「おい」
「なあ、おい!」
「おい、あんた!」
………………はっ?!
「聞いてんのかってうおおおお?!!」
俺は、反射的に話しかけてきた男の腕を捻り上げた。
コルトガバメントを呼び出し、後頭部に突きつける。
「何だテメェは……」
「あ、怪しいモンじゃねえよ!俺ァただ、兄ちゃんが道のど真ん中で突っ立ってるモンだから、どうしたのかと思って!」
確かに、殺意は感じられない。
ふむ、ここはまだ暴れるべきところじゃないな。
殺しは好きだが、時と場は弁える。それに、何にでも噛み付く馬鹿な犬じゃないんだよ、俺は。楽しい殺し合いは頭を使わなきゃならねえよなあ?
クレバーにやるんだよ。誰彼構わず殺しまくるのは間抜けだ。
「ああ、すまない。急に声をかけられたから驚いてしまってね」
コルトガバメントを召喚したホルスターに入れて、腰に巻く。
因みに、服装は、カーキーのコンバットパンツにミリタリーブーツ、上は黒の無地の半袖シャツ。
これだけじゃ不安だな、後ろにボウイナイフも装備しておくか。
「いてて……。いや、驚かせちまった俺も悪かった。だがよ、こんな道のど真ん中で突っ立ってたら危ねえぞ?モンスターに襲われるかもしれねえ」
ああ、そう言えば、ファンタジーがどうとか。
指輪物語やドラゴンライダーみたいに、醜いモンスターが人の生き血を求めて彷徨っているんだろうか。
まあ、そう言うのを殺して回るのも乙なものかもしれない。ある種の、命を賭けたハンティングか、興味深いな。
「それは恐ろしいな」
「兄ちゃん、旅人かい?にしたって軽装過ぎるけどよ」
ふむ……。
軽装過ぎるか。
確かにそうだ。
怪しまれているな、やはり殺すか?目撃者はいないようだし……。
「ひょっとして、アイテムボックスでも持ってんのか?」
アイテムボックス……?
ああ、そういえば、神がこの武器庫をそんな風に表現していたな。
「ああ、そうだとも」
「へー!若いのに凄えな!魔法使いなのか?」
下手に嘘をつくのは後でボロが出るな。
「いや、旅や行商に便利だろうと思って、この魔法だけを必死に覚えたのさ」
「成る程な。それじゃあ、旅人兼商人ってところか」
「ああ、そうさ。しかし、最近田舎から出たばかりで、この辺りのことは何も知らないんだ。どこに行くかも決まっていない」
「何だって?うーむ、それじゃあ、俺について来いよ。俺ァ、この近くの、ジョージアの街に行くんだ。取り敢えず街に入ってから、冒険者なり商人なりになりゃあいい」
行商人のロベルトと名乗る男と共に、街を目指す。
道すがら、情報を聞き出す。
「地理?ああ、この辺はヨロパ地方だ。東には麗国、ずっと東にはジパング。それと、西にもメリカ大陸があるな。俺ァ行ったことねぇけどよ。北は凍土で南は暑い。地図?そんな高級なモン、しがない行商人の俺が持ってる訳ねぇだろうがよ」
地理、地球に近いことが予想できる。
「ところで兄ちゃん、その腰の銀色は何だ?その、L字型の。じゅう?なんだそりゃ?ああ、杖なのか。変わった形の杖だな。……武器?そりゃ基本は剣と槍だな。ジパングでは刀ってのがメジャーらしい。あとは弓と、魔法使いなら杖か。俺もちょっとは剣を使えるんだぜ。兄ちゃんは、ナイフか」
技術、中世後期並。
「兄ちゃんのナイフ、そりゃ凄え業物だな!俺も商人だぜ、目利きはできる。そりゃ金貨一枚はするぜ!貨幣価値?あー、そうだな、飯一食分で銅貨十枚くらいだな」
経済、未発達。
総評、脅威低。
しかし、権力者が強い力を持つことが確認されている。
目立ち過ぎるのは得策ではない、か。
当分の間はこの世界を見極めるために世界を回るのが良いか。
魔王や勇者のような面白そうな存在もあることだしな。
ああ、そうさな、人間の味方をするフリをして、魔物を殺し回ったあとは、魔王とやらを下僕にして魔物の味方になり、人間を殺して回るなんてどうだ?面白そうだろう?
