ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ごめんみ。

昨日は忙しかったのです。


10:ボロネスカへ

ゴブリンの巣を攻略して村に帰還した。

 

道中で聞いたが、本来なら中から釣り出して戦うのが基本なんだそうだ。

 

ローグが囮となって、敵のホームから敵を連れ出し、そこを叩くのが常套手段なんだとか。

 

もちろん、敵もそれが分かっているから籠城する。籠城して待ち構える方が、攻撃してくる方より遥かに有利だから。

 

そこの、釣る釣らない、守る守らないの駆け引きこそが、冒険者の戦術として考えるべき要であるそうだ。

 

そこんところを、力押しでゴブリンを斬り殺した俺は、異端にしてそれでいて英雄の所業だったらしい。

 

そんな話は、小さな村だからすぐに広まった。

 

たった一人でゴブリンを十六体も倒した村の救世主として、俺は大層に感謝されたのだ。

 

ゴブリン十六体で何をそんなにと思われるかもしれない。

 

だが、この村の人口はおよそ百人。その中で戦えるのは十人そこら。衛兵のような専業の戦士は四人程度。

 

そこに、レベル1ファイターと同じくらいの能力を持つゴブリンが十六体。

 

ほぼ倍もの敵が攻めて来たと考えれば、それは大変な危機だと言えるだろう。

 

村にたった百人しか人がいないことや、戦える人間が少ないことから分かるように、まさにこの世界はナーロッパ……、否、ヨーロッパベースのファンタジー世界だと言える。

 

大陸の戦争のように、一万人の敵を殺したら次に十万人で襲いかかってきた!みたいな人口はないのだ。そこまで多くの人を養えるほど、この世界に豊かさはないということらしい。

 

まあ、そんな感じで、あのゴブリンの巣は、この小さな村からすれば、滅亡の危機だったことは確かだ。

 

 

 

俺は、村人達に軽く挨拶をしてから、次の日にノースと共に村を出ることとした。

 

馬車に乗って四日ほどの位置に、この辺りで一番大きな都市である『ボロネスカ』という街がある。

 

都市に住む人間の数は五千人とも六千人とも言われ、多数の冒険者がいる都市なんだとか。

 

……まあ、多数と言っても、その数は精々五十人ほどもいれば良い方だろう。

 

日本のように、一つの狭い島国に一億二千万もの人が住んでいるのは、この世界では有り得ない。

 

この国……、ティレル王国の総人口は一千万人ほどと言われている。

 

そして、TRPGに脳を破壊されている俺は余計な知識をたくさん持っているが、その中に、国家が動員できる兵士は多くとも総人口の2%と言われていることを知っていた。

 

つまり、この国の専業戦士は十万から二十万人。

 

自衛隊が二十数万人しかいなかったことを考えると多く感じられるが、この世界ではモンスターや敵対種族に敵国のオンパレードで、更に言えば銃砲なんてものもない。

 

日本のような、モンスターも隣接する敵国も危険な野生の獣も殆どない平和な国で、志願兵が二十万人。

 

一方でこの国は、人を襲い食うモンスターに蛮族、街道にも現れうる凶暴な獣、陸続きで隣接する敵国と、危険が目白押しって状態で、なんとか十万二十万の兵士を養う。

 

現代日本と比べて、相当ギリギリなバランスで成り立っていることが窺える。

 

これから向かうボロネスカにも、衛兵が百人未満で冒険者が五十未満くらいだろうと予測できたし……。

 

事実、着いてみればそれが正しいと確信できたということは、後で言おう。

 

まずは、旅の様子から始めよう。

 

 

 

「ボロネスカ、楽しみです!」

 

俺の隣に座るノースは、溢れんばかりの笑顔で俺にそう言った。

 

何がそんなに楽しいのかと訊ねようと思ったが、日本で言えば、田舎の女学生が都会に憧れるようなものだと理解したので、やめた。

 

「俺も楽しみだよ」

 

適当にそう返しておく。

 

確かに、ノースは美しい少女だが、夢見がちで都会に憧れる田舎のガキのお話なんて、真面目に聞いていられない。

 

「やっぱり、冒険者をやるんですか?」

 

「ああ、そうしようと思ってる」

 

「それじゃあ、何かあれば依頼を出しますね!」

 

「そりゃありがたい」

 

そんな話をしながら、馬車の荷台で本を読む俺。

 

読んでいる本はもちろん、魔導書だ。

 

何となくで使ってきた魔法だが、確認の意を込めて学び直している。

 

とはいえ、知識は完全に頭に入っており、読む必要はほぼないのだが。

 

にしても尻が痛い。中世の馬車とはここまで揺れるのか……。

 

「……あの、その本、呪われてませんか?」

 

ノースは、心配そうにそう言った。

 

それはもちろん、コズミックホラー世界の冒涜的な魔導書であるからして、当然のように呪われている。

 

「大丈夫だ」

 

「で、でも」

 

「大丈夫」

 

「わ、分かりました」

 

ノースはいい子というやつなのだろう。

 

他人を思いやれる人間なのだ。

 

余計なお世話だが。

 

そうこうしているうちに陽が落ちて、夕食の時間になった。

 

俺は、宝物庫から燻製にした熊肉を取り出す。

 

先日仕留めたやつだ。

 

これに、熊の胆嚢を村の薬師に渡して、それと交換で手に入れた生姜を刻んで小鍋に入れる。

 

生姜は生薬扱いなのだ。

 

そして、買い取った村の野菜と……。

 

「それ、何ですか?」

 

「これは『果てしない瓶詰め』と言うマジックアイテムだ。今までに食べたことのある瓶詰めや缶詰を、少しの魔力と引き換えに作り出せる」

 

「そちらは?」

 

「『ニスロクの粉箱』だ。今まで食べたことのある粉末を魔力と引き換えに作り出す」

 

「じゃあ、そっちは?」

 

「『イワカムツカリの水差し』だな。今まで口にした液体を魔力と引き換えに作り出す」

 

マジックアイテムで生成したトマト缶に水を足して顆粒コンソメで味付け。

 

生姜トマト缶スープを作る。

 

これは、風邪をひいたときに飲むと、ビタミンがたっぷりだからたちまち元気になれるのだ。

 

高校から一人暮らしをしていた俺だが、このスープを具合が悪い時や面倒な時はよく飲んでいた。

 

余り物の野菜と肉に、たっぷりの生姜とトマト缶。

 

ナスとニンジン、タマネギなんかを入れて、とろ火で煮込む。

 

そうして三十分もすれば、小鍋からはとても良い香りが漂ってきた。

 

「わぁ……!」

 

「ほら、食べな」

 

俺は、スープを盛った木皿を、ノースに差し出した。

 

「良いんですか?!」

 

「良いよ。俺、可愛い子には優しいんだよね」

 

ブスと男には厳しいが。

 

俺とノースは、トマトスープに保存用の固焼きパンを浸しながら食べた。

 

熊の肉は、野性味のある旨味に満ちており、いやな獣臭さは多量の生姜で中和されていた。

 

旨いものを食った後は、ノースと会話を楽しみ、外套に包まって寝た。

 

この、『冒険者の旅』の雰囲気がたまらない!エンジョイしながら四日間を旅して過ごし、ボロネスカに到着したのである。

 




引っ越しなう。
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