ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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おなかいたい。


『アウターゴッド』は七色のGで表現されます

坂東高校の人々は、四十人の『異形組』と、それ以外の『人間組』に分かれた。

 

「お、おい!見ろ!」

 

「な、何だあいつ?!」

 

「モンスターだ!」

 

大多数、千人にも達する人間組のグループは、異形組に指を指した。

 

「待ちたまえ!私だ!生徒会長の龍造寺だ!」

 

そう叫んだのは、元生徒会長の龍造寺麗華。

 

この世界での名を『ローズ』という。

 

その姿は、後頭部に伸びる二本の角、頬に鱗、四本指の鱗に覆われた手足には鋭い爪があり、背中に翼膜と尻尾。瞳は縦に割れた爬虫類の瞳孔で、牙は鋭い。そんな相貌だった。

 

この種族を、この世界では『ドラゴニュート』という。

 

第一文明ドラゴニアの生き残りにして、『完全なる生命』であるドラゴンの力を持つ人類種だ。

 

元素に対する耐性を生まれつき持ち、筋力や耐久のステータスがとても高く、羽により浮遊している。更に、最初から『炎のブレス』のスキルを習得している。

 

筋力は物理的な攻撃、耐久は物理防御力や最大HPに主に関係する数値である。

 

浮遊していると、落とし穴などの一部のトラップを無効化する。

 

全体的に、とても優れた種族であることは間違いない。

 

その代わりに、レベルアップに必要な経験値が多く必要になり、隠密性が皆無で、空腹になりやすいという欠点がある。また、器用のステータスも少々低い。

 

何にせよ、ドラゴニュートは、現時点においては、人間組が三人で囲んでやっと倒せるくらいの戦力を持っているのは確かだ。

 

「私達は異形種でキャラメイクをさせてもらった。諸君らと姿形は違うかもしれないが、人の心まで失った覚えはない!」

 

続けて、そう宣言するローズだが……。

 

「何言ってんだよ!どう見たって悪魔だろ!敵キャラのモンスターだ!」

 

「そうだ!モンスターは消えろ!」

 

「化け物め!」

 

「「「「消えろ!化け物は消えろ!」」」」

 

周りの人間組にそう言われて、詰め寄られていた。

 

もちろん、人間組の中にも……。

 

「や、やっぱりさ、差別は良くないんじゃないの?」

 

「そうだよね、人種差別はダメだよね……」

 

「でも、怖くない?」

 

などという意見をこっそりと囁き合う生徒は多く存在していた。

 

しかし、こう言ったことは、声の大きい人間が、「そうしなくてはならない空気」を作るもので、その空気に逆らえる人間はそう多くはない。

 

いじめなどと同じで、一部のいじめっ子が大きな声で喚き、いじめをしなければならない雰囲気を作る。そうすると、大多数の「事なかれ主義者」達もそれに追従する……。

 

それが、社会というものだ。

 

だが……、世の中には。

 

「何やってるんだ?」

 

空気を読まない人間がいるということも忘れてはならない。

 

現れたのは、種族を『アウターゴッド』、職業を『@』、性格を『いんちき』にした、チートの化け物。

 

禍時の闇のように黒い肌、黎明の光のように輝く白い髪、そして、煌めく金色の瞳。

 

身体のバランスはどんな芸術品よりも美しく、その声音はまさに傾国の美声。

 

しかし、背中には得体の知れぬ生物的な翅があり、更に六本の青ざめた触腕が生えていた。

 

『アウターゴッド』……、神話にて語られる、外なる神。

 

美しさと悍ましさが同棲した神話的存在を目にした生徒達は、皆息を呑んだ。

 

「き、君は、もしかして……、大和君なのか?」

 

ローズがそう訊ねた。

 

「そうだ。今回はシャールノスと名乗っている」

 

「そうか……。大和君、いや、シャールノス君。どうか、我々に力を貸してもらえないだろうか?この世界をクリアした経験が何度もある君の知恵を貸して欲しいのだ!」

 

シャールノスは、頭を下げるローズを一瞥する。そして口を開き……。

 

「多少助言する程度なら構わないが、こんなには面倒を見きれないぞ」

 

と言った。

 

シャールノスは冷酷な人間ではあったが、友人を見捨てるほどではなかった。

 

一定以上のデメリットがあれば、知人友人どころか身内すら切り捨てるが、逆に言えば、デメリットが小さければある程度は助けてくれる。

 

だが……。

 

「お、おお、お前も化け物じゃねーか!」

 

「そ、そうだ!消えろ!」

 

