《秋葉原》
「店長〜!お腹すいたー!」
「そんなの、アタシだってそうよぉ〜!」
劣化したゴスロリ服に身を包む女装した美少年と、女装したゴリラのようなゴリラが、秋葉原の神社で話し合っている。
美少年は、遠目で見れば完全に美しい少女にしか見えないが、喉仏や肩幅、手のゴツさや骨盤の大きさなどから、男であることに気付ける。
ついでに言えば金髪のハーフである。
ゴリラは……、身長220cmに体重160kgの肉体をフリフリのガーリィな服装に包んだ化け物だ。
しかし、双方とも酷くくたびれていた。
「神社だから湧き水が使い放題とは言え……、水じゃお腹が膨れないよぉ〜」
「零君とルシフェルちゃんの探索結果待ちねぇん」
そして、神社の外側から声が響く。
「店長ー!」
「あっ!零君が帰ってきたよ!」
「あらぁん!バリケードから梯子を下ろしてあげてぇん?」
「はーい!」
零君とルシフェルちゃんと呼ばれた二人だが……。
零君は、バッチリ男装したヅカ系の王子様のような女で、ルシフェルちゃんは、ピアス塗れのヴィジュアル系の格好をした女だった。
「ただいま!良いものがたくさんあったよ!」
白い歯を見せながら言う零。
「It's funny!ありゃなんだったのか……?」
カッコつけているルシフェル。
「えー?どう言うことー?」
女装男子……、マリアは、ぶりっ子全開でそう訊ねる。
「うーん……、君、オープンワールドゲームってやったことあるかい?」
「え?うん、好きだよ?最近だと『トワイライト・オブ・ヒューマン』が面白かったかな!」
「まあ……、そんな感じで、そこら中にアイテムが『設置』されていたんだよ」
「……なにそれ?」
「いや、だから……、何者かがこの街に、物資を隠しているみたいだ」
「えっ、それって、盗んだってこと?」
「いや、そうだな、例えば……、無人のコンビニの看板に『FOOD』とペンキで書かれていたから、中を物色してみると、いくつか食べ物が見つかった、とか」
「ははっ、何それ、意味わかんないね」
「僕も分からないよ本当に……」
《新宿》
「おっかしいなあ……」
「ふはははは!どうした、我が友よ!」
髭も髪も伸ばしっぱなしの薄汚いホームレスの男。裾がほつれた作業着のズボンに、薄汚れた黒いタンクトップ。
それにくっついて移動している、白髪に眼帯の少女。近くの中学校の制服姿。
「……李梨花ちゃん、眼帯は視界が塞がれるからやめなって言ったよね?」
「李梨花ではなーいっ!我は、『時空の旅人シャインローザ』だっ!」
「はぁ……、おじさん、最近の若い子のことよくわかんないや……。あと、騒ぐとゾンビ来るから気をつけてね?」
「ぴいっ?!ゾンビですか?!来てるの?!やだっ、怖い!」
「あーあー、まだ来てないよ、臭いがしないからね。あいつらは臭いんだ、独特の臭いがする」
「おお、第六感(シックスセンス)?!」
「単に嗅覚が良いだけだよ……?って言うか、嗅覚は五感の一つだよね?」
そう言って、ホームレスの男は、大型の登山用鞄から瓶詰めを取り出す。
「わあっ!お魚とうずらの卵のオイル漬けだ!健二郎さん、これどこで拾ったの?!……拾ったのだ?」
一瞬、素が出る中学生の眼帯少女。
「これね、タバコ屋の棚にあったんだよね」
「タバコ屋……?何故だ?」
「いや、タバコ屋の看板に『FOOD』って書いてあったからさ。それと……」
「それと?」
「『MEDICINE』って書かれた看板の先に、薬が色々あったよ。消毒用のアルコールとか、包帯に、ビタミン剤とか」
「おお!薬か!」
「李梨花ちゃんもビタミン剤を飲んどきなよ。栄養バランスが偏ると拙いからね」
「我はシャインローザだ!!!」
《練馬》
練馬駅に銃声が響く。
『ゲアアアッ!』
ゾンビ塗れの練馬駅だが、殆どのゾンビが倒され、ゾンビの死骸は駅の前に折り重ねるように廃棄された。
「クリア」
「クリア」
「……よし、今日はこの練馬駅で休息をとるぞ。第一分隊から五時間……、いや、六時間の睡眠をとれ」
「「「「了解!」」」」
隻眼で、顔に横一文字の切り傷痕がある男がそう言った。
迷彩服に、新型の20式ライフル……。
自衛隊だ。
しかし、連日の戦闘や、夏の暑さによる汚れで、緑の服は真っ黒に染まり、酷い臭気を発していた。
隊長である男の胸には、汚れきった迷彩服の中でもなお輝く空挺徽章。
それは、男の不屈の精神を表しているのかもしれない。
「あのっ!桐崎隊長!」
「どうした、溝根一曹」
「そ、その……、駅長室に不自然な物資があります!それと、案内看板の下に……」
茶髪の女性隊員の案内の下、桐崎隊長と呼ばれた傷顔の男は、駅長室に向かった……。
「……なんだ、これは」
駅長室の扉には、『FOOD』『WATER』『MEDICINE』『AMMO』『EXPLOSIVE』の文字が書き込まれていた。
中には、5.56mm弾や9mm弾、手製の塩ビ爆弾や火炎瓶、医薬品、食料、大量の水が、合計で数十キロはある。
作為的なものはもちろん感じていたが、崩壊した練馬駐屯地から持ち出せた弾薬は半数を切っていたし、限界まで酷使された隊員達に、この山ほどの物資を手に取るなとは口が裂けても言えない。
「……鶴田一尉」
「ああ、分かった。毒味と、弾薬のテストをする」
「……すまない、友よ」
「気にするな、俺とお前の仲だろう?それに、いの一番に飯を食えるなんて、役得だぜ」
相棒の鶴田一尉に、物資のテストを任せた桐崎隊長は、溝根一曹の案内の下、駅の案内板……、周辺の地図の前まで来た。
地図には、周辺のランドマーク……、練馬駅周辺の六つの学校に番号が刻まれていた。
そして、そんな地図板の下には、6桁の数字で開錠できる小さな金庫がある。
金庫には、英語で、『この金庫には、肉体再生薬が入っている』と書かれていた。
「肉体……、再生薬だと?!」
桐崎隊長……、元第一空挺団所属。
彼は、任務中の事故で片目を失い、後方の教導隊に異動になった。
その片目が治るならば……?
