ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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この小説はパトス百パーセントのウケ狙わずなので、あんまり人気なさそう。でも書く。


12話 問題を解決する手っ取り早い方法

100階層到着。

 

90階層は魔界のような瘴気に溢れていたが、ガスマスクをつけると割とどうにでもなった。

 

瘴気ってのはガスだったのか。

 

さて、100階層のボスはドラゴンで、生物にしては異常な強さだった。

 

ドラゴンブレスを受けたが、盾代わりに眼前に出した戦艦の装甲板が赤熱し、溶けていた。

 

最終的に、トマホーク、ああ、もちろんミサイルの方な……、トマホークを数発撃ち込んだら沈黙したが、それでも、生物とは思えない強さだった。

 

前の世界で例えるならば、空飛ぶ戦艦、ってところか。

 

ああ、それと、100階層攻略を冒険者ギルドに伝えたところ、パーティメンバー全員をSランクに昇格させるとのこと。

 

なんでも、世界記録らしい。

 

最初は疑われたが、100階層で拾った国宝級のアイテムと、ドラゴンの死体を提出したところ、馬鹿みたいな額の金……、ドルにして千万ドルくらいはもらったな。

 

あー、それと、俺がダンジョンに潜っている間、店を任せていた馬鹿共が商人や貴族と揉めたとか。

 

そっちを収めねえとな、めんどくせえ。

 

 

 

さて、そろそろ本格的に兵隊が欲しいところ。

 

数人単位ではなく、数千数万人単位で。

 

チェスでも将棋でも、兵隊がいないとゲームが成り立たないだろ?

 

そんなことを呟いたところ、可愛い下僕共が、自分の国や部族の人間を差し出すと言った。

 

渡りに船だ。

 

デカイことをやるにはまず人員が必要なんだよ。

 

俺一人が暴れたところでテロリストが関の山だからな。

 

できるのは精々、各国の首都に核弾頭ぶち込んで無政府状態の大混乱に陥れることくらいか。

 

この世界の人口は、かなり多く見積もったところ二十億いかないくらいってところか。

 

ウーノの母国で、人口は一億ほど、この世界最大の人口がある国、麗国で四億以下ってくらいらしい。

 

ふむ、工業が発展していない割に人口が多いな。

 

……と、言うのも、身体が丈夫なモンスター娘や魔人(モンスター娘の男版)、亜人(エルフやドワーフなど。獣人も入ったりする)が人口の四、五割を占めるからだ。

 

つまり、実質、人間は約十億人。

 

妥当、か?

 

さて、人員だが、この辺り……、大体ヨーロッパと思われる地方はモンスター娘許容派と排他派が入り乱れ、年中戦争だなんだと大忙しなんだとか。

 

アメリカの方はほぼ完全に排他派、逆にアジア周辺は許容派が多い、と。

 

ふむ、これも一種のファシズムや、人種差別か。

 

ユダヤ人を迫害したナチスのように、自分より優れたモンスター娘という存在を疎む者は多い、と。

 

肌の色が違うくらいで馬鹿騒ぎするのが人間だ、身体の形が違うモンスター娘は、差別の対象、か。

 

俺も日本人とユダヤ人のハーフで、大層差別されてきたが……。

 

差別や貧困ってのは戦争の火種になるからな、奨励していきたいもんだなァ?

 

憎しみ合い、いがみ合い、殺し合う人間ってのは良いよなァ!

 

 

 

さあて、うちの店の問題をささっと解決した後は、世界征服、ってやつをやってやろうじゃねえか。

 

まず、各国に移動し、人工衛星の打ち上げ。

 

そして、主要国家の首脳部を掌握、戦力を集める。

 

大規模な訓練。

 

そして、世界規模の動乱……!!

 

いやいや、リッチのマリーの話によると、人から魔人に転生し、無限の時を生きることも可能だと聞く。

 

ならば、長い目で見て、各国の技術レベルを成長させ、より人口を増やし、より大規模な戦争も可能か。

 

素晴らしい……、少し考えただけでも、夢が広がるじゃねえか。

 

ああ、そうだ、どうせなら、現状の人間対モンスター娘の対立をより深め、泥沼の戦乱に持ち込んでやろう。

 

なら、俺が狙うべきは、モンスター娘や魔人の国家。

 

さあ、最高の破壊の為、支配と創造を始めよう!

 

 

 

「……で?何したって?」

 

「貴族にまかないのカレーを食べられました」

 

「商人に商品の文句をつけられました」

 

ふむ。

 

「で?」

 

「自分の家の料理人にするって……」

 

「商品を沢山、格安で譲れとか、ルートをよこせって……」

 

ふむ。

 

「それで、リィンとエーバーはどう対応した?」

 

「断ったよ。けど、そしたら、貴族に逆らうなって脅されて……」

 

「こっちも断りました。けど、そしたら、うちの商品の悪評を流すって……」

 

「成る程な。よし、お前らに一つ教えてやろう。こういう場合どうするかを」

 

「「ど、どうするんですか?!」」

 

「殺す」

 

「「「「ええー?!!」」」」

 

殺すだろそりゃ。

 

「ひ、酷いよ!」

 

「何がだ?」

 

「な、何も殺すことはないんじゃないかな、って」

 

「リィン、やはりお前は馬鹿だ」

 

「ええ?まあ、うん、それは認めるけど」

 

「いいか?お前は今、今まで築き上げてきたものを奪われようとしている。それは分かるな?」

 

「う、うん」

 

「なら、それに抵抗することの何が悪い?お前は自分の大切なものを守るだけだ。違うか?」

 

「そう、なのかな?」

 

そうだろう、普通に。

 

「安心しろ、この世界では科学捜査なんてありゃしない、証拠を残さなけりゃ何をやったって良いんだ」

 

