何故か気狂い扱いされてしまったが、この世界はこれがデフォなので慣れろとしか言いようがない。
さて、野営だ。
まず、背嚢にしまっておいた『焚き火』を出す。
「………………は?」
何故だか周りが唖然としているが……、ああ、そうか。
「『焚き火』は家具オブジェクト扱いだから、鞄にしまえるんだよ」
「ん、おお、あ、あー?……うむ!考えないことにしたぞ!」
ローズは思考を放棄したようだ。
「とりあえず、俺は種族的に睡眠が必要ないから、夜の見張りをしておく。お前らは早く寝ておけ」
俺はそう言って、その辺に腰を下ろした。
「む……、そうか。ありがとう、シャールノス君。皆!聞いたな!明日も早い、各自、寝ておくように!」
夜中。
「あの、大和君……?いえ、シャールノス君?」
おっと、幼馴染みの文乃、今はアヤか。
足のない、浮遊するゴーストになった姿で、俺の隣に座……、座ったのかこれは?浮いてるから分からんな。
「どうした?」
まあ、どうでもいいか。
俺は、用件を聞いてやる。
「あ、あの、その……」
「何だ」
「た、助けてくれて、ありがとう……」
「それで?」
「そ、それだけですよ……?」
それだけか。
「その……」
まだ何かあるのか?
「何だ?」
「眠れなくて……」
は?
「当たり前だろ、ゴーストに睡眠は必要ないぞ。まあ、寝ようと思えば眠れるらしいが」
「そうなんですか……。じゃあ、朝まで隣にいても、いいですか?」
はあ。
「好きにしろよ」
「うん……」
ん?
隣にぴったりとくっ付いて来やがったな。
ふむ……、やはり、前々から思っていたが、こいつは俺に気があるんだろう。
控えめな性格だから、そこまで露骨なアプローチはしてこないのだが、しつこく付き纏って来やがる。
だが……。
「お互いこんな姿になったのに、まだ恋心とやらは萎えないのか?」
純粋な疑問だ。
そう聞いてやると……。
「やっぱり、気付いてたんじゃないですかぁ……!」
あ、ゴーストも顔が赤くなるのか。
面白いな、どうなってるんだこれは?
「わ、私っ、いっぱいアピールしたのに、何で見て見ぬふりをしてたんですか……?!」
何で?
いやそれは……。
「めんどくさいし……」
「……う、うう」
あ、泣いた。
ゴーストも泣くのか。
その水分、どこから来たんだ?
ゴーストは飲食の必要もないし……、どこから水分を?
まあ良いか、ローグライクだからな。
「酷い、です。なんで、どうして……」
「いや、恋愛なんて別にどうでも良いだろう?俺もお前も見た目がいい。選び放題の立場で……」
「私は!私は、あなたの見た目だけが好きなんじゃありません……!」
お、珍しく声を荒げたな。
「何が言いたい?」
「私があなたを好きになったのは、私が持っていないものを持っているからです……」
ふむ?
「私は、暗い性格をしていたから、いじめられていましたよね?あなたも、変わり者だから、いじめられそうになりました……」
「そうだったか?」
「はい……、私は何もできなかったです。けど、あなたは、相手が誰だろうと、毅然とした態度で立ち向かえる……!そんなところに憧れて、私は……!」
ふむ……、よく分からないが……。
「それは、俺に恋心を抱いたのではなく、憧れを抱いただけなのでは?」
「いいえ。あなたは、それからも私を大切にしてくれました」
どうだか。
「そんな覚えはないが」
「あなたはそう思っていないのかもしれません。けど、周りにいじめられている私にとって、普通に接してくれるあなたがどれほどの救いだったか……!」
そうなのか。
その辺りはよく分からん。
他人にそこまで興味がないからな。
「そうか。それで、俺にどうして欲しいんだ?」
「それは……!それ、は……」
「俺は他人を好きになったことなど一度もないが、少なくともお前のことを嫌っている訳ではない。俺にデメリットがないならば、いくらでも手を貸すぞ」
「……それじゃあ、嘘でもいいですから。私に、『愛している』と言ってください」
そうか。
「愛しているぞ、アヤ」
「ふ、ふふ……、あはははは!」
何だ、どうした?
「一番、一番望んだ言葉をもらったのに……、なんででしょうか……。虚しい、です……」
はぁ……。
女は面倒だな。
言いたいことは理解している。
どうせ、心からの愛の言葉が欲しかったとでも言うのだろう。
だが、心からとはなんだ?
心などという目に見えないものをどうやって感じ取る?
結局、世界の全ては、自分が納得できるかどうかだ。
こいつも、要するに、納得できるタイミングで、納得できるムードの中、納得できる言葉が欲しいだけに過ぎない。
人間に、生き物に心などなく、あるのは単に脳内物質による精神の浮き沈みだけだ。
だから……。
「あ……」
こうして、抱き寄せてやれば、それで満足するだろう。
「……シャールノス君。私のことを、好きになってくれなくても、良いです。でも、私があなたを好きでいることは、許してくれますか?」
「光栄だな」
全く……。
まあ、面倒だが、それでこちらの言うことを聞くのなら、それで良いだろう。
んー、屋台マン割と書けてるな。
ヒロイン数絞ってるのに、ヒロインとの絡みがないけど。