「いや、モンスターだから、倒せばレベルアップするんじゃないか?」

 

人間組は、このように、酷い態度をとった。

 

「君達はっ……!良い加減にしないかっ!経験者であるシャールノス君に助言を聞くのは当然だろう?!礼を欠くものではないぞっ!!!」

 

ローズは怒りの表情を見せた。

 

ローズは、この状況で最も頼りになる存在に頭を下げるのが正解であると思っているのだが、周りの人間組はそうではない。人間はそんなに利口ではないのだ。

 

前に出たのは、霧谷竜也……、この世界ではレックスと名乗る男だ。

 

「そいつがこの世界のモデルになったゲームをやったことがあるのは分かった。けど、そもそも、この世界が完全にゲームと同じとは限らないだろ?」

 

レックスは、人間組の中心的存在となったことによる増長と、生来の人格の歪みから、元生徒会長であり年長者であるローズに対してもぞんざいな口調で話した。

 

前までは、生徒会長に対しては謙った態度を見せていたのだが、それとは打って変わってこれだ。

 

完全に調子に乗っている。

 

その根拠はこうだ。

 

「それに、俺は《シャドウベインズ》で、トップギルドに所属していたんだぜ?化け物に成り下がったそいつより、俺の方がゲームは上手い!」

 

つまり、VRゲームで活躍できていた自分は、ゲームの世界に来たからには活躍できるということだ。

 

「竜也君、さっきも言ったが……!」

 

「あーあー、はいはい!分かってんだよ!どうせ難しいとか何だとか、そうやって脅したいんだろ?」

 

「分かっているなら何故!」

 

「でも、悪いけど無駄だぜ。俺だけじゃなくって、こっちには《シャドウベインズ》の上級プレイヤーが沢山いるんだよ!大体にして、生徒会長だからって偉そうにするなよな!もうここは別の世界なんだからな!!!」

 

ローズの忠告を全く受け入れないレックス。

 

一応、根拠のない自信という訳ではなく、VRゲーム《シャドウベインズ》において、レックスはトップ級のプレイヤーであったことは確かで。

 

《シャドウベインズ》は、課金すれば簡単に強くなれるゲームなのだが、全くプレイヤースキルが不要という訳でもなく、レックスは一般人と比べればずっと戦える能力があることもまた確かだ。

 

むしろ、VRの世界で身体を動かしてきた分、実戦経験は豊富と言って良いかもしれない。

 

「……分かった、もう結構だ。皆に問う!こちらのシャールノス君は、この世界について非常に詳しい!彼の教えを受ければ、最低限、路頭に迷うことはないだろう!」

 

だが、と言葉を切って、ローズは続けて叫んだ。

 

「だが、彼が気に食わないと言うならば、好きにしたまえ!こちらの竜也君が言うように、最早私達は学生ではない!他人に頼らず、自分で考えて行動せねばならないのだ!諸君らの健闘を祈る!!!」

 

それは、優しいローズにしては、かなり突き放した言葉だった。

 

再三にわたる忠告を全て無視し、自分勝手な行動をとるか、思考停止して人数の多いグループについていくだけの風見鶏。

 

流石のローズも、愛想が尽きると言うものだ。

 

だが、これにはローズにも非があった。

 

ローズのように、恵まれた家庭で育ち、端麗な容姿を持ち、勉学や運動、芸術に礼法と言ったあらゆることが熟せる、嫌味なくらいの完璧超人は、得てして、常人の気持ちを考えられない。

 

恵まれた家庭を持たず、得意なことなど何もない凡人からすれば、彼女はあまりにも眩し過ぎた。

 

経験者であるシャールノスの言うことを聞くのは、最善手にして正論ではあるが、正論は人を救わないのだ。

 

彼女は、もう少し、小人の妬心を知るべきであった。

 

そんなローズの言葉を聞いて、その通りに好き勝手するのはほんの一割から二割ほどで、殆どは何もできないでいた。

 

「ど、どうする?」

 

「どうすればいいの……?」

 

「で、でも、生徒会長のグループは人が少ないし……」

 

そもそも、平和ボケした日本の高校生が、緊急時に主体性を持って動けるだろうか?

 

そんな訳はない。

 

何となく、「こっちの方が人が多いから」くらいの理由で動くはずだ。

 

この坂東高校の生徒達も、最終的には、その通りにレックスが率いる巨大なグループに「なんとなく」でついて行った。

 

より大きい群れに入るのは、動物として当然の反応ではある。

 

問題は、そちらはハズレだと言うことだが。

 




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