらハンコ文化やら……。
かと言って進んだ文明だから優れているとは限らないしね。
進み過ぎて娯楽本一つとっても政治的正しさが盛り込まれている……、みたいなのは、どんなに進んだ文明でも俺はごめんだね。
では早速、余計なことをせずにそこそこの宿をとって休むか。
俺の判断は間違っていないはずだ。
面倒ごとを避けて、迅速に行動していた。
それなのに、逃れられない事件を指して、人はそれを『運命』と言うのだろう。
最近、スマホやパソコンが重いんだけど、回線が悪いのかそれともハードが悪いのか……。