デルピュネ……、デルちゃんが見つかったらしい。
俺は、軍用無線の機材が並ぶ部屋に通された。
そこでは、聴き慣れた声がガンガン響き、ついでに破壊音がBGMとして流れている。
『博士ヲ返セエエエッ!!!!』
『うわあああっ!!!』
『fack!!!god damn it!!!』
んん、大変そうだ。
「もしもーし、デルちゃーん?」
俺がそう呼びかけると、破壊音はピタリと止まる。
そして。
『博士ッ!ドコニイルンダ?!虐メラレテナイカッ?!!』
デルちゃんが必死に話しかけてきた。
「横須賀の自衛隊の基地にいるから、自衛隊の人に道を聞いてね」
『オウッ!……オラァ!自衛隊!道ヲ教エロッ!!!』
これでよし。
「博士ーーーッ!!!」
「おお、デルちゃん!」
実験体8号デルピュネ。
背の高く豊満な健康体の女性のように見えるが……。
鱗に覆われた手足、大きな尻尾、鋭い牙と爪、翼膜。
イケメンな顔をしているが、裂けた口に縦割れの瞳はギャップがあって可愛い!
可愛い顔をしているが、分子の運動を操る能力と、口からプラズマ放射ブレスを吐く能力、超高エネルギーを秘めた体液を放射して最大マッハ14で空を飛ぶ能力を持つ。
ついでに言えば、人型という不合理な形のままマッハ14の速度を出してもノーダメージで、戦艦の主砲をその身に受けても弾き返す極めて堅牢な肉体と、戦車をぶん投げるほどの筋力を併せ持つ。
「大丈夫ダッタカ?!虐メラレテナイカ?!!」
「一度死んだけど、復活したから大丈夫」
「ソウカ!ヨクワカランガ、トニカクヨシ!」
「心配かけてごめんね」
「オウ!博士ハ、『モヤシ』ノ『オタク』ダカラナ!俺ガ守ッテヤラナキャ駄目ナンダ!」
破壊活動と戦闘行為に特化した存在だが、このように、とても優しい女の子だよ。
「ところで、デルちゃんは今までどこにいたの?」
「適当ニソノ辺ヲ探シ回ッテタゼ?」
「さっきは何してた?」
「米軍ニ絡マレタカラ、ブットバシテヤッタ!アイツラ、イキナリ撃ッテキヤガッタンダ!」
あ、そうなんだ。
無線通話の時に英語の叫び声が聞こえたのはそういうことか。
こーれは懲罰もんやろなあ。
米軍、米軍ね。
いきなりデルちゃんに危害を加えたのね。
極限状況であることを差し引いても、これは大きなマイナスポイントですよ。
自衛隊はよくやってくれたな。
素晴らしい。
礼に、一ヶ月かけて色々な調整作物を創造して、それを渡そう。
週休二日、八時間労働で調整動植物を作っていく。
余暇には、しっかりと趣味の時間を楽しむ。
最近は、『トワイライト・オブ・ヒューマン』とかいうゾンビポストアポカリプスもののゲームにハマってる。
これは、オープンワールドものでな、アメリカのルイジアナ州の架空の地域である『アンディール』で、ゾンビパンデミックにより滅んだ世界を、主人公のクレイグ・ランドルフ(28)が生き抜く話だ。
コンプリートアイテムを全て集め、サブミッションも全てクリアし、隠しエンディングも見たが……、めちゃくちゃ面白かったな!まさかあいつが感染者だったとは……。
気軽に外に出してもらえなかった俺と違って、アメリカの自然の中を自由にフィールドワークできる主人公は面白そうで羨ましいな。
まあ、今はもう、誰も俺を止めることはできないのだが。
何故かその辺に落ちているゾンビの研究資料を集めていくうちに、ゾンビ騒ぎの黒幕の思考とか、ゾンビの弱点とか習性とか、ゾンビウイルスの化学的性質とかを知れていくのは面白かった。
……ふむ、コンプリートアイテム。
それと、ランドマークの写真を撮って集めると、シークレットアイテムが解放されるとか。
……ふむ、アチーブメント。
あとは、対ゾンビ組織の廃棄されたキャンプを漁ると、遺伝子強化薬を注射してスキルを得られたり。
……ふむ、強化要素。
なるほど、なるほど。
こうして俺は、しばらく仕事をした後、ゾンビウイルスの研究と、物資の溜め込みを始めた……。
俺の計画は、こう。
七月から東京へ行き、東京の生存者達に素敵な体験をプレゼント!ってことだ。
折角、世界がゾンビパンデミックでポストアポカリプスなんだし、それ相応のゲームシステムを用意しなきゃ駄目だよなあ?
即ち、都合の良いところに銃弾が落ちてて!食料が落ちてて!パワーアップアイテムが落ちてる!
「博士ー!オデュッセイアノ東京支部カラ、弾薬作成装置ヲ拾ッテキタゼー!」
「ありがとうデルちゃん」
「ン……、博士。人体強化薬、デキタ……」
「おお!ヒューちゃん、助かるよ」
「オデュッセイア機関内ノデータカラ、銃砲ノ設計図ヲ見ツケタワヨ!データヲ紙面ニコピースルワネ!」
「頼むよ、スーちゃん」
「銀行トカホームセンタートカヲ回ッテ、色ンナ金属ヲ拾ッテキタヨ!薬莢ニ必要ナ真鍮ト、弾頭ニ必要ナ鉛ヲ中心ニ集メテキタカラネ!」
「いいね、素晴らしいよキーちゃん」
「人体強化薬ノ被験体ノ立候補者ト、銃弾ノテストヲスル自衛隊員ヲ連レテキマシタ」
「OK!ナイスだよ、パイちゃん」
さあさあ、作業に入ろうか。
そろそろ東京編に入りますが……、東京編は途中までしか書けてません!!!
でもまあ、仕方ないよね。
金もらってやってる訳じゃないし……。
また、思い出した頃に更新があるはずなので、その時にでも。