ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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なろう主人公なので、弟子とかとりたいでしょやっぱり。


19:君の目の前に、薄汚れた少女が立っている

俺の噂はボロネスカの街に瞬く間に広がり、俺は街の英雄としてもてはやされることとなった。

 

自己顕示欲〜!

 

まあ、それは人並みにあるが、あまり他人を気にしないってのも真実だ。

 

他人や過去を気にするのは、キャラクターとしてはおいしいんだけどね。

 

神ならぬ身では、過ぎ去った過去も他人の心も操れやしない。変えられるのは未来だけだ。

 

……俺が半神であるというツッコミは受け付けない。人生の哲学の話だ!

 

普通だよ、普通。

 

褒められれば嬉しいが、陰口を言われてもあまり気にしない。俺はそんなタイプって話。

 

とにかく、ボロネスカでは、街の滅亡をたった一人で救った英雄になったのは確かだ。

 

夜に、銀髪の俺が凄まじい速さで駆け抜けたから、周りからは『銀の流星(シルバー・スター)』の異名で呼ばれ始めた。

 

一年戦争かよ、とは思ったが、カッコいいので特に訂正はしないでおく。

 

 

 

で、だ。

 

俺とアデリーンは、コンビを組みながらちょこちょこ依頼をこなし、半年の時が過ぎていた。

 

今までの活躍で等級は七級まで上がり、すでにベテラン冒険者として扱われるようになった俺。

 

他のパーティに混ざったりなどもして、指揮のやり方やチーム戦のやり方を学んでいた。

 

俺一人で無双できるのは確かだが、「周りに合わせるつもりがない、必要がない」のと、「周りに合わせられない」はまた別だからな。

 

「できるけどやらない」のと「できない」のには天と地ほどの差がある。

 

まあその辺りは、周りの弱い冒険者との合わせ方を熟知しているアデリーンに聞いた。

 

さて、その間の俺だが、もちろん、依頼だけを受けていた訳じゃない。

 

大きな事件や強敵は出なかったが、色々と活動していたのは確かだ。

 

そんな中、俺が何をやったかを振り返っていこう。

 

そう、あれは、初夏が過ぎた頃……。

 

……あ、初夏ってのは大体五月から梅雨入りまでを指すぞ。

 

だからちょうど梅雨の時期の話だ。

 

あー、けど、この辺は日本と違って乾燥してるから、雨はそんなに降らなかったな。

 

まあとにかく、梅雨入り頃の話……。

 

 

 

俺は、盗賊団退治で一躍有名になって、噂が充分に街に広がった。

 

そんな時、俺は、一人の少女と出会った。

 

俺の定宿まで押しかけてきて、「強くなりたい」などと宣ったガキだ。

 

正直、この頃には、街中のガキ共から「修行をつけてくれ」だのなんだのと付き纏われていたから、こいつもその類だろうと思って、放置したんだよ。

 

俺に向かって土下座するガキを無視して、俺は依頼に出て三日ほど宿を出た。

 

だが……。

 

「……ふーん?」

 

そのガキは、俺が三日ぶりに宿に帰ってきた時、三日前に俺に土下座した体勢のままと変わらず頭を下げ続けていた。

 

「良いね」

 

最高だ。

 

気合が入っている。

 

三日も土下座し続けたのは、足跡や砂埃を見れば分かる。

 

梅雨の雨で湿った地面には、このガキの周りに、このガキの小さな足跡はなかった。つまり、三日間、ここから移動していないことを示している。

 

こんなん、最高に面白いでしょ。

 

こいつは、薄汚いメスガキだ。

 

恐らくは孤児か何かだろう、伸ばしっぱなしの黒髪に、ボロ切れのような服。ガリガリに痩せてあばらの浮いた身体。

 

そして何より、餓狼のような瞳。

 

「良いね、お前。面白いよ、最高だ」

 

気に入った。

 

根性があるやつは良い。

 

力を求める姿勢も良い。

 

そして何より、薄汚い孤児のガキに武技を仕込むとか、楽しそうだろ?

 

もしも、このガキが大成したら?とか思うと、愉快で愉快で、笑いが止まらん。

 

孤児のガキが?謎の魔法剣士に鍛えられ?天下無双の剣士になる?

 

実は師匠の魔法剣士は半神で?この世界の誰も知らない流派の剣技を教わる?

 

ははっ、設定盛りすぎだっつーの!

 

主人公かな?

 

良いじゃん、鍛えてやろう。

 

 

 

俺はまず、ガキに《浄化》の魔法をかけて、汚れを綺麗にした。

 

「ついて来い」

 

「……はい!」

 

とりあえず、こんな身体じゃ剣技なんて無理だ。

 

太らせよう。

 

俺は、宿の厨房を借りて卵粥を作った。

 

「食え」

 

「え、でも」

 

「食え、そんな身体じゃ剣術どころじゃない」

 

「お金……」

 

「気にすんな、しばらく面倒見てやる」

 

「……ありがとうございます!」

 

そのまま、貪るように粥を啜るガキ。

 

だが……、おや?

 

食い方そのものは綺麗だな。

 

生粋の孤児ならば、もっと食い方が汚いはずだ。

 

俺の同級生に、親から虐待されて育った奴がいて、そいつと食事を共にしたことがあるのだが、食い方が恐ろしく汚かった記憶がある。

 

俺はこう見えて、割とかなり育ちがいいので、当時はその友人を見てドン引きしたものだが……、大人になった今思うとなあ……。

 

「教育を受けていない」と言うのは、現代日本で育った我々からすれば、思ってる以上に悲惨なことだ。

 

人間の理性と知性というのは、幼少期からの教育によって培われるもので、それがないと人間も獣と等しい。

 

因みに、俺自身は、実家が土地転がしで一生安泰なレベルの地主で、俺が本屋をやってるのは完全に趣味だったから、育ちがよろしいのだ。しかも長男だからね俺。

 

にしたって、このガキは……、作法が整い過ぎているな。

 

普通の人は、例えば、器に口をつけないとか、食器を舐めないとか、そういう基礎は知ってるだろう。

 

けど、このガキは、啜る音や食器がぶつかる音などにも気を配っているように思える。

 

幼い頃、相当に厳しく躾けられていたんだろうなと察せられるのだ。

 

ふむ、となると……。

 

「お前、貴族か?」

 

「……!」

 

ピタリ、とスプーンを握る手が止まる。

 

ははーん、なるほどね?

 

主人公設定に、「元貴族」と……、恐らくは「復讐」なんてキーワードも追加される訳だ。

 

はぁ〜、クッソおもしれぇ〜!!!

 

そんなん絶対面白いやつじゃねーか!

 

貴種流浪譚とか王道〜!

 

「まあ、とりあえず、今は食え。そして寝ろ」

 

「……はい」

 

あーもうこのガキ離さねーから!

 

絶対おもしれぇもんよ!

 

めちゃくちゃ剣技叩き込むから!

 

最強の剣士にするから!

 

あー、楽しい!

 




まーたファンタジーものの資料を買ってしまった……。

今はゾンビものを書かなくてはならないのにっ!

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