装備を揃えた異形組は、即座に次の行動を始める。
まず、最初にシャールノスがやったことは……。
外郭街南部の町長に会いに行くことであった。
いきなり町長に会いに行くなど、どう考えても意味不明な行為であるが……。
「んん?何用だね?」
あっさりと会えてしまった。
実のところ、町長というのはそこまで偉い存在ではないのだ。
単なる、この地区のまとめ役でしかない。
日本で例えるなら、町内会長レベルの存在だろうか?
ラダムには、割としっかりした官僚組織があるからして、町長そのものの重要度はそこまで高くない。
「冒険者だ。依頼はないか?」
シャールノスは、端的にそう伝えた。
「依頼なんて……、いや、そうだな。一つあるぞ」
町長は、恰幅の良い腹肉を揺らしながら、一つの依頼を持ってきた。
内容はこうだ。
《盗賊団の退治》
・外郭街南部の外れにある廃墟に盗賊団がいるのでそれを退治する
・退治したら報酬として、その廃墟の所有権と100000Gを支払う
・廃墟はちゃんと屋根もあるし井戸も枯れていない
これは、ゲーム的に言えば『サブストーリー』である。
盗賊団の根城になっている廃墟の家を掃討して、代わりにその家を貰えるという、プレイヤーなら誰もが必ず通る道だ。
因みにだが、家はこのサブストーリー以外でも別の種類のものが手に入る。
金で買うことも当然可能だし、他のサブストーリーなどでも手に入るし、功績点が大きい冒険者ならば、大きな館や城なども買える。
だが、このサブストーリーは、最も簡単に家が手に入ることから、全プレイヤーにはラダムに来たらまず一番最初にやることと認識されている。
実際、このサブストーリーを受けないのは、ある種の縛りにも等しい。
それくらい、当たり前のサブストーリーなのだ。
だが、実際問題、『盗賊退治』であるからして。
「……本当にやるのか?」
「やる」
「……分かった。だが、手を汚すのは私だけで良い」
またもや、難色を示した異形組。
ローズは、先日の、盗賊団の襲撃の件で、ある程度納得しているため、協力を申し出る。
もちろん、嫌々だが、頭では「盗賊は殺すべき」ということをしっかり理解している辺り、有能ではある。
「待つんだ。それなら、私がやろう」
「わ、私も、やります」
そう言って前に出たのは、オケアノスとジャンヌ。二人は、元は教師だった。
つまるところ、大人として汚れ役を買って出たということだ。
どういうことか?と言うと、このサブストーリーで手に入れる家は、異形組の共同管理にしようと言う話になったのだ。
シャールノスが損しているように思えるが、このサブストーリーで手に入る家はそう豪華なものではない。金銭を充分に持っているシャールノスからすれば、わざわざ独り占めする程旨味がある物件ではない。
「全員でやれ」
シャールノスはそう言った。
そして、異形組が決断する間も無く、すぐに街外れの廃墟へ一人で向かっていく。
『盗賊団を殺すことにより家の権利を得られるのだから、ここで戦わない奴には家に住む権利が与えられない』
この事実を自覚した異形組は、全員、武器を持って廃墟へ向かった。
廃墟の盗賊団は、クリーチャー的には『見習い盗賊』と『盗賊』だけであり、大した戦力ではない。
異形組の方が、質的にも量的にも上回っている。
まず、シャールノスが、廃墟のドアを開く。
廃墟は二階建てプラス屋根裏部屋のある、小金持ちが海辺に建てる別荘のような造りだ。
そこそこに広く、少なくとも、ここの四十一人が寝られるくらいのスペースはあるだろう。
そんな廃墟の正面ドアは、ずたぼろの長椅子などが積み重ねられて封鎖されていた。
そこを、シャールノスは力尽くで無理矢理に開いたのだ。
「なっ、なんだあ?!」
当然、中にいる盗賊達は慌てふためく。
二十人程の盗賊が裏口から出てくる。
明らかに多いが、これもMODの効果だろう。
その間、シャールノスは内部にいる盗賊をなます斬りにしながら、上の階を目指す。
異形組の仕事は、外に出てきた盗賊の始末だった。
「大人しく捕まるなら危害は加えない!」
オケアノスが、クロスボウを構えながらそう叫んだ。
だが盗賊は……。
「な、舐めんじゃねえ!うおおおおっ!」
向かってきた。
実際、捕まって町長に引き渡された場合、行く末は公開処刑であるからして、ここで抵抗するのは当たり前であった。
「くっ……、ならば!」
躊躇いながらも、オケアノスはクロスボウの引き金を引いた。
風切音と共に鋼鉄のボルトが宙を駆け抜けて、吸い込まれるように盗賊の腹部に当たる。
「ぐえっ!」
盗賊は、ボルトが深々と刺さった腹部に手を当てる。
その痛みはまさに、「焼けるような」と形容されるものだろう。
「い、い、痛え、痛えよ……」
盗賊の矢傷から、大量の血が流れ出る。
位置的に、当たったのは肝臓だろう。
極めて大きなダメージだ。
盗賊は、痛い、痛いと譫言を漏らしながら。
腹を抱えて蹲るようにして、死んだ。
「ッ……!」
殺人を犯したことによる恐怖と自己嫌悪で立ち尽くすオケアノス。
それを見て、周りの異形組は、殺人者となったオケアノスを弾劾しようとはしなかった。
逆に、隙だらけになっているオケアノスを庇いすらした。
これが人間組だったならば、即座に責任の擦り付け合いが始まっていただろう。
「退がってください、先生!」
ハーフオーガ戦士のフレアが、『スティールヒーターシールド』を構えながら前に出て、カバーした。
「うおおおおっ!」
仲間を殺されたことにより殺気立った盗賊達は、武器のダガーナイフを構えながら襲いかかってくる!
