1話 手違い召喚
「あ、あの〜?」
「せ、先輩、この方がサーヴァントのようです」
「何よ、この男……?顔立ちからして、西洋系?」
ん?
んー?
『ちょっと待ってくれ、その反応は……、い、生きているじゃないか?!デミ・サーヴァントなのか?!』
ふむ。
ああ、成る程。
そう言うことか。
頭ん中に情報がずらずらと。
「エクストラサーヴァント、バーサーカーの新台真央。コンゴトモヨロシク、オレサマオマエマルカジリってね」
「新台真央……?日本の英霊かしら」
「いや、英霊ではないね、生きてるし」
白髪のキツそうな女の子に睨まれる。
「生きている?どう言うこと?」
「まずね、世界に異常が発生したのを予期したから、俺は知り合いを集めて、物資を集めてシェルターに籠城、世界を救うためにどうするか会議をしていたんだ」
巨大移動要塞黒井鎮守府を始めとして、いくつかの移動要塞を急ピッチで建造。知り合いの戦力になりそうな北斗、南斗の戦士やグラップラー、元男塾塾生、ストリートファイターから英霊、アサシン教団、BF団、ライダー達、ヒーロー、ヴィランズ、その他悪の組織、艦娘などなどを緊急収容、ブレインになりそうな研究者や財団職員も集めた。
「……つまり、外部にもカルデアと同じことをしようとした組織がある、と言うことね」
「まあ、そうだね。……カルデア?天文台?」
「カルデアと言うのは、私達の組織で……」
説明を受けると、魔術師達による世界の異常を取り除く会らしい。
「じゃあ、貴方は同業者で、サーヴァントとしての記憶を持ちながら、何故か生きたまま召喚された、って訳ね……」
「まあ、近いね、大体そんな感じ」
「……はぁ、強力なサーヴァントなら良かったのに、生身の魔術師一人だなんて」
「なんかごめんね、でもまあ、大抵のことはできるから、頼ってくれていいよ」
「しかも、新台?聞いたこともないわ。どこの馬の骨かも分からな、え、あ、新台?」
「あ、あんまり名前で呼ばないで。旅人って呼んで」
「……あ、あんた、もしかして、『歩く禁術指定魔術師』の新台?」
「………………あはは」
「な、何笑ってんのよ!!やっぱりあの新台真央ね!覚えてなさい後で魔術協会に突き出すんだから!!」
「それは勘弁しちくり〜。協力するからさ俺もさ〜」
お怒りだあ。
「ねえ、マシュ、歩く禁術指定魔術師ってどう言うこと?」
「バーサーカーさん……、新台真央さんの異名です」
「禁術指定って、何だか名前からして悪そうだけど……」
「はい、そうですね……、噂によると、空間転移、死者蘇生、外なる神や邪神、またその眷属を呼び出せるそうです」
「凄いの?」
「ええと、魔術師の凄さと言うのは、基準になるものがないので、いまいち評価しづらいのですが、手札の数は物凄いらしいです」
「良かったぁ、強い人が来てくれたなら安心だね!」
「し、しかし、新台真央は、魔術協会から指名手配されている禁術使いなので、油断は禁物ですよ、先輩」
「じゃあ、聞くけど、新台真央さんはその魔術で何か悪いことしたの?」
「……いえ、不貞魔術師を再起不能にしたり、追って来た魔術師を半殺しにしたりはするそうですが、悪事はしていないらしいです」
「危ないから、ってだけで追われてるってことでしょ?なら、ただの可哀想な人じゃん」
「で、ですが、万一、外なる神の召喚なんてされたら、世界規模の危機が……」
「世界規模の危機はもう起きてるでしょ。それじゃ、新台さん!仲良くしてね!」
あ、いい子だこの子。
「もちろん、仲良くしよう、マスター。あと、旅人と呼んでくれ」
「じゃあ、旅人さん?」
「それで良い」
「ああ、あと、私の名前は藤丸立香ね。立香って呼んで」
「分かったよ立香」
ところで……。
「浜風?」
「い、いえ、マシュ・キリエライトです」
「……いや、うちの子に似てたんでね」
「娘さん、ですか?」
「いや、なんて言ったら良いのか……、まあ、部下みたいな、恋人みたいな……」
「えっ、恋人!旅人さん結婚してるんだ!」
立香が割り込む。
「ま、まあ、その、事実婚?みたいな?籍は入れてねーし、未婚と言っていい」
「んん〜、何だか複雑な事情?」
「そうさ、大人には色々あるのよー」
と、さて。
「それで、世界を救うには特異点をどうにかせにゃならんと聞くが」
「ええ、そうよ。どうにかしなくちゃ私の立場が……」
大変だねえ。
ってか君、幽霊なのに立場とかあるの?
