ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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最近、ラーメンしか食ってねえ。


30:デュラハン退治のエピローグと吟遊詩人

事の顛末から話そう。

 

封印されしデュラハンの討伐。

 

報酬金はなんだかんだで金貨百枚。

 

六級までに昇格。

 

 

 

まず、デュラハンの正体について、俺は神殿に訊ねた。

 

実はあれは、遠い昔に恨みを持って死んだ騎士のアンデッドらしく、極めて凶悪な存在だったとか。

 

何分、記録が古くてあまり残っておらず、何がどうヤバいのかは詳しく分からなかった。

 

分かったのは、何かしらの罪を犯して処刑された騎士の成れの果てということのみ。

 

それと、当時の被害についてだけだった。

 

このデュラハンが生まれた当時の被害は、平民三百人を虐殺して、兵士隊を半壊させ、冒険者も半壊させていたようだ。

 

この辺では見ないようなかなり格の高いアンデッドで、退治することができなかったから、ボロネスカ地母神神殿の神官長が命がけで封印した存在だった、とのこと。

 

それが、百年以上前の話である。

 

ノースが剥がした札は、デュラハンを封印するための要だったらしく、神殿の正規神官なら絶対に触れてはいけないと周知されているものだったらしい。

 

それを、馬鹿な若い神官が、ノースに剥がすように吹き込んだ訳だ。

 

若い神官達が何故そんなことをしたのかという動機は、自分の後輩であるノースが自分より遥かに出来がよくて、嫉妬心を抱いたから、だとか。

 

まあ、くだらない話だ。

 

強いアンデッドが封印されていると若い神官は教わっていたのだが、ここまでの存在とは知らなかったらしい。

 

ノースは、騙されていたということでお咎めなしになったが、ボロネスカ地母神神殿にはいづらくなったので、春には王都に行くようだった。

 

実際のところ、ノースの才能は、ボロネスカなどという田舎に収まるものではないので、王都への推薦状を書いてもらえる事になったとか。

 

そして、ノースを騙した若い神官は、当然のように破門された。

 

しかし、デュラハンによる被害は幸いにもゼロだったので、損害賠償や刑事罰的なものはなし。

 

……とは言え、地母神神殿に限らず、神殿からの破門というのは、前科者並みの経歴になるので、ボロネスカを出て行かなきゃならないのは確かだろう。

 

 

 

報酬金について。

 

領主から金貨五十、ギルドから二十、神殿から二十。

 

神殿はどうやら、将来有望なノースの名声に傷をつけたくないらしく、口止め……、というか、ノースに責がないことを公言してほしいと言って、追加で金貨十枚を渡してきた。

 

これがもしも、「うちの神殿の名声に傷をつけるな!」とかなら断っていたが、ノースを想ってのことだと言われると、俺も了承した。

 

ノースは可愛いからだ。

 

昇格については既に既定路線だったので言うことは特にない。

 

 

 

さて……、何故俺がこんなに淡白なモノローグを垂れ流しているのか。

 

単純に、カッコよく終わらせたクエストの蛇足だと思ったからである。

 

いや、これが、元からデュラハンの謎を追って、デュラハンだった元騎士の日記帳を読んだりして散々感情移入したあとだったら、長いエンディングを見ていただろう。

 

だが、完全にぽっと出のボスにそこまでの愛着はないって話だ。

 

つまり、デュラハンを嬲り殺しにして、街の人々の歓声を背に受けて、ヒロイン達とその場を去っていったあのシーンが、俺の中でのエンディングだったってことよ。

 

それ以上のことは全部蛇足。どうでもいい。

 

シバはそういうキャラだし、俺もそう思っている。

 

ノースを騙したアホ神官がどうなったかとか、報酬金とか、そんなのはどうでもいいことで、俺がカッコ良かったか?カッコよく振る舞えていたか?という事にしか興味はない。

 

さあ、そろそろ冬も深まってくる。

 

この辺は雪が降らないらしいが、結構寒いらしいぞ。

 

俺の体感では、気候はパリって感じだな。湿度はカラッとしている辺りとか。

 

 

 

はい、じゃあ、サブクエストをすることにしました。

 

冬はどうやら、あんまり面白いクエストがないみたいだからな。

 

冬は、秋に作った蓄えで寒さに備えるものらしい。

 

まあそりゃそうなんだよな。

 

冬にわざわざ長距離移動とかできないし。

 

凍死の可能性があるのに野営とかできないしな、長距離移動ができない分、仕事は減る。

 

それに、動物やモンスターの類も、冬は非活動的になるから、冒険者の仕事はそう多くないのだ。

 

とは言え、冒険者に蓄えを作れるほど余裕がある奴や、蓄えを作ろうと思えるほど計画的な奴はそう多くはない。

 

なので冬でも、日雇い程度の仕事くらいならあるそうだ。

 

荷運びの人夫や、街の警邏、冬眠した動物を引き摺り出して狩るとかだな。

 

つまり、やることがないから、暇つぶししようぜ!ってことだ。

 

さて、冒険者ギルド。

 

特にやることもないので、アデリーンとヴィクトリアを伴って、ギルドに来ていた。

 

ギルドは酒場だが、簡単な食事も出す。

 

そう言えばここで食ったことはなかったなと思い、飯を頼んでみた。

 

味は……、この世界基準で普通だった。

 

食事中、アデリーンに話かけられる。

 

「そう言えば、あなたって、冒険者になる前は何をしてたの?」

 

あー?

 

あー……。

 

シバは、院卒の探偵だったが……。

 

まあ、俺の経歴でいいか。

 

「俺は、俺の国の王都で生まれてだな」

 

「あ、あのっ!」

 

ん?

