さて……。
早速転生させられた訳だが。
俺は、秋田大和……、いや、これは……。
自分の名前を認識できない?
名乗っているのに、他人の名前のように感じると言うか……。
最初に、名前を設定しろ(なお地球での名前は不許可)とされていたので、《灰の玉座》で一番使い込んだキャラクターの名前を書いたのだが……。
そう、『シャールノス』と……。
それが、一番しっくり来る。
なるほど、秋田大和は死んだんだな。
割り切ろう。
では早速、身体の試運転だ。
近くにある湖で顔を見る。
うん、顔の形は変わっていないな。
『翅』と『尻尾』『触手』も、生まれつきについていたかのように自由自在に動く。
その辺にいる『ウサギ』に、『狂気波動(インサニティウェーブ)』スキルを発動する。
『ピギィィィッ!!!』
うん、発狂死させられたな。
スキルは使える、と。
他のスキルも試しておこう。
ここはどうやら、バニラ(MODなどを追加していない状態)の《灰の玉座》におけるスタート地点、『始まりの野営地』だな。
この始まりの野営地では、最弱クラスのクリーチャーが周りに湧いていて、採掘ポイントが複数あり、最低限の道具が打ち捨てられた小屋があるのだが……。
「……デカくないかね?」
小屋は倉庫並みに大きかった。
小屋の中に入ってみると、いくつかの装備と素材、金、食料、薬品などが転がっていた。バックパックに寝袋、つるはしや作業ハンマーなど、あると嬉しいアイテムも山ほどある。
「な……、なんて激甘なんだ……?!このゲームの@(プレイヤー)は、ダガーナイフ一本と布の服と木製のサンダル、それと松明と小銭だけで放り出されるのが基本なのに……?!」
しょ、初期装備だと……?
なんて優しいんだ!
あの神、相当な善神なんだろうな。
慈悲に溢れている。
俺は、装備を躊躇いなく拾う。
「うわ、しかも呪われてないし……」
普通、ローグライクゲームにおいては、拾ったアイテムはそこそこの確率で『呪われている』ものだ。
ゲームによって方向性は違えど、呪われたアイテムは、マイナスの効果を持っていたり、装備すると外せなくなったりとデメリットが大きい。
例えば、『軽傷治療のポーション』が呪われていたとして、それを飲むと、本来回復するはずの回復量と同じ数値のダメージを受けてしまう。
故に、『鑑定』の魔法を使ったり、街にいる鑑定屋を利用して、呪いがあるかどうかを調べなければならない訳だ。
そうじゃなくても、鑑定しなければ、拾ったものはただ『長剣』とか『青い薬』とか、表面的なことしか分からないからな。
鑑定して初めて、どんな素材の、どんな力を持つ道具なのかが分かるんだよ。
まあ、俺達@も馬鹿じゃない。
見ればある程度分かるところもある。例えば、今俺が手に持っているのは鉄の剣だと、質感でなんとなく分かる。鉄の剣だから、そこそこの攻撃力はあるだろうと言うことも。
このように、自然に、部分的に鑑定されることもあり得るとは言っておこう。ゲームシステム的にはこれを『自然鑑定』と言う。
だが……。
俺は最初に、とあるチートな性格を選んだので、視界内のアイテムは常に『*鑑定*』されると言うことも宣言しておこう。
さて、ここにあるアイテムは全て、呪われても祝福されてもいない。また、劣化してもいないし強化されてもいない。
材質は低ランク定番の『木』『革』『銅』『鉛』『鉄』と言ったところだ。
もちろん、高ランクは『ミスリル』『アダマンタイト』『オリハルコン』『ヒヒイロカネ』辺りの素材だ。これは、ダンジョンのより深いところで出る。
ああ、だが、武器種はバラバラだな。
刀剣もあれば鈍器もあり……、とバラバラ。
とりあえず、俺は腕が二本と触腕が六本あるので、八本くらい武器をもらって行こう。
まず、このゲームの初期状態では、腕の数+1の武器を装備できる。
基本的に、利き腕に武器、利き腕じゃない方に盾、背中に遠隔武器(弓など)を装備することがオススメとされている。
だが、重い武器を一本だけ装備して、『両手持ち』する場合や、二本の軽い武器を持つ『二刀流』というスタイルもある。
腕がたくさんある場合は必然的に多刀流となるのだが……、その際に装備するといいのは、この段階ではこうだろう。