まあいいや。
やろうか。
「さて……、このままここにいたんじゃ始まらない、移動しようか」
「そうだねえ。うへえ、どれだけ歩く羽目になるのやら」
「はっはっは、その心配はいらないぞぅ!ここに、俺の宝具の一つ、『旅人マル秘道具(アイテムインベントリ)』があるからな!」
「宝具って何?」
「んー、まあ、必殺アイテムのことかな?」
「おおー!凄ーい!」
そうだろうそうだろう!
「で、アイテムインベントリって?」
「名前の感じで分かるだろォン?ポケットを叩けばジープがひっとっつ!」
するっとポケットから車を出す。
ああこれ、宝具になってんな、弱いけど。
「……ドラえもん?」
「そこまでじゃないさ」
「なっ……、車一台入る程の空間制御?!」
オルガマリー(さっき名前聞いた)は驚いているが、こんくれえなんてこたぁねえ。
「ほらほら、立香は特別に助手席に座らせてあげよう!」
「良いの?!わーい!!」
「先輩……、まず、ポケットから車が出てきた事実に目を向けましょうよ」
「魔法使いなんでしょ?それくらいはできるかなーって」
「魔法と魔術では天と地ほどの差があります!まずですね……」
全員、車に放り込んで。
「音楽かけていいかな、立香?」
「え?良いけど」
『〜♪〜♪』
「……何これ」
「きかんしゃトーマス(ロックアレンジ)」
『楽しんでいるところ悪いが敵だ!』
ドクターロマンさんが通信を入れてくる。
「は?そんなんぶっちぎるに決まってますやんか」
『……は?』
「なんで態々丁寧に敵と戦う必要が?スルーできるならスルーすべきでしょ」
『まあ、そういう、見方も、できる……、かな。それじゃあ、先に進んでくれ』
「おっすおっす」
「ほら、立香、飴をあげよう」
「わーい!」
「マシュとオルガマリーもどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「気安く呼ばないでくれるかしら……?まあ、いただくわ」
そんなこんなで道を進むと、途中、影みたいなのが揺らめくのが見えた。
「……?なんかいるよ旅人さん、ブレーキブレーキ」
「了解、トランザム!!エンジン全開!!おおおおおおお!!!」
『!!!!!』
車が変形するんじゃないかって音と共に、影は撥ねられた。
「な、なんてことを……」
マシュが戦慄する。
「はい、降りてねー、ありゃ避けて通れないタイプの敵だわさー」
『ググ……、貴様、イキナリ人ヲ撥ネルトハ!!』
なんか言ってる。
「急に飛び出す方が悪い。車は急に止まれない」
「エンジン全開って叫んでましたよね?!」
マシュ、言わなくて良いことだぞそれは。
『気をつけてくれ、アサシンのサーヴァントの反応だ!!くっ、どういうことなんだ一体……?!』
「あー、多分ね、それ、聖杯戦争でしょ」
『どういうことかな?』
「2004年の冬木市では、聖杯戦争やってたから。アサシンが出てもおかしくねえよなあ?」
『なる、ほど?しかし、何で知って……』
「まあ今は話せないよね、戦わなきゃならんパティーンよこれ」
実質、一対二だからなあ。
しかもこっちは立香とオルガマリー付き。場合によってはマシュも守護らねばならない。
今こそ守護キャラになる時。
旅人の凄いところは、メガテンのニュートラルルート主人公かよってくらいに正義と悪の人らを集められる点。