ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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あーん。


10話 弟達

六歳。

 

村長のガキをリンチした事件から少し過ぎた頃。

 

俺は、魔法であっさりと秘密基地を修繕していた。

 

エイダが「えぇ……」みたいな顔をしていたが華麗にスルーですよそんなん。

 

「直せるんならあんなに殴る必要なくないですか?」みたいな雰囲気を出されたが無視無視!

 

だってしょうがないよね、弱いもの虐めは楽しいんだもんよ。

 

弱いものイジメをしていると思い込んだ弱いもの、を虐めるとか、中々ない面白展開だった訳だし。

 

この機会を逃す訳にはいかなかったのだ。

 

すまんな、エイダ。

 

 

 

さて、事件から時は流れ行き、時節は夏。

 

暦は意外と正確らしく、地球と同じように十二分割された月の内、八月の初めの頃。

 

俺は、親父に呼び出されていた。

 

「エグザス」

 

「はい!」

 

「村長の息子だがな……、村の教会で診てもらったのだが、潰れた鼻は生涯治らんらしい」

 

へー。

 

「そうですか……、悪いことをしてしまいましたね……」

 

うーん、心にもないことを言っちゃったぞ。

 

でも、心にもないことを口に出せないと、社会人なんてやれないからなあ。

 

仕事大好き!やりがい!勉強になる!……ってな。

 

いや、俺はマジで仕事が好きだったけどね?

 

好きなプログラムを開発するだけで金もらえんだもん、天職でしょ。

 

っと、それは良いや、もう終わったことだ。

 

申し訳なさそうな態度の俺を見て、親父はこう言った。

 

「確かに、お前は正しい。自らが整備した土地を荒らされて、それを見て泣く女性がいるのに立ち上がらないのは、騎士道に反する!」

 

お、そうだなー!

 

「しかし、やり過ぎは良くない」

 

まあそれはそうね。

 

「なので今日から、お前に力の使い方を教えてやることにした!」

 

んんんんんーーー????

 

理論がぴょんぴょんしてるんじゃ〜?

 

飛躍ゥ。

 

え?

 

まさか、原始人よろしく、棒振りのお稽古をしろと?

 

あほくさ……。

 

「生憎ですが、僕は武術よりも礼儀作法や文学を習いたいのです」

 

「何を言うか!貴族は戦う者だぞ!」

 

めんどくっせー。

 

じゃあテメーが疎かにしている礼法や文学、ひいては経済や科学はどこで学ぶんだ?と問いたい。

 

このゴミプロビで必要なのは、棒振りのお稽古ではなく経済的発展だろうに。

 

もう本当に嫌になるな。

 

あー、じゃあ折衷案だ。

 

週の半分の三日は遊んで、四日は訓練ということにした。

 

所詮は田舎侍に過ぎない親父程度、簡単に舌先で転がせる。

 

ほーら、こういう交渉術とか、お前が使えない技術なんだぞー。

 

テメーのガキに舌先で転がされる気分はどうでちゅかー?

 

……いや、そんなことを自覚する脳みそがまずないか。

 

悲しいね。

 

まあ、毎日訓練なんてアホくさいことやってられんからな。

 

そもそも、俺は既に魔力の効果で父親より強いし。

 

はあ、仕方ない仕方ない、棒振りのお稽古ね、はいはい。

 

 

 

で、訓練中なのだが……。

 

「まずは走り込みだ!」

 

「はい!『アプリケーション 《シータップ》 スタート』」

 

ちょっと昔の話をしよう。

 

俺の前世の話だ。

 

重障害者って分かる?

 

両手がないとか、脊髄損傷で身体が動かないとか。

 

うちの会社では、そんな重障害者向けのコンピュータインターフェースの開発をやっている下請けがあったのね。

 

まあ、最初は、開発は難航したらしいよ。

 

我々は普通、健康な両手を使って、キーボードにタイピングできるじゃない?

 

だから、手が動かない人はどうすればタイピングできるのか……?って悩まれたもんですよ。

 

音声入力システムについては、結構前から開発されてたからね、それとは別のやつってことだったんだが……。

 

そんなある時、一人のエンジニアが気づいたんだよ。

 

「目が見えるなら、見た文字を入力できるようにすれば良くね?」とね。

 

つまり、モニタにカメラを設置して、眼球の動きをトラッキング。

 

視線の先にある文字が入力される……、と言うシステムが生まれた。

 

その名も、『シータップ』……。

 

俺はそれを、アプリケーションとして開発した訳よ。

 

やってることはそんなに難しいことでもないしね。

 

単に、視点のトラッキングだからね。

 

カメラを向かい側に配置して視線を感知!とかではなく、概念的なARヴィジョンを魔力によって網膜投射する形式にしたが、まあ、こんな程度、数学とプログラミングが「チョットデキル」くらいなら誰でもできるだろう。

 

俺はこれを使って、ノロノロとランニングをしている最中に、システム開発に勤しんでいた……。

 

 

 

全くもって下らない。

 

日々の生活も覚束ないような我が家に必要なのは、騎士の名誉ではなく収入源じゃないのか?

 

四歳になった弟のシリウスと、三歳になった妹のセシリーは、いつも腹を空かせている。

 

親としてやるべきことは、剣の訓練ではなく、子供を飢えさせないようにすることだろうに。

 

これだから、俺はこの世界の親に感謝できないんだよなあ。

 

口だけで愛しているだの何だのと伝えられても、実際問題、我が子を養えてないんだもんよ。

 

そんなんで子供が親を尊敬できると思うか?

 

それに……、俺がこうして愛想良くしてやっているから騙されているようだが、俺の本心も見抜けてないところとか。

 

あとは、俺が昼間に何をしているか把握していないところとか。

 

親としてどうなんだ?

 

俺からすれば、「普段何やっても放置で、問題を起こした時は怒って、やりたくないことを強制するが、満足に飯も食わせられないけど、無条件で尊敬してくれ」と言われているようなもの。

 

前世の親は、「ありとあらゆる面倒を見た上で、大金と多大な労力を使って勉強させてくれて、家業を継がずとも笑顔で送り出してくれて、やったことに文句を言わず、俺が大成してから金をせびることはない」という聖人だった。

 

このギャップが埋められないんだよなあ。

 

大体、この弟と妹も意味不明だよね。

 

俺がまだ一人っ子だった頃も、大してたくさん食えていた訳じゃないのに、どうして食い扶持を増やすような真似をしちゃったの?

 

家族計画ガバガバかよお前よぉ。

 

犬猫じゃねーんだぞ?

 

育てられねぇんなら子供なんて産むなよ。

 

お陰で、弟と妹はいつも腹を空かせている。

 

ま、それを逆手にとって、俺の食べる分をいくらか弟と妹に分け与えて聖人ロールプレイしてポイント稼ぎしてるんだけどね。

 

だって俺は魔法である程度食材を用意できるからな。

 

隠れて腹一杯美味いもんを食ってるに決まってるだろ?

 

そんな訳で、弟と妹は、俺のことをとても尊敬しているようだった。

 

下手すりゃ、両親よりも俺のことを尊敬しているレベルだなこりゃ。

 

犬猫でも、人間でも、餌をくれる人には懐くもんだ。

 




自作、一番面白いとは口が裂けても言えないが、一番好きとは言えるな。

ただ毎回、作り込みが甘いなとは思ってしまう。もっと時間をかけて書けとか。

まあ、趣味でやってるからね……。

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