ピピピ……、ピピピ……。
聞き慣れたスマホのアラームの音で目を覚ます。
「ん……、ふぁあ」
八階建てのTOKYOラジオのビルの、すぐ隣にあるマンションの一室で目覚めた僕は、隣で眠る武蔵野君と真島君を起こした。
「おはよう」
「おはようでござる」「おはっす」
そして僕達は、バケツに入った水を使って顔を拭いて、身支度を整えてマンションを出る。
「んお、おう!おはよう!」
「おはようございます、楠木さん」
僕らが部屋を出るタイミングに、ちょうど、隣の部屋に住む楠木さんも出てきたので、挨拶を交わす。
「いやぁ……、近くにマンションがあったのは助かるね」
「はい、そうですね。でも、掃除の時は大変でした……」
「あはは、本当にね。悪臭を放つ冷蔵庫とか、ひどい部屋にはゾンビがいたし……」
「でも、量産型オルトロスが全部倒してくれたので、危険がなかったのが救いですね」
「掃除アメーバも役立ったな」
そして僕達は、そんな話をしながら、TOKYOラジオの一階にあるカフェテラスへ向かう。
ラジオ局までの道は、量産型オルトロス五匹が巡回している。と言っても、住処のマンションとラジオ局は、すぐ隣だから、巡回も何もないんだけどね。
そして、ラジオ局の前には、牛の頭と3メートルくらいの身長を持つ筋肉の塊、量産型ミノタウロスが二体、それぞれが、工事現場から拾ってきた鉄パイプを持って門番をしている。
「ご苦労様!中に入れてくれ!」
楠木さんがそう言うと、ミノタウロス達はこちらをジロリと睨んで……。
「楠木様、久保田様、武蔵野様、真島様。ドウゾオ入リクダサイ」
と、そう言って道を開けた。
中に入って……、カフェテラスへ。
「あら!おはよう、楠木さん!」
「おはよう、水本さん!」
声優の水本奈津子さんや、元カフェテラスのスタッフさん達が、朝食を作ってくれている。
朝食は、アンブロシア・グレインのパンと、アンブロシア・プラントのサラダ、それと目玉焼き……。
IHクッキングヒーターは、電気を生むウミウシである電電虫によって稼働している。電電虫は、このビルに直接つながる電線に接続されているようだ。
パンは、ナンのような平らなパン。どうやら、フライパンで焼いているらしい。
アンブロシア・プラントは、葉物野菜と根菜の塊なので、これの葉をちぎって、アンブロシア・ツリーの葉っぱと根菜の部分をすり潰して作ったドレッシングをかける。油は、マンション内にオリーブオイルを買い溜めしている人がいたようなので、それを使っている。
美味しい朝食を済ませたら、健康維持のために、三十分間くらい畑の周りを走る。
畑は、ラジオ局の向かい側と、斜向かいのビル三棟を破壊してできた空き地に作られている。
その外周がちょうどいい長さで、僕達はみんなここを走って汗を流している。
運動が特別好きな人は、ラジオ局の屋上で筋トレやバトミントンをしたりしているらしいね。
特に、武道経験者が周りの人を集めて、技を教えたりしているみたい。
さっき会った水本さんも、実は薙刀の段位を持っているらしく、鉄パイプを振り回して訓練したりしているそうだね。
まあ実際、ゲームクリエイターのような仕事をやっていると、運動不足になりがちだから、ちょうど良いんじゃないかな。
僕達も、午後に筋トレをしようと思う。
さて、午前。
僕達は、ラジオ放送の準備をする。
今日から、『アポカリプスラジオ』の放送が始まるのだ……。
午前九時には、先週に各地に離しておいた、十六人のハルピュイアが帰還している。
ハルピュイアと言うのは、両腕が羽根で、両脚が猛禽の姿をした人型の生物兵器……、だそうだ。
飲食せずとも活動可能で、一日に1000km程度飛行できる偵察型。
余談だけど、ハルピュイアの人の部分は、可愛らしい十代半ばから二十代前半ほどの女性型なので、男性職員からの人気は絶大だ。
「報告シマス。九州地方ハ、鹿児島県域ニ人口ガ集中シテオリ……」
報告を聞いたストーリーライター達は、それを元にラジオの台本を作っていく。
とは言え、聞いた情報から、事実と今後の見通しについて書くだけなので、ライターとしての技術はほぼ使わないらしいけど……。
そして、お昼に食事をとってから、ラジオ放送の開始だ!
