全体的にクロ◯ネガっぽい世界線でいきます。
1話 転生
ああ、素晴らしきかな我が人生。
血と硝煙に彩られた戦場の景色。
殺し、犯し、奪う。
扇動し、破壊して、侵略する。
こんなに楽しいことがあるか?
気に食わねえ奴をぶち殺して、女共を犯して、食いもんも金も、土地も権利も全部奪う。
人が獣だった頃の本能だろ?
あるだろう、誰にでも。
誰もが、殺して、犯して、奪いてえって、心の奥底で望んでるんだよ。
欲望を解き放って生きるのの何が悪いんだ?
「そうだろう、カミサマよぉ!」
「いや……、本当困るんで……。本当、本当に困るんで……」
今、俺の目の前で土下座をしているのは、神を名乗る女。
俺にとって神は、馬鹿な兵隊共を扇動するためのプロパガンダに過ぎなかったが……。
「本当にいるとはな」
「いや、神って言うか、この世界の管理者なんで。厳密に言えば神じゃないんですよ」
「何だァ、そりゃあ?」
「いや、まあ、その辺は別に納得してもらわなくても構わないんですけど」
ふん、まあ良い……。
「で?そのカミサマが俺様に何の用かね?一足先に地獄にでも落とそうってか?」
俺はさっきまで、後方基地で寝ていたはずだ。
「あ、いえ、実は地獄とか天国とか、そういうのは別にないんですよ」
へえ、そうなのか。
「あるのは、転生です」
転生、輪廻転生ってやつか?
「それで、ものは相談なんですが。神宮寺葉月さん」
「何だ?」
「ちょーっと、一足先に、転生してみませんか?」
はあ?
「断る」
断るに決まってるよなあ?あともう少しで、世界がもっと面白くなっていたんだからな。
ビッグゲームを中座だなんて興醒めだ。
「いや、本当に……、困るんで……、困るんで……」
「何がだ、順を追って話せ」
縋り付いてくる自称『管理者』を蹴り飛ばし、俺は地面にあぐらをかいた。
立っているのは辛い歳なんでね。
「はい、まずですね、神宮寺葉月さん。業界での呼び名はジン。貴方は、世界最大規模の傭兵組織、『灰の指先』のボスです」
「そうだな」
「銀行強盗からテロ、窃盗、何でもござれの違法集団、国連すら手を引くヤベー奴らです。ソマリアの海賊組織、ヨーロッパや南米、中国のマフィアシンジゲート、世界中のPMCに、マーダーインク、テロ組織……、世界中の悪党達の総元締めです」
「酷い言い様だ」
事実だが。
「それで、近い未来、貴方方が原因で、核戦争が起きます」
「……ほう?神というのも強ち間違っていないようだ」
そう、核戦争だな。
そろそろ、寿命的に死んでもおかしくないからな。最後に大きな花火を上げてみようと思っていたところだ。
「いや本当に、核戦争とか起こされたら、転生システムがパンクするんですよ。お願いですから、転生して下さい。この世からいなくなって下さい」
ははっ、この世から消えろと?
「ここで、はいそうですかと言う奴がいるなら見てみたいものだが」
死ねと言われて死ぬ奴がいるか?
「はい、ですから、特典を用意します」
「特典?」
「神であるこの私が、スペシャルな転生特典を用意します!ですから、どうかここは転生して下さい!」
「何だ、そりゃ」
「あれ?今時のラノベとかご存知でない?」
「らのべ?なんだそりゃ?」
「ほ、ほら、小説とかで、転生とか」
「小説で転生?豊饒の海か?ごめんだね」
「あ、いや、そんなシリアスなアレじゃないです。豊饒の海みたいな転生じゃなくって、今の記憶を保持したまま、若返って、こことは違う世界で生活してもらう、って言う感じです」
成る程。
「では、デメリットは無いと?」
「はい、ありません」
「しかし、転生した世界が、すばらしき新世界のようなディストピアならどうしてくれる?」
「あ、それも大丈夫です。飛ばす先は剣と魔法のファンタジーですから」
「ファンタジー?指輪物語のようなものか?」
「あー……、まあ、そんな感じです、はい」
「では、生まれた先が貧民や少年兵だったら?」
「そこも大丈夫です。十代半ばの頃くらいの肉体にして放っぽり出します」
ほっぽり出すのか。
「貴方なら、ある程度のお金と物資があれば、そこからどうとでもできるでしょう?知ってますよ、貴方の人生。物心つく頃には少年兵で、力をつけると、大人達を皆殺しにし、他の子供達を扇動。略奪を繰り返しながら一代にして世界最大の傭兵組織を作り上げた貴方の手腕なら、着の身着のまま放り出してもなんとかするでしょうに」
ふむ、まあ、できないことはないな。
「まだある。言葉は通じるのか?」
