ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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股間にできた汗疹が痒くて痛い。


39話 砂鷹

「環介さーん!」

 

輝く笑顔、迸る若さ。

 

薄らと青みがかかった美しい黒髪をナチュラルに長く伸ばし、ピシッと背筋を伸ばしたスポーティーな女の子。

 

くっきりとした目鼻立ちとくりくりとした大きな二重まぶたは、意志の強さと明朗さを如実に表している。

 

実務面での統率者が捨矢理絵だとするならば、先頭を走る引率者は彼女……、砂鷹光だろう。

 

光は、手を大きくぶんぶんと振りながら、農作業中の俺に駆け寄ってきた。

 

「どうしたんだ、光?」

 

「はい、お茶!」

 

手渡されたのは温かいお茶だ。保温の水筒に入っている。

 

まだ新年が明けたとはいえ、肌寒い冬。

 

関東であるが故に雪までは降らないが、温度計を見ると一桁の気温だ。

 

「って、ビニールハウスの中は冬でも結構暑いんですねえ。あったかいお茶、失敗だったかも……」

 

「いや、嬉しいよ。それに、どちらかといえば温かいお茶の方が好きだしね」

 

「そ、そうですか?」

 

俺はそう言ってお茶を一口啜り、一息ついた。

 

そんな俺の顔をじっと見る光……。

 

こりゃ多分、茶の感想を言えって事だな。

 

「美味しいお茶だな、光が淹れてくれたのか?」

 

「はいっ!ありがとうございますっ!」

 

パッと明るくなる顔色。

 

そういう、恋する乙女ムーブメントされても、その、なんだ、困る……。

 

見た目こそ若返って二十代くらいになったけれど、俺は三十半ばのおっさんだぞ……。

 

嗣葉とかサリアならまあ、大人っぽいから抱けんでもないが、光はちょいきつい。

 

俺はセクシーで健康的な大人の女が好きだからなあ。

 

まあ、脱いで貰えばどうにかならないこともないくらいか?

 

因みに嫌いなタイプの女は港区キラキラ女子みたいな連中。医者時代、クソみたいな先輩職員に、見た目だけ整えた中身のない連中と腐るほど合コンをセッティングされ、俺はトラウマになっている。

 

で……。

 

「何か用でもあるのか?」

 

「いえ、その……、会いたくなったので♡」

 

あらかわいい。

 

だが、重ねて言うがそういう青春のノリにはおじさんもうついていけないんだ。

 

「そうか、何かあったのかと思った」

 

「理由がないと、会いに来ちゃダメ、ですか?」

 

「別にそんなことはないが……。他の子は色々と提案をしてきたからなあ」

 

「提案?」

 

「嗣葉は市民体育館から有名なスポーツインストラクターをスカウトしてきてほしいと言っていて、サリアは人集めを、摩子は母親探しに自衛隊駐屯地へ行けと依頼してきたな。あと翠はゲーム集めをしろと」

 

「ええっ!だ、駄目ですよ!」

 

俺の袖を引っ張る光。

 

「環介さんはここの要なんですから、出歩かれると困ります!」

 

「いや、ある程度は出歩いているんだが」

 

「もちろん、レベル上げ程度は全然大丈夫ですけれど、遠出は流石に……」

 

まあ、それはそうだろうが。

 

護衛担当として、リスクの高い提案は飲めない、と。

 

当然だろう。

 

「だが、対外交渉の際に君達では話にならないんだよ。女子高生だけのグループに、対等に接してくれる大人なんて普通はいないぞ」

 

だから、俺が対外交渉役として外出しなければならないんですね。

 

「う、うーん……。確かにそれはそうだけど……」

 

流石、物分かりがいい。

 

勉強もまあ普通にできるらしいが、それ以上に地頭がいいな。

 

言われて分かる、説得されて素直に聞くのはある種才能だよ。社会人でもこれができない奴は多い。

 

説得ができるなら、交渉ができるな。

 

文明人って素晴らしい。

 

「じゃあ、護衛の方針について決めてくれるかな。っと、とりあえず、会議室で」

 

「うん、分かった」

 

 

 

会議室に来た。

 

翠と、他数人の護衛部の女の子達が顔を出す。

 

誰かが気を利かせて人数分の茶と菓子を持ってきてくれた。

 

本当に良い子達だな。

 

客に茶を出せとか大声で言う嫌なおっさんになりたくはないが、高校生ほどの若い子が、自発的にこう言うことがサラッとできてしまうのは本当に偉い。

 

社会に出てから重宝されるのは、学歴以上にこう言う人としてのあれこれだからなあ……。

 

一定の学歴とかそういうのはあくまでも前提条件で、その上で社会から求められるのが、人当たりの良さに気配り、マネジメント能力とかだから……。

 

仕事ができるのは当たり前で、その上で何ができるか?だな。

 

因みに、お茶請けのお菓子はバタークッキーだった。この中の誰かの手作りだろう、優しい味がする。

 

来年からは開き直って『変換』をフルで使い、強制的に開墾した土地に麦を植えるから、小麦粉を使ったお菓子はコストパフォーマンスが良いんじゃないかな。

 

さて、会議だな。

 

「まず、前提条件として、護衛を連れて行くのは決まっている。そして、一度で目的箇所を回るのは無理だから、三回に分けて遠征するつもりだ」

 

「行き先はどこですか?」

 

誰かが聞いてきた。

 

「自衛隊駐屯地、市民体育館、それとゲームショップだな」

 

「ゲームショップなら、私達が行ってきます。特別、環介さんが出向く意味はないんですよね?」

 

「まあ、そうなるな」

 

「では、自衛隊駐屯地と市民体育館ということで」

 

「市民体育館の方は急ぎではないが、自衛隊駐屯地には可能な限り早く行きたい」

 

「なるほど、分かりました。翠、シフト調整ってどうなってた?」

 

「え、えっとね、14日から21日までの日勤がA班、夜勤がB班とC班だね。D班とE班は休暇」

 

「じゃあ、ABC連れて明日から移動しようか。業務連絡は私が今回すね」

 

うーん……。

 

光も翠も、生半可な社会人より仕事ができるぞこれは……。

 

会議もまともにできないバブル期老害共と比べると、なんとまあキビキビ動くことやら。

 

特に、報連相が徹底されているあたり、本当に好感が持てる。

 

俺がいた大病院は、ドタキャンやらミス隠しやら、やりたい放題だったからなあ……。

 

特にあの、コネで入ってきた院長の息子とか、ドン引きするほど使えなくて泣いちゃいそうになったもん。俺が。

 

皆川さんに報告すると怒られるんで黙ってました〜ごめんなしゃ〜い!て……。医療現場でのミス隠しは人命損失に関わるからやめてくれとあれほど……。

 

まあ良いやあんなカス。

 

どうせもう死んでるだろ。

 

「環介さん、ではこういうのはどうですか?シフトの調整では〜……、期間がこれくらいになるので〜……」

 

いやあ素晴らしい……。

 

円滑な仕事と円滑な人間関係、あまりにも最高過ぎるだろ……。

 




書き溜め……なくなっちゃった!

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