「ええー……」

 

「第一、しがないハーブ売りとしがない料理屋が、暗殺なんてできると誰が思う?まず疑われないだろう。相手は貴族と商人だ、恨みを買ってもおかしくない、つまり、殺されても不自然じゃない」

 

「い、いや、そういう問題じゃ」

 

「じゃあ、お前は貴族の小間使いになりたいのか?」

 

「嫌だけど……」

 

「なら殺すしかないだろう」

 

「そ、そうなのかな……、話し合いとかは?」

 

「お前は話し合いをしただろう?相手の理不尽な欲求に対し、毅然とした態度で拒絶をした。そうしたら、武力をちらつかせてきた。なら、こちらも武力で対応して良いということだ」

 

「う、うーん、そうなのかな……」

 

 

 

早速殺そう。

 

まずはボーモン男爵。

 

まあ、貴族らしく、方々で恨みを買っているそうだ。

 

ならば、ストーリーはこう。

 

美食家で、食べ歩きが趣味のボーモン男爵は、その最中に現れた顔を隠した暴漢にナイフで一突き。哀れ、あの世行き、と。

 

バラクラバ、ではかえってバレるな、黒い粗末な布を顔に巻こう。

 

「ふん、この辺りではこの程度か。やはりビストロ・グリースが……、む、な、何者だ?」

 

「………………」

 

「え、ええい、怪しい奴め!」

 

男爵が吠える。

 

「お退がりください男爵!っあが?!」

 

「き、貴様、何者、げあっ?!!」

 

護衛二人、首筋をこの世界で買ったそれなりのナイフで切り裂く。

 

「ひ、ひいっ?!や、やめてくれ!か、金ならやる!見逃して、が、かかっ、げはっ」

 

護衛を一瞬で始末され怯える男爵の、動脈と喉を同時に切り裂く。

 

そして逃走。

 

ああ、それと因みに、マリーは上級魔法レベルの幻覚魔法で俺の幻影を作り出し、一緒に街を歩かせている。

 

アリバイ作りってことだ。

 

俺自身も幻覚魔法を使って、背格好を誤魔化している。

 

そして、物陰に隠れ、変装を解き、マリーの作り出した幻影と入れ替わる形で交代。

 

この世界においては完全犯罪だ。

 

 

 

続いて、商人のジョセ。

 

ストーリーはこうだ。

 

商人のジョセは、今日も元気に仕事をしていました。その時、首筋に針が刺さります。その針にはヤドクガエルの毒が塗ってあったのです。哀れな商人は全身の神経が萎縮して死んでしまいましたとさ。

 

これで行こう。

 

いる場所が分かっているなら暗殺は容易だな。

 

さあ、ジョセの商会へ、と。

 

見つけるのは簡単だ、金を持っているやつほど派手な格好をするのがこの世界のお決まりみたいなもんだからな。

 

毒はヤドクガエルの神経毒、吹き矢で。

 

商会の建物の中、客に紛れ、吹き矢を放つ。

 

「んぐっ?!な、なんだこれは?針?誰かのいたずらだな」

 

と、首に刺さった小さな針を投げ捨てると、数歩歩いて。

 

「ぐっ、かかぁ、あああ?うあ、うああああ?!」

 

倒れ伏したのを確認すると、俺はその場を後にした。

 

 

 

これで問題解決だな。

 

数日過ぎたが、街で暗殺があったという噂が流れるだけで、誰一人として核心を突くことはなかった。

 

迷宮入りだ。

 

兵隊に話を聞かれたが、

 

「はあ、三日前ですか?その日は妻の一人とデートしていましたよ」

 

と笑顔で答えてやった。

 

「兵隊さん、その人の言うことは本当だぜ、俺は三日前の昼、その人が嫁さんと街を歩いてんのを見かけたよ」

 

「私も見たわ!」

 

「そもそも、Sランク冒険者で、この街で一番美味い飯屋の店主をやってるジンさんがそんなことする訳ねえじゃねえか!」

 

社会的信用と民衆の証言のダブルパンチで、兵隊は簡単に引き退った。

 

「うーむ、やはりマルティン男爵の仕業という線が濃厚か」

 

「この辺に犯人がいる訳ないでしょ、隊長……。さ、帰りますよ。犯人は逃亡、指示したものは恐らく、マルティン男爵と思われる、と」

 

「か、帰るのか?いや待て、それに、ほら、その次の日に商人が死んだとか!」

 

「は?ああ、あれは急な発作を起こして死んだんですよ。商人もおっさんだった訳ですしね、歳をとるとそういうこともあるらしいですよ。隊長も気をつけてくださいね」

 

「ほ、ほら、あの、この、二つの事件に実は関連性があるのだ!とか……」

 

「はぁ、何言ってんすか隊長。確かに、この街は平和で事件なんて滅多にありませんけど、いざ事件が起きれば面白おかしく脚色するってのは良くないことっすよ」

 

「だ、だよな、すまん」

 

「まあ、あれですよね、言ってしまえば、貴族の暗殺なんて割とよくあることで、商人が死んだのは急病。自分達が守るべき市民には何もなし。ならそれでいいじゃないっすか」

 

「確かに、な。で、でもあれだろ?どうせ兵士になったからには大捕物とか、悪の犯罪者をやっつけるとかしてみたいだろ?な?」

 

「自分はゴメンっすよ、そんなの。このまま退職まで、街の警邏をして何事もなく過ごすんすから。万引き犯以上の悪党の相手は嫌っすよ」

 

「ち、近頃の若者は夢がないな……」

 

兵士達は去っていった。

 

ふむ、真実にたどり着くものは誰もいない、か。

 




これに感想くれる人には割とマジで感謝します。

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