人生のイベントが無さ過ぎる!
週に一回、理絵を始めとするリーダー陣は、生徒会室に集まって会議をする。
その会議というのが、この国の今後を決めるための、所謂「国会」だ。
……いや、国会はアレは、既に決まったことを答弁書読んで喋っているだけだからな。それが悪い訳じゃないが、今この国には相応しくない。
一億二千万の人民を抱える大国ではなく、八百人のデカい村でしかないここでは、学校運営の拡張版のようなやり方が良いだろう。
しかし、顔ぶれは変わっている。追加されたというべきか。
いつもの八人の班長と、総リーダーの理絵に加えて、オカマの祥子ママと、自衛官の……確か割酒だったか?その二人が追加されていた。
俺はオブザーバー参加だ。あんまり、直接的な運営に口出しをするつもりはない。
それに、奇数の方が決議が取りやすいからな。
「では、時間になりましたので、定例会議の方を始めさせていただきます。まずは定例報告から」
「雑用班でーす。資材管理についてなんだけど、やっぱりまだ新人さんが分かってないところが多いなーって。子供とかが倉庫に入り込んだら危ないから、倉庫の管理とか見張りにもうちょい人回してー!」
「警備部だ。現在、割酒さん達自衛隊員の皆さんに、軍隊用の格闘技や用兵についてを教わっている。まだまだ慣れない為、成果が出るのは遠い先になるだろう。負担をかけてしまい申し訳ない」
「狩猟部よ。馬車のお陰で、成果の持ち運びが楽になったから、今後は資源獣の湧きにもよるけど週一で牙猪も狩れそう。でも黄金持ちのレア種はなかなか見つからないから、収入が安定しないの。もしかしたら、レア種の湧きを感知できるスキル持ちとかいるかもしれないから、捜索して欲しいわ」
そんな感じで会議が進み……。
「では、これから議題を提示していただきます」
「わたくしからは、嗜好品の増産を提案したいですわ!何故かと言いますと、ストレス低減の為ですの!わたくし達や子供は、漫画やお菓子で充分ですけれど、大人の皆さんはお酒やタバコなどを必要としておりますわ!それと、殿方は性欲の問題もありますし……、何かお願いしたいですの!」
「はい、さりりん、ありがとう。では、『嗜好品の更なる充実』っと……」
理絵がそう言って、ホワイトボードに文字を書き入れる。
字は、年頃の女の子とは思えないような綺麗な文字だ。これはアレだな、ペン習字とかやってるんだろうな。
「皆さんはどう思いますか?」
「アタシはとっても賛成よん♡大人になってくると、酒だのタバコだのじゃないと落とせない心の疲れってのがあるのよ。酒類とかは、自家製で濁酒を作るとかできそうじゃない?」
祥子ママがそう言った。
確かにそうだな、酒やタバコが齎す心の安定は大きいだろう。
「俺からも賛成させてもらうぜっ!うちの駐屯地には、内部に隊員クラブがあって飲酒ができたんだっ!自衛隊は体育会系だからなっ、飲み会は多かったんだぜっ!」
割酒……、だったか?
確かこの人は、翠の叔父らしいな。
熱いハートを持ったオタク自衛官らしく、翠にオタク趣味を教え込んだのもこの人なんだとか……。
「ん。病気とか、大丈夫?」
技術部の奈凪が、首を傾げてそう言った。いつものような無表情で。
端的過ぎていまいち伝わってこないが……、言葉の意味を汲み取るとこうだろう。
「つまり奈凪は、飲酒やタバコの吸い過ぎで身体を壊したらどうするんだ?と言ってるんだな?」
俺はそう言って、奈凪の方を見た。
……頷いている。
正解だったようだ。
「環介さん、元お医者さんとして何かあります?」
理絵がそう言う。
まあ、それは……。
「医者として、ならば、飲酒も喫煙も控えてほしいんだが……、まあそれは良いとして。飲酒ならば量は少なめで休肝日は必ず作るように。喫煙は喫煙所のみで、本数は少なめで」
と、言いたいところだが……。
「もう半年間、皆吸ってないだろうし、タバコは禁止で良いんじゃないのか?アレは本当に、百害あって一利なしだぞ」
「んんん……、まあ、そうなんだけどねえ……」
祥子ママが微妙な顔をする。
恐らくは喫煙者なのだろう。
「言っておくが、俺は毎日かなり忙しい。この八百人の中で医者は俺だけだから、オペも何も一人でやっているんだ。手が足りん今、病気の原因を増やしたいとは思わん」
だが、俺もこれは譲れない。
今、医者は俺一人しかいないので、大きな怪我をされると手の打ちようがないのだ。
難しい手術ともなると、助手やナースは絶対に欲しいし、俺自身の能力アップも必要だろう。
現状では『修復』のスキルを持つ雪姫にフル稼働してもらっている有様だ。
本気で医者が足りん、助けてくれ。
「そう言われるとこちらの負けねん……」
「確かに、医師は欲しいですよ」
「でも、いきなりは無理だよ……」
そうして、議論の末。
「では、酒造の開始と、酒類の少数配布。タバコは基本禁止。医師のスカウトで。これで会議を終わります、ありがとうございました」
……このように、話し合いをして採決し、法案を決めていく。
今のところはこれでいいのだろうが……、いつかは変えていかなきゃならないだろうな。
会議の後、俺は理絵と共に理事長室へ行く。
ここは今、理絵の執務室になっている。
「……環介さん?私、ちゃんとできてました?」
理絵は、来客用のふかふかな革張りソファに腰掛けた俺の隣に座り、体重を預けてきた。
この子のメンタルケアの為に、俺はカウンセリングの真似事をしているのだ。
心療内科は専門外だが、この状況はまともじゃない。
いつ、誰のメンタルが崩壊してもおかしくはないんだ。
特に、子供の身で重荷を背負う女子高生達には気を遣う必要があるだろう。
「よくできていたぞ、立派だった」
だから、嘘でも褒める。
まあ、嘘ではないからこちらの気も楽だ。
「ふふ、ありがとうございます、環介さん」
そう言って、俺の隣でしばらく昼寝をする理絵。
この子は有能だ、いずれはとんでもないカリスマを持つ指導者として大成するだろう。
だから、その時まで支えてやろうじゃあないか。
折角、俺の代わりに資源獣を倒して金を集め、俺の代わりに田畑を耕し、俺の代わりに飯炊きをして、俺の代わりに全体指揮を執ってくれているのだ。
大切にしてやらなくちゃな。
書けねー……。
田舎剣士の続きを書きたいところなんですが、書けてない。