書きたいものがたくさんだ!
「あのっ、提督!」
大和は、満面の笑みを浮かべて、部屋で寝転がる狂死にすり寄った。
提督候補生の私室は、クイーンサイズのベッドが七つもある大部屋である。
部屋の作りも高級ホテルと見紛うほどで、装飾、飾り気は少ないのであるが、その飾り気のなさが逆に、上品さを醸し出している。
金箔だ宝石だと、目に見えた輝きを求めるのは所詮成金。本当に富める者らは、むしろごてごてとした華美さを避ける。
そんな最高級の部屋で、大和は、狂死と絆を深めるためにコミュニケーションを取ろうとした。
「提督、よろしければ、お名前を教えていただけますか?」
「狂死だ」
「キョウジ提督ですね!素敵なお名前です!」
「……素敵なお名前、だと?」
絶対零度の視線が大和を射抜く。
「え?ええ……」
「狂い死にが良い名だと言うのか?俺にお似合いだと?」
「え……?」
褒めたのに、何故怒られているのか分からない大和は、困惑していた。
「名札を読め」
狂死に上着を投げつけられ、内側の胸元に縫い付けられた名札を見る。
「槻賀多……、狂死?!!!」
大和は仰天した。
実の子に「狂い死に」などと言う名前をつける親がいるとは、思ってもいないことだったからだ。
狂い死にが良い名だと褒められれば、それは怒る。
大和はこの時、自分が酷いミスをしたことを自覚した。
即座に土下座の体勢になり、心から詫びる大和。
「申し訳ありません!まさか、提督が……、このような名前であるとは夢にも思わずっ!!!」
「いやあ、構わねえよ、正直に言ったらどうだ?狂い死にの名はぴったりだとな」
「そんな……!私は提督のことを敬愛しています!狂い死になどとは!」
「敬愛?今さっき会ったばかりの俺の何を知っているんだ、お前は。何も知らないくせに敬うだとか愛するだとか……。薄っぺらだな」
「う……!で、でしたら、知る努力をします!それに、私達艦娘は、生まれた時から提督のことが好きなのが普通なんですよ?」
「ハハハ……、道具の分際で?兵器が色恋などと……、日本海軍のユーモアも捨てたもんじゃねえなあ?」
「本当なんです、ジョークじゃありません!鳥のすり込み学習のようなもので、自分の提督のお姿を一眼でも見ると、愛おしくなってしまうのです!」
「なるほど」
狂死は笑った。
「提督だからか。提督になら股を開くのか。コミュニケーションを積み上げることもなく、提督なら何でも良いのか」
「ち、違います!私の提督は貴方だけで!」
「じゃあ、俺が提督じゃなくなったらどうする?」
「そんなこと、絶対にあり得ません!」
「提督なんてもの、いつ辞めたって良いんだぞ」
「その時は、私はただの大和として、貴方にお仕えします」
狂死は大和の言葉を微塵も信じていない。
人だろうと艦娘だろうと、都合が悪ければ他人を切り捨てる獣だと思っているし、自分自身がそうだからだ。
大和も、自分が弱みを見せれば裏切ると思っている。
ついでに言えば、本能的に、大和が自分より強いことも察していた。
故に、見かけは何事もないようにしているが、内心では最大限に警戒している。
「もう良い、視界から消えろ」
「は、はい……。大和は退室します」
そして、次の日……。
になる前に、夜中に叩き起こされる狂死。
「起きたまえ!起きたまえ、槻賀多候補生!!!」
叩き起こしたのは教官だ。
「何だ?」
「何だではない!何故、大和殿を室外で寝かせているのだ?!!」
「何か問題でもあるのか?」
「ある!自身のパートナーたる艦娘を、寒空の下に放り出すとはなんたることか!!!」
「俺に文句があるのか?」
一段、狂死の声が低くなる。
その剣呑な雰囲気を察して、教官は、争いを避けるために態度を少し軟化させる。
内心、「何で扱いにくい奴だ!」と悪態をついているが、それを表に出さないあたりが人間性と言うか、大人と言うか……。
「文句とは言っていない。ただ、同じ部屋で寝せてやって欲しいだけで……」
教官は、努めて柔らかい声で、助言をするが如く言った。
「駄目だ」
しかし、狂死は、そんな程度で首を縦には振らない。
「何故だね?」
「寝首をかくからだ」
「わ、私は決してそんなことは!」
大和が、悲しそうな表情を見せる。
愛する提督に警戒されている事実は、大和の心を傷つけた。
多少の警戒心は理解できるが、寝首をかくと断定され、偏見の目で見られるのは辛い。
「口だけでは何とでも言える。お前のような奴はすぐに裏切るんだよ」
やたらと、実感が篭っている言葉だった。
裏切られた経験があるのだろう。
「やりません……、私は提督が好きなのに……」
心ない言葉を浴びせられ、ついに大和は泣き出してしまった。
「チッ、うるせぇな。女ってのは泣けば良いと思っていやがる……」
「提督、提督っ……!私は本当に……」
「槻賀多候補生、大和殿を部屋に入れなさい」
「断ると言った」
「……手錠と鍵を用意する。大和殿を縛り付けても良いから、部屋に入れなさい」
「何故そこまでする?」
「提督と艦娘は一心同体なのだ」
「………………」
無言で睨みつける。
狂死が聞きたいのは、そんなおためごかしではない。
「……はあ、分かった、正直に言おう。艦娘が強くなるには、三つの方法がある。一つ、艤装を妖精に改修してもらう。二つ、戦いの経験を積む、そして三つ……、提督と絆を育むことだ」
「絆?」
「ああ。同じ時を過ごし、共に訓練して、同じ釜の飯を食い、そして……」
「……そして?」
「愛し合うことだ」
「……じゃあ、何だ?これを抱けと?」
さしもの狂死もこれにはたまげた。
抱けば強くなる兵器など、そんなふざけた存在がいていいのか?と。
「そう思ってもらって構わない」
そう……、この世界は、絆強制オンラインなのであった。
「やってらんねー……」
結局、大和は部屋の中で寝れることになった。
しかし、ベッドに縛り付けられているのだが。
「あ、あの、提督?」
「何だ?」
「寝る前に、その……」
「言ってみろ」
「撫でてくれますか?」
「……その程度でお前は強くなるんだな?」
「は、はいっ!もちろんですっ!」
手錠と鎖で拘束されて、ベッドの上に転がされた大和が目を輝かせる。
「ほらよ」
がしがしと、頭を撫でられる大和は……。
「えへへ……♡」
ご満悦であった。
ローグライク、28話くらいまで書けた。
でも、あんまり面白くないかもしれない……。
俺、やっぱり三人称で書くのに向いてないのかな……。