ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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俺強えものです。


3話 能力の悪用

「へえ、するってえと、兄ちゃんはこの世界の人間じゃねえのか?」

 

「そうだなぁ、そうなる、よなぁ」

 

馬鹿正直に異世界から来ましたと言ってみたら、あら意外。

 

この世界では異世界の存在が割と認知されているみたいだ。

 

気狂い判定されるかと思ってた。

 

「でも伝説では、異世界から勇者様が召喚された、とか聞いたこともあるし、案外兄ちゃんも勇者だったりしてな!」

 

「柄じゃねーよ」

 

鼻で笑う。

 

どうせなら女騎士や姫騎士をあの手この手で堕とす悪徳魔導師になりたい。

 

「まあ、何にせよ、これからどうすんだ、兄ちゃん」

 

「どうもこうも……、働く、んじゃねえんすかね」

 

「学者さんなんだろ?確か王都に学院があったはずだぜ?」

 

「あー、多分、俺の研究内容はこの世界においてはあんま使えないと言うか、未発達と言うか」

 

生命工学とか、ファンタジー世界で役に立たねえよな。

 

生物学も分かるから一応は役立つか?いや、先進的過ぎてついて来てもらえないのがオチだな。

 

大体、この世界の生物に生物学とかあんま意味なさそうだし。

 

「そうか?うーん、うちで俺と木こりでもやるか?背も高いし、鍛えりゃ良い木こりになりそうだ!」

 

「はは、考えときますよ」

 

「それ以外なら冒険者になるって手もあるが……、ま、あんまオススメはしねえよ。伝説の勇者様みてえに強力なスキルでもあれば話は別だが」

 

スキル?

 

「スキルってのは何です?」

 

「うん?スキルはスキルだろ?」

 

いやそんなこと言われましても。

 

「頭の中に思い浮かばねえか?俺だったら伐採、って出てくるんだけどよ」

 

あ、あー?

 

「……海神の蠕動ってスキル、聞いたことあります?」

 

「いや、知らねえなあ。レアスキルか?」

 

レアスキル……、また分からん単語が出てきたぞ。

 

まあだが、語感からそのまんまの意味だろう。

 

「まあ、兎に角、俺はその、レアスキルを持ってるんだ」

 

「……そうか。だが、あまり言いふらすなよ?悪人に利用されたりするかもしれんからな」

 

ああ、そうなの。

 

「おっと、ここが俺の家だ。俺はこれから薪を割ってくるから、好きに過ごしていてくれ」

 

「あー、いや、一晩泊めてもらう訳だし、ちょっとは働かせて貰いますわ」

 

「そうか?薪割りを手伝ってくれるか?」

 

「ああいや、その、俺のレアスキル?ってやつで、魚採ってきます。この籠借りて良いすか?」

 

良くは分からんが、この俺の『海神の蠕動』、人に話すべきじゃないな。

 

「おう、好きにしろ」

 

 

 

さて、適当に、人に見えないくらい村から離れて、と。

 

「海神の蠕動」

 

脳内に様々な水棲生物の図、生態、名前や特性などが思い浮かぶ。

 

そしてそれを召喚、従属するか肉体に再現するかの選択肢もだ。

 

……因みに、俺の肉体についてチェックすると、自動的に臓器や体表、脳、筋肉が水棲のモンスターのものになっているらしい。

 

ランクEXクラスの海獣のパーツをいいとこ取りしてる、っぽい。

 

いや、ランクEXってなんだよ。

 

まあいいや、詳しくは木こりのおっさん……、トムソンさんに聞くか。

 

つーか良くもまあ勝手に改造人間にしてくれたな。

 

さて、魚か……。

 

『リバートラウト』……。川魚、ミドガルズ全域に生息。主に食用として利用される。

 

これだ。

 

「えっと、どうすんだこれ、念じればいいのか?うおお?!」

 

手のひらからぬるっと魚が?!

 

おおう、ピチピチ跳ねてる……。

 

なんつーかこれ……、まるっきりニジマスだな。丸々太って美味そうだ。

 

この調子でぬるっと魚を出して……、籠をいっぱいにした。

 

そして。

 

「ただいまっす」

 

「おお、帰ったかってうおお?!なんだそりゃ?!」

 

「えーと、リバートラウトとかって魚です」

 

「出かけてから一時間も経ってねえぞ?!どうやって……、って、レアスキルがあったんだよな。いや、魚がそんなに採れるなんて面白えレアスキルだな!!」

 

「そうっすねー」

 

「しかし、これだけの量は腐らせちまうな。良し、干し魚にするか!」

 

「あ、手伝いますよ」

 

「いい、いい、座ってろ!こんだけ採って来てくれただけで十分だ!」

 

このおっさん優しいなー、女の子なら惚れてたかもしれん。

 

しかし残念、ヒゲ面のおっさんである。

 

 

 

さて、その夜。

 

おっさんに話を聞く。

 

「その魔物のランクってのは?」

 

「うん?EからSまであって、魔物の強さを表すんだよ。詳しくはないが、確か近くの森にDランクのゴブリンが出たな」

 

「EXは?」

 

「なんじゃそりゃ」

 

知らんのかい。

 

じゃあ俺の身体を構成するEXクラスの海獣って何なんだ。

 

「じゃあそうだな、魔法は?」

 

「魔法使い?そんなものおとぎ話でしか見たことがない。魔術師なら、それぞれの属性魔術スキルを持っていれば魔術が使えるらしいぞ」

 

んー?

 

「魔術と魔法って何が違うんすか?」

 

「魔法は、魔力をそのまま炎や水に変えることだと聞くが……、良く分からん。兎に角魔法は凄いんだとよ」

 

「貨幣価値は?」

 

「んー、まずこいつ……、鉄貨一枚が1ゼニーとして、鉄貨10枚で銅貨、銅貨10枚で銀貨、銀貨10枚で金貨……、その上に白金貨、ミスリル貨、アダマンタイト貨とかあるらしいが、庶民にゃ関係のない話さ」

 

「はあ。えーと、昼採ってきた魚、あれ、一匹幾らくらいですか?」

 

「ありゃあデカくて脂も乗ってるからな、50、いや、70ゼニーはするぜ」

 

うーん、1ゼニー10円くらい?

 

「俺はまあ、月に一万五千ゼニーは稼ぐんだが……、分かるか?」

 

「あー、まあ、大体貨幣価値は分かったっす」

 

「歴史とかは聞くなよ、俺はただの木こりだからな」

 

そう、だな。おっさん、ただの木こりだしな。

 

「詳しく知りたけりゃ、王都の大図書館にでも行くと良いぜ」

 

「おう、考えとく」

 

そう、だな。

 

図書館、とやらに行ってみるとして、路銀が足りない。図書館も多分利用料とか取られるんだろ?

 

取り敢えずは、路銀を稼ごう。

 




魚より肉の方が好き。

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