「ッ……、『筋力小上昇(レッサーストレングス)』ッ!!!」
素早く自己強化をかけたのは、デーモン司祭のララベルだ。
ララベルは、増加した筋力をもって、『氷結のスティールメイス』を振りかぶる!
「く、食らえッ!!!」
「ぺぎゃ?!!」
『氷結のスティールメイス』は、氷結属性のダメージと共に物理衝撃ダメージを、盗賊に大きく与えた。
当たったのは頭であり、盗賊の頭は前方が陥没して、目玉が飛び出る。
「ひ……、い、いやあああっ!!!」
ララベルは、メイスを落として悲鳴を上げた。
ララベルとしては、いきなり襲いかかってきた盗賊が怖くて、何も考えずに反撃しただけだ。
だが、予想以上のダメージを与え、その上で更に殺してしまった。
それは、とても恐ろしいことだった。
「オ……、『オープンコンバット』!」
そう言いながら前に出たのは、サイボーグ技師のオーマだ。
オーマは、先日に行った自己改造により、腕部に『スティールレーザーガン』を内蔵していた。
手首からせり上がるようにして現れた砲身に、光子のエネルギーが充填され……。
光の線が伸びる。
盗賊の一人の肩に、五百円玉程の風穴を空けたオーマ。
吐き気を堪えつつも、パニックになっているララベルの肩を抱きながら後ろに退がった。
「マ、『魔力集積弾(マジックミサイル)』!!!」
オーマの一撃を受けて、肩を押さえてしゃがみ込む盗賊に対して、ゴースト魔術師のアヤが即座に魔法で追撃する。
マジックミサイルは強力な魔法属性攻撃であり、着弾点が爆発する。
着弾点にいた盗賊がバラバラの肉片になり、爆風に巻き込まれた盗賊が二人、吹き飛ばされた。
「ゔ、おぇえええ……!!!」
アヤは、肉の塊が爆ぜるところを見てしまった。
極め付けは、爆散した手首が、アヤの目の前に落ちてきたのだ。
それを目にしたアヤは、思わず嘔吐してしまう。
とは言え、ゴーストであるために食事を殆どしていなかったアヤから吐き出されたのは、ほぼ胃液のみだったが。
こうして、異形組は、精神に大きなダメージを受けながらも、初めての殺人を済ませた……。
メトロみたいな空気すらろくに吸えない絶望的世界で楽々生きるポストアポカリプスものを書きたいなあ。
でも、さらに新しく書くのはアレだし、今手元にあるポストアポカリプスものの続きを書いて自分を慰めよう。
追放賢者はアレ、どちらかと言えばメタルマックスとフォールアウトがモデルですからねえ。
今手元に、滅亡ダンジョン世界で召喚能力ものがあるので、それの続きを書きます。
前にも言ったと思うんですけど、ダンジョンによって滅亡した日本の話です。
あらすじはまあ、ある日突然、全世界にダンジョンができて、地球人類はあらゆる資源をダンジョンとの戦いで使い果たしてしまった……。だがしかし、人類は滅亡していなかった!みたいな。
ダンジョンが発生するのは普通の現代ファンタジーものと変わらないんですけど、普通の現代ファンタジーと違うのはポストアポカリプス味ですね。
人類は資源を使い果たしたってのは、石油や鉱物をダンジョンとの戦いで使い切ってしまい、モンスターの侵略で農地もなくなり、食べるものすらろくにないって感じ。
ダンジョンからもう本当に「トップをねらえ!の宇宙怪獣か?」ってレベルで夥しいほどのモンスターが出てきて、人間の生活圏を狭め、人間は『結界』がある都市のみでしか生きられなくなるんですわ。
じゃあどうやって生活してるのか?って言うと、ダンジョンから出てくるモンスターを食って、モンスターから剥ぎ取った素材で物作りをして生きてるんですね。
但し、人間側にも強化パッチが入ってて、ダンジョンとの戦いに適合した新人類こと、『適合者』と言う存在がいるんだよ。こいつらは、一人一つ、固有の『魔法』を持ってるんだ。それを使って戦うんだ。因みに、都市の結界も、『結界の魔法』を使う適合者を解析して作った道具によるものなんだ。
こんな終わってる世界が百年どうにかこうにか存亡し、現代。好きな世界線から好きなものを召喚できるという、『召喚』の魔法を持つ主人公が、無理矢理、適合者を育成するための『探索者学校』にぶち込まれるところから話は始まる……。
主人公はいつも通り気狂いとなっております。ご堪能ください。
この世界の探索者は、オムツのままヒロポンキメながら五十時間くらいぶっ通しでモンスターの群れと戦い、命がけでダンジョンを攻略するのですが、主人公はそんな探索者を「世界という名の死にかけの老人を無理矢理生かす、哀れな生命維持装置」と言い切るゲスで、常に探索者を見下しています。
もちろん、主人公個人は有能で、音楽の才能と学力に料理力もあり、その三つを活かせば魔法を使わずとも一生生きていけるくらいの有能マンです。ただ、人格が終わってるってだけ。世界も終わってるからまあええやろ!
今回の主人公はいつものように物量プレイはできない感じです。なので、ネウロみたいに魔力を貯めておくアクセサリーをつけていて、欲しいものがある時だけ魔力の貯蓄を切り崩す……、みたいな。いや、食べ物や漫画本くらいなら全然平気なんですけどね。
だから、魔力の貯蓄と相談しながらのチートになる感じかなあ。