日本の神とかは祟られるって言うのに。
アタシは、ハイオークのエーバー。
今はグリーズ商店のオーナーだ。
昔は、盗賊だったが、今は真っ当な仕事をしている。
人から奪う生活も悪くはなかったが、強いご主人様と美味い飯が食える今の方が、昔よりよっぽど良い。
ああ、ご主人様。
アタシの旦那様。
強く賢い男。
残虐で、非道で、アタシ好みのいい男。
並の男よりデカい私よりもっとデカくて、ナニのサイズもデカい。
あのデカいのを突っ込んでもらいながら、首を絞めてもらうと、小便を漏らしちまうほど気持ちが良い。
雌豚と罵ってもらうと、身体が熱くなる。
アタシのご主人様は、最高だ。
今の仕事、グリーズ商店のオーナー。
儲けは全部ご主人様に渡す。
ご主人様の『武器庫』のお陰で、食い物も酒も好きなだけ手に入るんだ。
自分の分の金はいらないと言ってある。
実際、金なんてあっても、使い道はねえしな。
それでもまあ、お優しいご主人様は金をくれる。
だから最近は、その金で演劇を観たり、賭け事をしたりに使っている。
結構楽しい。
他に娯楽といえば、ご主人様の『武器庫』から出せるタバコや大麻?かな。
ありゃあ良い、吸ってると良い気分になる。
吸い過ぎると身体に悪いと言われたんで、一日十本くらいにしておく。
ご主人様は匂いに慣れてるし、ご主人様も沢山吸うから、タバコは吸ってても文句は言われないが、他の女共からは不評だ。
リィンとカーネ、グラースは、臭い臭いと文句を言う。
ピトーネとマリーは平気なようで、ピトーネはキセルを、マリーは水タバコを吸うようだ。
アタシは普通のタバコと大麻かな。
銘柄は……、セブンスターが良いな。
因みに、ご主人様は葉巻派。キューバ?のやつが美味いんだと。
あとはコーヒーかな。
店のやってない日……、週に二日は休むんだけど、その日はよく、マリーにコーヒーを淹れてもらう。それと、仕事が終わったあとにもだ。
コーヒー淹れるのはご主人様の方が上手いんだけど、マリーもそこそこ上手い。
コーヒーってのは、独特の苦さがあるんだけど、香ばしい香りがして美味いんだ。
飲むと目が醒めるから、朝とか、仕事の合間とかによく飲む。
缶コーヒーって言う、鉄の筒に入ったコーヒーもこれまた美味いんだよな。
まー、みんなは苦いってんで、砂糖とミルクをたっぷり入れて飲みやがるが……、アタシとしては、そのまんま、ブラックで飲むからこそ美味いんじゃねえか!と思う。
マリーもピトーネもそう言っている。ご主人様も。
それと、酒だ。
『武器庫』の酒は上等なもんを出せる。
こっちの、チャチなエールや蜂蜜酒なんて目じゃねえほどに美味い酒がいくらでも飲めるんだ。
特に、ドワーフの火酒みてえに強い、ウォッカって酒が最高だ。
必死になって覚えた氷の魔法で、キンキンに冷やして飲むのに最近ハマっている。
氷みてえに冷やしたウォッカは、とろりとしていて、一気に飲むと喉の奥がカッと熱くなりやがる。
ええっと、なんつったっけ、そう、アルコールだ。アルコールの甘さが美味いんだよ。
酒は、グラースとブリッツも大分飲むなあ。
ピトーネとマリー、ウーノは上等なワインを、他の奴らは甘いカクテルや果実酒を飲む。
暑い時期はキンキンに冷やしたビールってのが美味かったなあ。
みんなで揃って、外でバーベキューしながら、ビールを飲みまくったのが最高に楽しかった。
またやりたいもんだな、バーベキュー。
そう、それで、グリーズ商店だが。
売り物は色々あるが、まあ、説明しよう。
まずは、塩。
混ざり物のない、純正品。
上等な塩だ。
真っ白な塩だが、相場より安く売っている。
1kgにつき銀貨4枚ほどで売っている。
売れ筋商品だ。
胡椒。
胡椒は、最も高いスパイスだ。
30gで金貨一枚。これでも、相場よりいくらか安い。
まあ、ほぼ売れないな。
そして、ハーブ。
一番の売れ筋だ。
ハーブってのは、いわば薬草だ。
それを食事に使おうって考える奴は今まで殆どいなかった。
だから、最初は売れなかった。
だが、それを見たご主人様が、グリーズ商店の隣で、ハーブの旨さを実演販売し始め、それから売れるようになったんだ。
その、実演販売していた場所は、今ではビストロ・グリーズという飯屋になっている。
それと、ハーブティーの元になる配合のハーブも売っている。
ハーブティーは今、かなりのブームだ。
需要?っつーのかな?に、供給、ってのが追いついていない。
普通、味のある飲み物って言うのは、酒だけだ。金持ちが、果物の絞り汁を飲んだりもするが、まあ、庶民にはできねえことだ。あとは、ジパングにも抹茶ってのがあるが、こっちもクソ高い。
だから、酒が基本なんだが、酒では酔っ払っちまうから、仕事の時とか、大事な時には飲めねえ。
そんな中、このハーブティーは違った。
アルコールって言う、酔っ払っちまう、その、成分?が入ってねーから、仕事の最中でも飲めるし、元は薬草だから身体にも良い。
その上、いろんな味があって飽きがこないし、爽やかで美味いんだそうだ。
特に女と、エルフに人気だ。
最近の流行りは、昼過ぎに甘いものを食べながら、ハーブティーを飲むことらしい。
他には……、トガーラやショーガの根とかを売っているな。
さて、昼休憩だ。
ビストロ・グリーズで、交代で飯を食う。
今日は……、おっ!カレーライスじゃねーか!
