そして、一週間後。
三日でやるとは言ったが、一週間の猶予がもらえた。
俺は、車両整備工場と、その近くにある車屋から、ありったけの車を集めて、修理した。
もちろん、ぶっ壊れた事故車ばかりだから、ニコイチで修理して、キメラみたいな変態車になることも多かったが、それでも……。
三台の中型トラックと、ハイエース二台を修理できた。
バイクは……、学生時代に趣味で弄っていた程度なので、知識が不足気味だったが、それでも二台は使えるようにしておいた。
それと、今流行りのEV車も二台見つけた!
電気発生装置があるなら、これは強い味方だ!
凪の方も、革製のベルトポーチや小物を作っていたようだ。
俺達は、サンタクロースを待つ子供のように、今か今かと自動車整備工場の事務室で、博士の到着を待っていた……。
「おこんちわー」
声が響いた。
「聖也さんっ!博士!博士が来たよ!」
「おうっ!」
俺達は、笑顔で博士を出迎える。
「車!できました!」
「革の道具です!」
作ったものを渡すと、黒尽くめの女がエンジンをかけて確認して、その後にドラゴンみたいな女が、ベルトのようなもので固定してどこかへ飛んでいった……。
黒尽くめの女から、何事かを耳打ちされた博士は、「ありがとね、パイちゃん」と言ってから、こちらを向いてこう言った。
「素晴らしい成果だ」
「は……、はいっ!」
褒められた……。
はは、他人から褒められるのって、何年ぶりだ?
二、三十年ぶりかもな。
相手が理外の化け物なのに、何故か俺の目頭は熱くなった。
「ほら、これを」
そんな俺に渡されたのは、『取引用』と印字されたタブレット。
俺はそれを、凪と一緒に覗き込む。
電子署名にサインして、名前とパスワードを設定。
そして、取引フォームを開くと、そこには、シルバーメダル×17と表記されていた。
タップして説明文を開くと、こうだ。
ブロンズメダル:食料や資材など、簡単に生産できるもの。
シルバーメダル:車両や弾薬など、高度な専門技術によってのみ生産できるもの。
ゴールドメダル:精密機器や高度な化学薬品など、極めて高度な専門技術の結晶。
なるほどな、分かりやすい。
それぞれ、100枚のメダルを溜めると、一つ上のメダル1枚と交換できるようだ。
品物は、ブロンズメダルでは、1枚で食料や資材の大体500gくらいと交換できるようだ。
因みに、ブロンズメダル5枚で、『お食事券』『入浴券』『コインランドリー券』が得られる。
10枚で『治療券』だ。
シルバーメダルでは、車両や銃火器、『インフラ生命体』と『量産体生物兵器』『完成体生物兵器』がラインナップ。
5枚で『手術券』だ。
ゴールドメダルでは……、『キャンプ設置』『生物の受注生産』『ゾンビウイルス適合薬』『若返りの秘薬』『肉体欠損再生薬』などが得られるようだ。
うん……。
まあ、うん……。
つまりこれは、ゴールドメダルの『キャンプ設置』を目指せということだろう。
なるほどな……、要するに、仲間と協力しろというメッセージか。
だが、どこにまともな人間がいるのやら……。
「……ところで、お前らはラジオは聞いているか?」
そんなことを思った俺に、不意に、博士が話しかけてきた。
「……ラジオですか?もう、やってないんじゃないですか?」
俺は反射的にそう答えた。
「……ん?ああ!そうか!宣伝しなきゃ駄目か!実は、毎日ラジオをやっているんだよ。ラジオでは、俺の移動ルートや、俺以外から出される依頼、お役立ち情報の数々を放送中なんだ。是非、聞いてやってくれ、ほら」
「は……?え?ラ、ラジオが、放送している?!」
俺は、博士に手渡されたラジオを急いでつけた。
『『ザザッー……、ポストアポカリプスラジオ〜!!』』
こ、これは……?!
いる、のか。
この世界には、ラジオを放送できるくらいに豊かな人々が、いるのか?!
「こっ、このラジオは、どこで?!」
俺はそう訊ねる。
「それは言えんなあ。そんなことをすれば、人々が殺到して大パニックだ。だが、『話の通じる人間はいる』ぞ?対話をしてみろ、それが人間だろう?」
そう、か……。
今までは、人間は殺し合って奪い合う競争相手だったけど、これからは、仲間になる存在なのかもしれない……、のか。
「ちょっと……、考えてみます」
「おう、そうしろ。……で?何と交換するか決めたか?」
「えっと、それは……、まず、この水を吐く亀の『水水亀』をください。それと、水をガソリンに変える『油油藻』と、『量産体オルトロス』二体と『量産体ミノタウロス』一体を」
水は当然、必要だ。
ガソリンは、この整備工場で見つけたキャンピングカーを動かすため。
犬型は周辺警戒、人型は護衛と重労働用。
生物兵器とやらについては、ここに書いてあるスペック表と、何よりも、博士についてまわり甲斐甲斐しく世話をしているあの生物兵器と思わしき女達を見れば、その有用性に気付けるもんだ。
「じゃあ、これを渡しておくぞ」
と、グロテスクな産卵シーンを見せつけられたのち、手元に残った生物達を配置して、いざ、まともな人間を探す旅へ……!
「おい」
「テメェは……」
そんなことを考えつつ、俺と凪はキャンピングカーに乗って外に出たそこに、奴がいた。
正義漢野郎だ……!
しかも、三人の仲間を連れてやがる!
「クソが……!テメェ、何の用だ!」
「そこのガキ!お前は助かりたいのか?!」
正義漢は、俺を無視して凪に話しかけた。
凪は……。
「……最初は、嫌でした」
「なら……!」
「でも……、でもっ!聖也さんは!弱い私を助けて、守ってくれました!食べ物も水も、私を優先してくれました!」
「……」
「聖也さんは、私の大切な人です!私は、聖也さんの側にいたい!!!」
……凪。
お前は、そんなことを……。
「……なるほどな。おい!聖也とかって奴!」
正義漢が俺の名を呼んだ。
「……何だ?!」
「あー……、その、なんだ……。す、すまねえな、前は。お前が無理矢理ヤッてるんだと思って、頭に血が昇っちまった」
あ……?
は、は……。
そうか、そうかよ。
「いや……、分かってくれりゃ、それでいいんだ」
「俺は、龍崎遼河ってんだ。天月流活殺術っつう古武術をやってる」
「俺は、社聖也だ。こうなる前は、自動車の整備工をやっていた」
まともな奴、か……。
ヤバくなっても、この量産体ミノタウロスを側に置いておけば、最低限は安心、か……?
「なあ、龍崎。俺達は、まともな人間を探して、いずれ定住できるところを作りたいんだ。お前らも来ないか……?」
アンケートありがとうございました!
大体分かったのは、俺が書きたいことと読者が読みたいことは一致しているということですね。アンケートに忖度がなければ、ですが。
案の定、ヒロインちゃんを見所だと思っている人はいなくて、添え物ヒロイン!と思って大爆笑しました。ありがとうございます。
これで心置きなく……、新作が書けるなあ!(ニチャア……
次からはみんな大好きナーロッパだよ。