エルフとかそう言うのを犯してやるのも楽しそうだ。
ロベルトの隣でサスペンションもクソもない馬車に揺られて数時間。ケツが痛えんだよ……。もうめんどくせーしジープでも出すかな……。
とか思っていると。
「止まれー!!!」
馬車の前にメスガキが現れた。
ガキだけじゃない、いかにもモンスターですって言わんばかりの、醜い緑の小人もだ。
見るからにゴブリンなんだが……。
「食べ物をよこせー!」
……へえ。
「わ、分かった、手持ちの食料は全部渡す。だから退いてくれ!」
ロベルトが両手を上げてお手上げだと示す。
「そっちの男もだぞ!大人しく私と子分に食べ物をよこすんだ!」
ガキが俺に指を指した。
「……お前、俺から奪うのか?」
「は?」
「奪う奴は、奪われる覚悟があるとみなされる。戦場ってのはそう言うモンだ」
まあ、覚悟なんざなくても、戦場にいるなら、あらゆる無法が合法だ。
「つまり……」
死ね。
コルトガバメントを抜き放ち、ゴブリンどもの頭を撃ち抜く。
『ギヒィ!!』
『アギ!!』
『ゲギャ!!』
リロード、撃ち抜く。
弾倉二つ分撃ち切った時には、メスガキとロベルト以外は倒れ伏していた。
「なに、今の……?雷が、落ちたの……?」
蹲っていたメスガキがよろけつつも立ち上がる。
「子分……?寝てるのか……?なんで倒れてるんだ……?」
倒れたゴブリンを揺するガキ。
「……あぁ!血が、血が!子分死んじゃったよぉ!!酷い、酷いよ……!!」
泣き始めるガキ。
うるせえな、きゃんきゃん喚くな。
腹に蹴り。
「おぐぇ?!!!」
おっとこいつは……、角が生えてんのか。角を引っ張って立たせる。
瞳には怯えの色があった。
「俺から奪おうとしたんだ、テメェの全てが奪われちまってもしょうがねえよなあ!!!」
服を乱暴に剥ぎ取り、そして。
無理矢理、犯してやった。
「に、兄ちゃん、なんてことを……!」
「あぁ?」
「モンスター娘を犯すだなんて!」
「何か悪いのか?この世界に人権だなんだなんてねえだろ、どうせ」
「いいか、分かっていないようだから言っておくぞ。モンスター娘は美しい女の見た目をしているが、一応はモンスターなんだ!本能として、自分より強い者に従い、性的に優位に立ったものを主人とする!つまり兄ちゃんは、その子の主人になったんだよ!」
「はぁ?」
なんだそりゃ。
「つまり、兄ちゃんが死ぬまで、その子に追い回されるんだよ!!」
「……はあ」
んな訳ねーだろ、レイプされりゃ泣きながら帰って、穴から精液を掻き出そうとするモンだろ?
メスガキに目を向ける。
立ち上がった。
へえ、感触は処女だったし、ショックで暫くは放心しているモンだとばっかり……。
「ご主人様ぁ❤︎」
「………………あ"ぁ?」
何だァ、こいつ。
「ご主人様すき、すき❤︎」
「お前、馬鹿か?さっき俺に犯されたばっかりじゃねえか」
「ご主人様、強くて、エッチ気持ちいい❤︎だから、私のご主人様なの❤︎」
「はぁ……?どう言う理屈だそりゃ。大体、テメェの子分を殺されといてそれかよ?」
「子分のことは、とても残念。でも、私が、相手の強さを見誤ったから」
「その子分の仇は俺だろうが」
「うん。でも、私は私より強い人に従う。負けた私はご主人様のものになる」
そりゃそうだ、敗者は全部奪われる。
「つまり、お前は、負けたことと奪われたことに納得して、媚びることを選んだ、と?」
「うん、そう」
成る程な、分かりやすくていい。
「ロベルト、このガキ売り捌いたらいくらくらいになるかな?」
「奴隷か?二束三文にしかならないぞ?と言うより、魔物娘とは言え、自分を慕ってくれている娘を売り捌こうと言う兄ちゃんの正気を疑うんだが……」
そうか……。
じゃあ、兵隊にするか。
確かに、男よりは力が弱いが、女の兵士もいる。
それに、見た目はあれだが、魔物の兵士とはちょっとばかし惹かれるものがあるな。
ふむ、この調子で下僕を増やすのも悪くない。
灰の指先、再結成ってか?クハハ。
ホブゴブリンのリィンと名乗ったメスガキは、整ってるが間の抜けた面構え、ショートカットの緑の髪、側頭部の黒い角二本、少し尖った耳、どこの国でも見たことがないようなおかしな民族衣装、ガキにしては生意気な乳、と言った見た目。
大人の太ももより太いくらいの棍棒を持ち歩いていることから、そこそこの力は期待できるだろう。
下の穴の締まりも良いし、ペットとして飼ってやるのも悪くねえかもな。
主人公はいつも通りの下衆なサイコパスです。
ご了承下さい。