これ美味いんだよな!
ん?
「どうした、リィン?」
「な、なんか、さっき、貴族の人が来て、専属料理人にするとか……」
「あ"ぁ?そりゃあ……、面倒事じゃねーか」
「うん……」
クソ、どうすんだ?
ご主人様は、今はダンジョンに潜っていていねえし。
「兎に角、時間を稼げ。ご主人様が帰ってきたら、すぐに相談するんだ」
「うん」
そんなリィンを見送って、店仕舞いだ。
夕方前には仕事は終わりだ。
そのあとはマリーの屋敷に帰って、軽く訓練してから、酒飲んで寝る。
そのはず、だった。
「もし、良いかな?」
「良くねーよ、店仕舞いだ。また明日来てくれ」
「そうじゃないとも」
豪華な格好をしたおっさんが、アタシに話しかけてきた。
「ふむ、私はこの辺りの商人を取りまとめるジョセと言う者だ。率直に聞くが、この店の商品はどこで手に入れた?」
「あー?えーと、ご主人様が秘密のルートで手に入れてるから、詳しくは言えない」
商品の出所について聞かれたら、こう言えと教わっている。
「言えないのかね?つまり、言えないような筋から調達している訳だ」
「はぁ?何言ってんだおっさん?」
「率直に言おう。我がジョセ商会に、そのルートを寄越すが良い!」
本当に何言ってんだ?
「馬鹿かテメェ?」
「おおっと?逆らっても良いのか?人に言えないような手段で手に入れたものを売り捌く連中だとバラしてやっても良いんだぞ?」
「何だと……?」
「薄汚い冒険者の副業の店なのだろう?どうせ盗品だ!でなければ、こんな品質のもの、私のような大商人でもない癖に集められるか!!」
チッ、こっちもめんどくせーことになったな。
「安心しろ、そちらにも売値の三割、いや、二割はくれてやる。これで私はより商会が儲かる、貴様らは我がジョセ商会の傘下に入る。誰も損をしないだろう!ははは!」
あー……、めんどくせー。
「どうするの?」
「どうしましょう?」
「殺す」
「「「「えー?!!!」」」」
帰ってきたご主人様に相談したところ、貴族も商人も殺すことになった。
あー、うん、まあ……、殺すのが一番楽、か?
「大丈夫かな……」
「いやあ、ご主人様がヘマすることはねえだろ」
そして、見事二人を殺してきたご主人様。
「どうだ、こんなもんよ」
「本当に殺しちゃったの?」
「流石です、ご主人様!」
問題は即、解決した。
ご主人様が、貴族も商人も両方暗殺してきたんだ。
バレたらヤバいんじゃないか?と聞いたが、このガリア皇国には、心を読む超級魔法、マインドリーディングを使える奴はたった一人。
たかが一男爵の事件で態々ご主人様に会いに来ることはねえ。
聖王国の巫女などの神託スキルは、大災害や勇者の選出くらいしかできやしない。
つまり、ご主人様の犯行は、万が一にもバレないって訳だ。
……はぁ。
今回も、結局は、ご主人様の足を引っ張っちまったな。
次があれば、自分で対処しなきゃな。
御都合主義の方がテンポいいよね。