ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

1356 / 1724
マジで労働のせいで書く時間が確保できない……。


25話 殺人

つまり、捨矢さんはこう言ったのだ。

 

俺のことが好きだから、俺の手を汚させるようなことはさせたくない、と。

 

素晴らしいな、感動した。

 

だから、真摯に向き合おう。

 

「まず、そこまで想ってくれたことに対して、礼を言わせて欲しい。ありがとう」

 

と、一つ置いてから。

 

「だが……、その心配は無用だよ」

 

と返してやった。

 

「え……?」

 

「こんな世の中で、手を汚さずに今まで生きてこれたと思うかい?」

 

暗喩だ。

 

俺は既に、何人か殺しているという暗喩。

 

これを正しく理解できない馬鹿は、この場に一人もいなかった。

 

「そ、れは」

 

彼女達は、息を呑む。

 

「聞いてくれるかな。人を殺した時の話を……」

 

俺は、人殺しに特別な感情は抱いていない。

 

医者として、手のひらの上で命を弄んでいたから。

 

例え、「治療の為だ」と言えども、本来死ぬはずだった人間の摂理を曲げて、生き永らえさせたのだから、それは正に罪だった。

 

治しているか、壊しているか?その違いだけで、幾つもの命を「扱って」きた。

 

いつもと違って命を壊しただけ、何も感じる事はない。

 

だが、それを直截に言っても、理解されないだろう。

 

これは俺特有の感覚だからな。

 

なので、理解してもらえるように、具体的なエピソードを提示しようか。

 

「……村にいた頃の話だ」

 

重苦しさを演出しながら、口火を切る。

 

「村に、強盗が来たんだよ。若い男女が四人だった」

 

ああ、そうだ。

 

今思い出してもイラつくな。

 

俺の日常を壊しやがったカス共が。

 

「村人は俺以外皆殺しだよ。皆、年寄りばかりなのに……、酷い殺し方をされていた」

 

「あっ……」

 

待場さんが吐息を漏らす。

 

ああ、察したんだな。

 

「待場さんのおじいさんがいたんだ。厳しいけど、良い人だったなあ……」

 

「おじいちゃん……」

 

待場さんがそう呟いた。

 

思い出して、少し涙ぐんでいる。

 

かわいそうにな……。

 

「待場の爺さんは、弓で射掛けられていた。傷口は殆ど背中にあった。射角からして、必死に逃げている爺さんを追いかけ回して、後ろから射ったんだろう」

 

「……ッ!」

 

「矢傷はどれも、わざと致命傷を外して射られていた。遊んでいたんだよ、奴らは。何の罪もない老人を射掛けて遊んでいたんだ」

 

「そんなっ……!」

 

「酷い……!」

 

「そして、致命傷の傷は、腹部の切創……。逃げられなくなった爺さんを捕まえて、刃物で切りつけたんだ」

 

「うっ、うううっ……!」

 

あ、待場さんが本気で泣き始めた。

 

「他の老人達も同じように殺されていたよ。小腸を引き摺り出され、それで首を絞められていた猟奇的な死体もあった……」

 

「何でそんな……!」

 

「人間のやることですかっ……!」

 

まあ、そうだな。

 

「だから、殺した。俺の周りの人達を殺して、村で略奪をするような奴らが生きているなんて、耐えられないからな」

 

だが、殺したことに理由なんてない。

 

ただ、殺した。

 

俺はあの時、「許せない!」などという義憤も、それどころか悲しみもなかった。

 

本当に、シンプルに、害虫にそうするかのように「駆除」した感覚だ。

 

医者だった頃の癖だろうな。

 

命を扱う時など、集中する時は「スイッチ」が切り替わるのだ。

 

普段は俺もしっかりと心がある。怒ったり悲しんだりするさ。

 

だが、ある一定以上の負荷がかかると、何も感じなくなるんだよ。

 

感覚が切り替わるんだ。日常と仕事とでな。

 

まあ……、大した話ではないのだが……。

 

「皆川さんっ!」

 

おっと、待場さんが抱きついてきた。

 

「ありがとう……、ありがとうございました!おじいちゃんの仇をとってくれて!」

 

へえ、そう返す?

 

最悪、人殺しだと罵られても仕方がないと覚悟はしていたんだがな。

 

「私は……、人を殺す事は良くないと思う。けど……、生かしていちゃいけない人もいるって事は、知らなかったです……」

 

捨矢さんはそんなことを呟いた。

 

周りの皆も頷く。

 

まあ、そんな訳で……。

 

「俺は既に人殺しだ。今更、何人か追加で殺したところで、何も感じないよ」

 

と宣言させてもらう。

 

「で、でも、あの人達はまだ何も……」

 

誰かがそう言った、次の瞬間!

 

『会長!大変です!工業高校の奴ら、三十人くらいで攻めてきました!』

 

と、遠話チャンネルに声が響いた……。

 




小説家になりたいとは思うが、自作に責任を持てないので……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。