ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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クレープおいしい。


12話 援助

「おじピーっ!もー!バカー!何でいなくなるのー?!」

 

「ごめんね」

 

「何やってたの?!ってか、そのドリル何?!」

 

州臣さんに怒られながら帰還した俺は、ボーリング用の大型ドリルを抱えていた。

 

目的は一つ。

 

そう……。

 

「とりあえず、井戸を掘ろうと思うんだけど、良いかな?」

 

井戸掘りだ。

 

 

 

州臣さんの報告を受けて、総リーダーたる捨矢さんが出てくる。

 

「皆川さん、井戸って……?」

 

俺は、図書館の蔵書である、地盤情報を見せた。

 

「これは……、地盤情報?ふむふむ……、この辺りは昔は井戸が掘れたんですね」

 

「ああ、それと、調達部隊の方に真山の探索をお願いできないか聞いてほしい」

 

「真山ですか?あの辺は獣のモンスターが……。もしかして?」

 

「解体ならできるから、適当に仕留めて持ってくるように」

 

「な、なんで……?」

 

ん?

 

「なんで、そこまでやってくれるんですか?私達、皆川さんに、まだ何にも返せてないのに……」

 

瞳が、揺れる。

 

動揺しているみたいだ。

 

あー……。

 

まあ、少し話しておこうかな。

 

「捨矢さん。俺はね、礼儀がなってない奴が大嫌いなんだ」

 

「え……?」

 

「作法の話じゃなくてね、精神の話だよ。例えば、嫌いな奴だからと言って突っかからないとか、自分が辛いからと言って他人を蔑ろにしない、とかね」

 

「思いやり……、ってことですか?」

 

「少し違う。そこに善意はないんだ。他人を思いやる気持ちを持とう!という善意ではなく、むしろ、他人の足を引っ張らないようにすると言う自制心、プライドだよ」

 

「は、はあ……」

 

「ここに来るまでに、色々な奴に会ったよ。いや、人生を通して、色々な奴と会ってきた……」

 

「………………」

 

「人間を人間たらしめるのは、礼儀だ。礼儀を知らない人間は、獣同然なんだ」

 

「わ、私達は……」

 

「君達は、世界がこうなってから、俺に一番礼儀正しく接してくれた存在だ。自分達が辛い中でも、礼儀を、敬意を、愛情を……、人を人たらしめるものを忘れなかった」

 

「えっと、その、じゃあ……、皆川さんは、私たちのことを気に入ってくださったんですね?」

 

「そうだね。君達になら、協力しても良いと思えたんだ」

 

「それは……、でも……」

 

うーん、分かんないかなあ。

 

「まだ分からないかもしれないけどさ、仕事って結局、人間関係なんだよ。合わない人とは一緒にいたくないけど、合う人とは仕事内容がある程度辛くても楽しくやっていけるものなんだ」

 

「……分かりました!私達はこれから、もっと頑張ります!皆川さんも、言いたいことがあったら何でも言ってくださいね!」

 

「ああ」

 

俺と捨矢さんは、手を握り合った。

 

 

 

まあね、正直な話だよこれは。

 

結局、俺が医者を辞めた理由もそれだし。

 

楽しいとは言えないんだろうが、医者としての仕事そのものは良いものだった。

 

やり甲斐もあるしな。

 

だが問題は、人間だった。

 

クソみたいな上司、無能な同僚、金の話しかしない女共、無礼な患者……。

 

俺が嫌だったのは仕事じゃない、人間関係だ。

 

農家は正直、医者だった頃と比べると、収入なんて半分に満たない。

 

だが、それでも、嫌な人間はいなかったし、快適に働けていた。

 

つまり……、人の敵は病気でも災害でもなく、人なんだってことだ。

 

そんな中で少しでも好感が持てる人々と生活できるなら、そりゃあ便宜なんていくらでも図るだろうよ。

 

第一、俺も大人だからなあ。

 

飢えている少女達の前で美味いものとか食えないわ。

 

しばらくはここで暮らしたいんだが、隣人があまりにも困窮していたら、生活しづらいだろうが。

 

そんな訳で、少しだけテコ入れをさせてもらうことにした。

 

そうして、俺がゴリゴリとドリルを回していると……。

 

「じー……」

 

青いツナギを着た少女が、こちらを凝視していた。

 

焦茶色の髪を雑に短く刈り揃えて、透き通るような空色の瞳をした美人。

 

技術部、ものづくり部のリーダー、伊坂奈凪(いさか ななぎ)さんだ。

 

「どうしたんだい、伊坂さん」

 

「見てる」

 

うん……、いや、そうだね。

 

「何で見てるのかな?」

 

「学ぶ」

 

なるほど。

 

口下手だから分かりづらいが、意図は伝わってきた。

 

学ぶことはいいことだ。

 

解説しながら作業をしよう。

 

「まず、こういうマップがあって〜……、この深度まで掘ると〜……、水の濁りは〜……」

 

「ふむふむ」

 

おお、メモを取れる子か。

 

好感が持てるなあ。

 

そして、作業中にはプライベートな話もする。

 

「皆川さん、車とか好き?」

 

「うーん、若い頃は結構好きだったんだけどね……。農家だと基本軽トラでさ」

 

「おお……、悲しい……」

 

「でも、昔はランクルに乗ってたよ」

 

「おー、ランドクルーザー。トヨタの傑作、4WD」

 

「四駆が好きでさあ、ランクルは〜……」

 

「わかる……」

 

自己開示は大事だよな。

 

いきなり馴れ馴れしくするのもアレだが、いつまで経っても自己開示をしない奴は、それはそれでクソだぞ。

 




ライダーもの書こうと思って仮プロットを引っ張り出したのだが、割と無理難題が書いてあって草。
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