《目黒》
「ふぁいあーいんざほー!!!」
「馬鹿部長!」「テメェこの野郎!」「久々にワロタ!」「草ァ!」
背の高い青年が、パイプ爆弾を投げる。
爆発により、ゾンビが複数吹き飛ぶ。
「はっはっは!部員諸君!これで今夜の寝床が確保できたぞう!」
「るっせぇボケ!この音でゾンビが寄ってきたじゃねーか!」
坊主頭の背が低めの青年がブチ切れる。
「ま、まあほら、結果的にゾンビはたくさん倒せたからさ……。部長の判断は間違いではないと思う、よ?」
メガネに猫背の男が、そう言いつつ、迫るゾンビに手製のボウガンから矢を放つ。
「あはは、まこっちゃんはアホなところが可愛いんだよね!大目に見てあげて?」
そう言いながらボウガンを放つのは、ポニーテールの女性。
因みに、まこっちゃんとは、部長の誠のことである。
「いやぁ、誰が配置したのかは知らんが、俺達が作ったパイプ爆弾とは比べ物にならない高威力だな!」
部長は、そう言いながら感心したかのように肯く。
そう、彼ら、東京工学大学のサバイバルサークルは、街に隠された武器を見つけ、それを試していたのだ。
「これならば、大学校舎の奪還も……」
「無茶言うなよ!校舎は流石に無理だ!あそこには何百人ものゾンビがいるんだぞ?!」
「俊也の言いたいことは分かるとも。だが、工作機械や爆薬の材料はあそこにしかない。いずれは奪還しなければ……」
「け、けどよ……」
「まあ、こんなに強い爆薬がその辺にあるんだ。探せば銃器とかも落ちているかもな!」
「あ、ああ……」
《渋谷》
「ケイ!これを見てっ!!!」
明治神宮に籠城している医師グループの一人、細菌学の学位を持つハーフの女医がそう叫んだ。
「これは……?!」
ハーフの女医、立花は、今日の探索の時に素晴らしいものを見つけていた。
実験器具を集めるために、近くの病院に出向き、どうにか持ち歩ける程度の器具を持ち帰ったのだが……。
「佐々木病院の前に、小さな箱があったの。それを開いたら、これが入っていたわ」
その資料は、立花が知りたかった、ゾンビウイルスの概要である。
また、添付された地図には、他の資料の在り処も書かれていた。
「立花……、お前は確か、せめても後世の人々のために、ゾンビウイルスについて研究し、資料を残したいと言っていたな」
ケイと呼ばれた男の医師は、背が高くマッチョだ。
濃い顔で、立花にそう訊ねる。
「ええ、そうよ。でも、これほど詳細な資料が既にあるなら、研究するよりも資料を集めた方が早いわ。……その、協力してもらえる、かしら?」
「ああ、もちろんだ」
「ありがとう、ケイ!」
「しかし、一体誰が……?」
「そうね……。誰がこのウイルスの資料を……?」
ここで一章が終了です。
そして二章、東京編が始まる……んですが、途中までしか書けてませーん!
二章では、オムニバス形式で様々な東京のサバイバリスト達の行動を綴っていく予定なのですが、何分、登場人物が多くて……。
まず二章の頭の部分では、募集したキャラクターや、俺が面白半分で生み出したキャラクター達が、この世界をゲームだと思い込んだ謎の精神異常博士怪物(主人公)と出会うところから始まります。
そして、生存者が主人公の思惑通りにこの世界を「攻略」していき、最後にはグループを作り、拠点を作り、自活を始める……、みたいな話。
まー、そこまで長いけどね!
一章の倍くらいいくんじゃねーのこれ?