 

いきなり話しかけられたが……、おお、こいつは、この酒場によく来ている吟遊詩人(バード)の男だったな。

 

くすんだ金髪の……、ハーフエルフかね?

 

整っているんだけど、どこか子供っぽいような顔だ。

 

「わ、私は、吟遊詩人(バード)のランディと申します!この街の英雄であるシバさんを歌にしたいのです!」

 

ふーん。

 

いいじゃん。

 

吟遊詩人に歌われるのは光栄だな。

 

「良いぞ」

 

「で、では、お話を聞かせてください!」

 

さて、と。

 

俺の話ね。

 

「俺の生まれた国は、世界で三番目くらいに金持ちの国だ。まあ、そこそこに繁栄していたな。その国の王都に生まれた」

 

「どんなところ?」

 

アデリーンが訊ねてくる。

 

「まあ、凄いところさ。金の力にあかして、地面の全てを石にして、島国で土地が小さいから、高い石の建物を積み上げていてな。高い建物は100feetを遥かに超えるんだ」

 

「それ、本当?」

 

「おう。コンクリートっていう、乾くと固まる粘土状の石に鉄の柱を組み込むんだ。知ってるか?」

 

「……それ、ドワーフの使う『膠灰』のこと?」

 

「膠灰……、ああ、セメントだな。そうだな、セメントに砂や砂利を混ぜたものがコンクリートだ。それで、石の塔を建てまくるんだよ」

 

「ドワーフが多いの?」

 

「いや、ヒューマンしかいない。それどころか、島国だから自国民が殆どだ」

 

「へえ、じゃあエルフもいないのね」

 

「そうだ。そんな国の王都で育ち……、普通に学校に通った」

 

「「「「え?!」」」」

 

周りから驚きの声が漏れる。

 

「が、学校?!学校って、あの、貴族とかの金持ちが通う?」

 

あー、この世界ではそんな感じなのか。

 

「まあ、うちはそこそこに金持ちだったからなあ。王都の土地を持ってて、土地転がしだけで食っていけたし……」

 

「き、貴族なの?」

 

「うちの国に貴族という制度はないが、血筋的には旧華族だったな。確か、武家の伯爵だったか……」

 

「そ、それ、本当?武門の伯爵家だったの?」

 

「遠い昔の話だ。百年くらい前までのな」

 

「百年なんて最近じゃない!」

 

エルフの時間感覚やめろや。

 

「まあ、貴族だった資産があったから、俺は相当に豊かに暮らせていた訳だ。剣術の道場に通いながら、進学して大学に通った」

 

「「「「えええっ?!!」」」」

 

あー、大学もなんか凄いのね。

 

「大学?!ってことは、学者(スクーラー)なの?!」

 

「学者じゃねえよ、論文は何本か書いたがな。それに、うちの国は学問が発達していて、大学がかなりたくさんあったんだよ」

 

「じゃあ、あなたの通った大学は普通の大学だったの?」

 

「んにゃ、国立の、国で三番目くらいに賢い大学だったな」

 

これはマジ。

 

「こ、国立?!しかも、三番目?!」

 

「まあ、受験頑張ったしなあ……。学部は史学部だったぞ」

 

「史学って……、高等貴族御用達じゃない!」

 

そうなの?

 

「まあ、基本遊んでたけどな。大学の金で海外に行って、色々と論文を書いてたよ」

 

「どこに行ったの?」

 

「言っても分からんような国だ。と言っても、行けたのは五カ国くらいかね」

 

「へえ……、船で?大変だったでしょう?」

 

「いや?飛行機……、あー、空を飛ぶ乗り物でだ。快適な空の旅だったよ」

 

「「「「えええええっ?!!!」」」」

 

「ひ、飛竜車……?!」

 

あー、この世界だとそうなるのか。

 

「因みに、卒業論文は、千年前の西方世界での騎士の生活についての考察、だったな。あれは面白かった。取材で西方を巡ってなあ」

 

「凄いのね……」

 

「で、卒業した後は、王都で本屋をやってたぞ」

 

「本屋?!本なんて高価なものを、専門で売るの?!」

 

あ、そうか。

 

そうなるのか。

 

「俺の国は本が安くてね。まあ、本屋と言っても、このギルドの倍くらいの広さの小さな本屋だったよ。それでも、八人の従業員となんとかやっていけてた」

 

「八人も雇ってたの?!本屋で働けるような知識人を?!」

 

「いや、四人は大学生のアルバイトだったぞ?」

 

「書生?!!」

 

あー、そうなるか。

 

「で、まあ、神の啓示を受けて、この国に連れて来られた」

 

「「「「えええーっ?!!!!」」」」

 

「か、神様から直接、啓示を受けたの?」

 

「ああ、この国で好きに生きろと言われた」

 

 

 

「は、はあ……、あなた、本当に凄いのね」

 

「そうか?俺くらいの奴は少ないが探せばいるだろ」

 

そう言って、食事を終える。

 

「あ、あのっ、ありがとうございました!素晴らしいお話でした!良い歌を書いて見せます!」

 

詩人に頭を下げられる。

 

「おう、頑張れよー」

 

俺はそう言って、ギルドを後にした……。

 




久々に、上質なオレツエーを書けて満足です。

シバの中の人の経歴は、旧華族の名家の長男に生まれ、土地転がしだけで年間うん千万円の金が稼げるご家庭で育ち、上流階級の人達と交流しつつ、一橋大学くらいのレベルの大学で院生まで史学を研究、卒業後は本屋を開いて伸び伸び暮らしていた……、ということになります。

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