「ぐ……、あ……?」
気絶……、してたのか?
俺は……、オデュッセイア第六研究所所長の嵐山。年齢は二十五歳。飛び級でアメリカのアーカム大学を卒業し、十三歳の頃にオデュッセイアにスカウトされた。
ここは神奈川のオデュッセイア第六研究所。横須賀の巨大な製薬会社を隠蓑にした地下研究所だ。
うーん、記憶に混濁はないようだ。
身体はどうだ?
「が……、ごぽっ……?!!」
なんだ、これは。
スライム状になっている?!
察するところ……、ヘシオドスに捕食された結果がこれなんだろう。
俺は、先程、確かにヘシオドスに捕食された。全身が焼けるような痛み……、あれは消化分解の痛みだったんだろうな。
ヘシオドスは、本能のみしか持たない原始的な生命体。
故に、優秀なブレーンたる俺を本能的に捕食して、俺と一体化した……、ってところだろう。
実際問題、ヘシオドスが自己進化や、勝手な捕食行動をしないように、常に電気信号を流していた訳だし。
ヘシオドスをそのまんま何もせず、適当な田舎の森の中にでもばら撒けば、ひと月くらいで世界の全てを捕食するとシミュレーションでは結果が出ているからな。
うーん、今思えば、便利だからと危ないもんを使ってたもんだ。コワーイ!
まあ、つまり、『嵐山雄介』は死んだ。
俺は、『嵐山雄介』の残滓のようなものだ。
だが、自意識そのものは嵐山雄介であるからして、その通り行動しようか。
俺は嵐山雄介を捕食した化け物だが、嵐山雄介として行動するのだ。アニメとかでよくある展開だな!いやむしろクトゥルフ?ほら、最後の方に「俺は一体誰なんだ?!」みたいなことが書かれた日記が見つかる感じの……。
まあ何でも良いよ。
まずは、人の形を取り戻してみよう。
「………………おらあっ!!!」
よし、人間の形に戻ったな。
いやあ……、理論上は可能だけどできちゃうとはな。
俺の意志で肉体を変形させられるのか……。
興味深いな!暇な時に自分で実験するか!
落ちている服や靴を身につけて、と。
「行くか」
隔壁は上がっているな。
非常電源に切り替わって、開いたみたいだ。
さて……、まずは、嫁に会いに行こう。
その道中、研究員は一人もいなかった。
ついでに言えば、電話は繋がらないし……。
その上。
「うお、なんだありゃ?!」
「ア"ー」
ゾンビがいた。
何でゾンビ……、っていや、そうだ!
確か、前所長が、人間をゾンビ化させるウイルスを作っていた筈だ。それが流出したのか?
とりあえず、そのゾンビは殺す。
ヘシオドスに取り込んであった細胞は多岐に渡り、その中には、俺の『作品』もあった。
俺の『作品』の遺伝子情報をロードして、片腕を異形のものに変異させ、その豪腕と鋭い鉤爪でゾンビを斬り殺した。
そして、スマホで色々と情報を見る。
「あちゃ〜……」
もう、全世界にゾンビウイルスが流出してるっぽいなこれ……。
オデュッセイアの内ゲバで世界滅亡か。笑えねーな。
おっと、そんなことより嫁だ!
「おーい!大丈夫か?!」
あ、檻が破壊されてる。
逃げたなこりゃ……。
逃げるだなんて、嫌われてたのかなあ。
ん?いや、一人残ってるな。
「キーちゃん!」
「ハ、博士ッ!博士〜ッ!!!」
「よしよし、大丈夫だよ」
ああ、良かった。
キーちゃんはいたか。
キーちゃんは、良い子だからなあ。
「他のみんなは?」
「博士ヲ探シニイクッテ言ッテ、オ外ニ……」
そっか、嫌われてたなんてとんでもない。
俺は愛されていたんだ。
わざわざ、俺を探しに、俺を心配して……。
優しくて良い子ばっかりだ。
「僕ハ、ココデ、博士ヲ待ッテタンダ……」
「ありがとう、キーちゃん。それでね……」
俺は、キーちゃんの知る博士じゃなくって、それに限りなく近い別物になってしまったことを告げる。
「大丈夫ダヨ……、チョットオカシクナッテモ、博士トノ思イ出ハ、変ワラナイモン……!」
受け入れてもらった。
「アト、博士ハ元カラオカシイシ……」
えっ?なんか辛辣なこと言われた?
次に、世界中にゾンビウイルスがばら撒かれたことをキーちゃんに教えた。そして。
「キーちゃん。いや、実験体10号……、コードネーム『キマイラ』。ここを出よう。そして、他の実験体を迎えに行こう」
「エッ……?ダ、大丈夫ナノ?」
「世界がこうなったら、もう文句を言う奴なんて一人もいないさ」
「……ワカッタ。ミンナヲ、迎エニ行コウ!」
実験体10号。コードネーム『キマイラ』。
体高170センチメートル、体長267センチメートル。
体重251キログラム。
ライオンのような胴体に、首の部分が女性の上半身になっているケンタウロス型の生命体。
大口径の機関銃もほぼノーダメージな丈夫な肉体と、両腕から飛び出る剣のような角、その角から滴る劇毒、犬並みの嗅覚と、最大で時速140kmを超える速度で走れるところ、そして圧倒的なスタミナによる継戦能力が武器。
女性としては、バランスの良い控えめな胸、ライオンの耳が生えたモサモサの髪、人懐こそうな少女らしい顔が可愛いだろう。
あだ名はキーちゃんで、甘いお菓子と可愛いものが好きな美少女だ。
いやぁ、書いたは良いけど、一話が短過ぎて、掴みが悪いなーって。
だから二話更新しました。