「共通語は英語です。10ヶ国語以上を巧みに操る貴方からすれば、困ることはないでしょう」
ふむ。
「危険な原生生物は?」
「モンスターがいますが……、まあ、殆ど問題はないでしょう」
流石に巨人やドラゴンが出たら困るんだがね。
「貴方には能力が与えられます。まず、強靭な肉体、そして『武器庫』です。まあ、私が与えている訳ではなく、貴方の生きた人生から再現される、英霊としての宝具みたいなものなんですが……」
強靭な肉体は分かるが……。
「武器庫?宝具……、封神演義か?」
「えーと、わかりやすく言えば、古今東西の軍用品を無限に召喚できるアイテムボックスです。まあ、便宜上武器庫と名付けるだけで、本来は兵站や兵器を生成、保管する倉庫ですね。言わば、現代版ゲートオブバ◯ロンですかね?」
「げーとおぶ……?何だって?」
「……ゲームとかやらないんですか?」
「ゲームは現実がつまらない奴がやるものだろ。俺は現実で殺し合いしたり女を抱いたりする方が楽しいからな」
電子画面でマウスをガチャガチャ弄って、電算機の上で殺人をしてもつまらんだろう。
そんなことをするくらいなら、現実世界で『的当て』や『ハンティング』をする方が楽しい。
「ははあ、成る程……」
「それで、武器庫ってのは?」
「ですから、武器を中心とした物資を無限に出せる……、四次元ポケットのようなものです」
四次元ポケット、か。
「実は既に能力は覚醒してますよ。ここで試してみて下さいよ、ほらほら」
白い地面と、白い空。黒いターゲットドローンが現れる。
ふむ。
「……どう使うんだ?」
「えっと、取り出したい物資を思い浮かべて、こことは違う空間にアクセスする感覚で手を伸ばして下さい」
難題だな。
「因みに、脳内で検索をかけることもできます」
「検索?」
「ええと、例えば、『銃、日本、最古』とか考えながら、手を伸ばしてみて下さい」
やってみるか。
銃、日本、最古。検索。
「うおっ?!手が……」
黒い渦のようなものに手を突っ込んだ俺。
引き抜くと。
「……火縄銃?」
「はい、検索結果通りに、日本最古の銃が出ましたね」
……成る程。
M4カービン。
そう考えつつ、こことは違う空間に手を伸ばす感覚で手を渦に突っ込む。
ずるりと、M4カービンが。
銃口をターゲットに向けて射撃。
全弾命中。
「ふむ、反動が殆ど感じられないし、弾速が遅い」
「それは、貴方の筋力と動体視力が強化されているからです。他にも、常人を遥かに超えた心肺能力や、毒を分解する機能、体力も耐久力も段違いです」
成る程、これが強靭な肉体、か。
「確かにこれは便利だな。兵站の概念が破壊される。しかし、どれくらいの範囲で出せるんだ?戦車や航空機は?食料などは?」
「出せます」
ふむふむ。
「野外炊具。米。自衛隊糧食」
結果、全て出た。
どうやら、糧食という形で出すか、原材料という形でなら出せるらしい。
「M1A2エイブラムス」
結果、渦が広がり、そこから戦車が現れた。
「しかし、一人では動かせないからな。無用の長物か」
「あ、いえいえ。武器庫のアクセス権の所有者は、出した兵器を自在に操る能力も得ます。動けと念じてみて下さい」
「動け」
戦車は唸るような轟音とともに前進した。
成る程。
「撃て」
主兵装がぶっ放された。
これは良い……、最高だ。
「アパッチ」
空中に渦が発生、そこから、飛行している状態のアパッチが。
「撃て」
アパッチのミサイルが空を切り裂く。
輸送機はどうだ?
「オスプレイ」
結果、問題なく召喚された。
戦闘機は?
「スーパーホーネット」
結果、問題なく召喚された。
空母は?
「ジェラルド・R・フォード級」
結果、問題なく召喚された。
兵器群は、脳内に各種情報が流れ込んできて少し困惑したが。例えば、レーダーや武装の残弾数、装甲の状態だったりなどだ。
では……。
「W88」
ふむ……。
結果、核弾頭が出た。
成る程。
「どうです、武器庫は気に入ってもらえましたか?」
「クハハ、最高だな」
「はー、良かった。それじゃあ、転生してくれますね?」
「まあ、良いだろう」
この力があれば、どこだってやっていけるだろう。
ファンタジーだろうと、どうにかなる。
ドラゴンだって巨人だって、ミサイルを脳天にぶち込んでやれば死ぬだろう。
恐れるものはないな。
「では、この扉の先が転生先になっていますから、どうぞ」
「ああ、感謝しよう、神よ」
そう言ってドアを開ける。
「あ、因みに、言い忘れてましたけど、転生先はモン娘的世界線です」
「は?」
何だって?
もしかしたらエロになるかも。