「はい、カット!」
「「お疲れ様でーす!」」
午後一時から午後五時まで、声優さんが代わる代わるコメンテーターをして、今まで書き溜めていた情報を全部話し終えた。
明日も、同じ時間にラジオ放送をすることと、また別の時間にラジオの内容をリピートすることを発表して、初放送は終了した……。
そして、午後六時。
夕食兼、打ち上げだ。
近くのマンションやコンビニから取ってきたお酒と、アンブロシア・スパイスと増える鶏から作ったチキンカレーで乾杯!
「イェーイ!酒だー!」
楠木さんがはしゃぐ。
初めて会った時は、ひどく痩せ細っていた楠木さんも、今では血色のいい中年に戻っているようだった。
「ホシ君!どうだった?」
「あ、はい!良いラジオでした!」
「いやいや、ホシ君の力があってこそ、だよ!聞いたよ?ラジオの台本の件」
ええと……、なんのことだろうか?
僕が首を傾げていると、楠木さんは言葉を続けた。
「避難所の案内をやらない方が良いって、ホシ君の案なんだって?」
「ああ、その件ですか。はい、そうですよ」
「いやあ……、まさか、人が人を襲うだなんてなあ……」
そう……、下手に上手くいっている避難所をラジオで紹介して、そこに人がなだれ込んだら、大変なことになると僕は思い、急遽台本を変更してもらったんだ。
今や、野盗が現れ、人を殺して物を奪うのが当たり前になっている。
実際、僕達も襲われて、命からがら逃げた経験が何度もあるのだ。
だから、避難所の紹介はまだできない。
「ホシ君は、これから何するかとか、考えてる?」
「はい、ゲームクリエイターチームの皆さんと、サバイバルアプリを作って、博士に渡そうと思っています」
「ははあ、なるほどねえ。俺達声優は、喋ることしかできないからさ。負担かけちゃって悪いけど……」
「いえ!そんなことはありませんよ!」
「そういや、ホシ君って、『スターウェーブ』の社長なんでしょ?またいつか、ゲーム作ってさ、その時は俺の声を使ってくれよ!ちょい役でもいいからさ!」
「ありがとうございます!新作の案を練っておきますね!」
そんな話をしながら、夜はスターウェーブ内で新作ゲームの話し合いをして、十時くらいに寝る……。
まだ、不便なことは多い。
けれど、これからどんどん良くなっていくはずだと、希望はある。
ただ、今回の事で分かったのは……。
芸は身を助ける、ということだった。
まあ別にダメージとかはない……。
特に恋人とかいなくてもねえ。
寂しくはあるけれど、普段の人付き合いのめんどくささを考えると独り身の方が楽……。
多分、どんなに可愛くて大好きな人ができたとしても、毎日他人と顔合わせるとかストレス!って感じの人間クズだから……。
悲しい話はここまでにして、これからの話をしましょう。
あと数話でゾンビものの書き溜めはなくなります。ご愛顧いただきありがとうございますってな感じで、これからはちょいちょい書いていくので応援してください。
とりあえず、田舎剣士、ネットスーパー、帰還勇者、TRPGの四つの既存作品の続きが5話ずつくらい書けてるんですけど、皆さん多分、少なくとも10話くらいは連続で読みたいとは思っていらっしゃるんじゃないかと。
そんな訳で既存作品は書き溜めを頑張ります。
で、今手元に新作が五、六本あるんですけど、その中でも四十話くらい書けてるやつを吐いていこうと思います。