まず、メイン武器に『両手持ち』の『グレートソード』だ。
腕がたくさんあると、『両手持ち』スキルと『二刀流』スキルを並列で使える。
つまり、武器を六本の腕に六本ずつ装備して、残りの二本の腕で特大剣を両手持ちしようってことだ。
めちゃくちゃズルいように思えるが、腕を増やすのは難しいからなあ。
苦労を考えると当然のご褒美って感じだ。
いや、俺は何も苦労してないんだが。
だが、普通の人型種族が腕を増やすとなると、割とやり込む必要があるし……、そして何より、ラスボス撃破後に解放されるエクストラダンジョンでは、腕を増やしたとしても勝てないんだよな。
真っ当な鍛え方では、裏ダンジョンは攻略できない。
最終的にカンストすれば誤差みたいなもんだよ腕の数なんて。
そして、斬撃武器の『サーベル』、刺突武器の『スピア』、打撃武器の『メイス』だ。
それと、魔法威力を増幅する『ワンド』と、高い防御力を誇る『タワーシールド』と、相手の攻撃を弾ける『バックラー』だ。
うーん、サーベル無くして盾をもう一枚持っても良いかな?『盾殴り』スキルもあるしなあ。
いや、ステータス的に考えて火力と手数を増やすべきだな。
この種族は、全スキル、全ステータスが1000だから、それを前提として考えると、武器を多めに持つ方が有利だろう。
『盾殴り』は、殴った相手を『朦朧』状態にする技能なんだが、盾は攻撃回数が伸びないからな。
このゲームで最も重要な数値は『速度』で、次に重要なのは『攻撃回数』だからな。
遠隔武器は『ロングボウ』を三本持っていけば良いだろう。
さて、武器での戦闘も軽くやっておこうか……。
『ヂュイ』『ヂヂヂ』『シャーッ』
棘モグラ、岩肌トカゲ、白ヘビか。
どれもレベル1の雑魚モンスターだな。
「はあっ!」
速度1000の踏み込み。
人型のクリーチャーの平均速度が50前後なので、俺の速度はそれの二十倍ということになる。
このゲームは『ターン制』の世界な訳だが、速度が相手の二十倍ということは、相手の一ターンの間に二十ターン分行動できるということである。厳密に言えば違うのだが、少なくとも、相手が一歩進む間に二十歩進めることは確かだな。
だから速度は大事なんだよ。
しかもそこに、腕の多さや、技巧によって、一ターンで何度も攻撃できるとしたら?
つまりこうなる。
俺の触腕が凄まじい速さで蠢き、触手の先端に握られた武器が踊る。
素晴らしい技巧と恐ろしい筋力によって振るわれた武器は、猛烈に強力な一撃を目の前のクリーチャーらに叩き込んだ。
『『『プゲッ』』』
棘モグラは斬撃でミンチになった。
岩肌トカゲは刺突でミンチになった。
白ヘビは衝撃でミンチになった。
俺は、頭の中にそんな言葉が思い浮かんだ。
『〜はミンチになった』というのは、その存在の総HPの三倍以上のダメージを与えたときに表示される文章だ。
普通に倒せば『〜を殺した』、二倍オーバーキルすれば『〜を抹殺した』となる。
因みに、ミンチにしても何故かドロップアイテムは残るし……。
「えい」
『解体』スキルで解体して肉や皮を剥がすことができる。
すると、明らかにおかしいサイズの塊肉と生皮が得られた。ミンチから。ミンチなのに。
何故かは考えてはならない、この世界はそういうものだと理解しろ。
で、この肉と、倉庫からパクってきた小麦粉で……。
『料理』スキルを発動、と。
はい、『ヘビ肉のハンバーガー』完成。
一分で小麦粉と塊肉からハンバーガーができた時間的な問題とか、間に挟まれている野菜とケチャップがどこからきたのかとか、そういうことは考えてはならない。
そういうものだと理解しろ。
試しに食べてみる。
うむ、美味い。
で、この生皮を、作業台で加工して……。
はい、『鞣したヘビ革』が完成。
で、これを裁縫道具で加工して……、『ヘビ革のポーチ』が完成だ。
よし、大体理解したな。
じゃあ次は……。
ん?
「転生だー!」「やべー!エルフ耳だ!」「ネコミミかわいー!」
おっと、他の生徒も来たみたいだな。
もー全然だめ。
文章が削れねぇ……。
下手に設定を分厚くすると、設定を語りたい欲が出てきて、文章が削れなくなるな。
「いやぶっちゃけこんな説明いらんやろ」ってのと、「いや書かなきゃ理解されねーよ」ってのが鬩ぎ合い、死ぬ。