書き溜めといてよかったー。
「え、ええと、『じぃ・あーる・だぶりゅー』だそうですが……、何でしょうかこれ。聞いたことのない加護ですね……」
と、俺はそう鑑定された。
じぃ、あーる、だぶりゅー。
G.R.Wか?
何の略だろうか?
「……まさか」
俺は自分に意識を集中する。
……そして、理解した。
手で親指を隠し、誰にも見られないようにしながら……、『親指を変異』させた。
皮膚を突き破り、赤い筋肉と鋭い小さな鉤爪が生える。
慌てて俺は、鉤爪を引っ込めた。
理解したぞ。
これはあれだ。
ジーン・リコンバイン・ウェポンだ。
遺伝子調整型生物兵器、略してG.R.Wだ!
大人気テレビゲームシリーズ、最も有名なホラーシューティングゾンビゲーム、「ダークデイズ・オブ・ザ・デッド」……、通称DDDの敵クリーチャーの総称。それが、G.R.Wなんだよ!
当然、「ゾンビウイルスで肉体変異して、最強の化け物になれます」などと、言える訳がない。
俺は黙っていたのだが、すると……。
「ぐわはははは!!!やいやいやい、阿字!!!」
腰に手を当てて胸を張る槍崎晴馬(やりさき はるま)が、俺に指をさした。
「聞いたか?!俺の加護は強い!反して、キサマは弱い!これからはオレ様の方が女の子にモテモテになるのだ!!!」
……なんかこいつは、俺に対抗意識があるようだな。
俺がモテるから気に食わないんだろう。
槍崎はかなりの女好きだからな。
こんな性格だが、意外とモテるそうで、ナンパ成功率は高いようだ。
だが大抵は二股三股やりまくって、手酷く振られるのがいつものオチなんだとか。
「や、やめなよ晴馬君……。加護の内容が何でも、喧嘩しないって約束したばかりだよね?」
だが、そんなクズ野郎の槍崎にも、平野智絵里(ひらの ちえり)という幼馴染の美少女がおり、この子が支えてくれている。
俺の所見だが、槍崎が悪ぶったり、他の女を引っ掛けたりするのは、快楽を得たいと言う目的もあるが、この平野という幼馴染の気を引きたいからという面が大きいと見ている。
本当に好きな女の子に好きだと言うのが恥ずかしいから、散々クズ行為をして気を引いて構ってもらうという、アホみたいなアホなのだ、この槍崎と言う男は。
まあ平野も、そんなクズ野郎の槍崎に心底惚れ込んでいるからなあ。破れ鍋に綴じ蓋ってことなんだよなあ……。
「槍崎、馬鹿なことを言ってないで……」
「問答無用!オレ様のスーパーパワーにひれ伏せ!」
襲いかかってくる槍崎。
まあ、槍崎も喧嘩は強いが、俺は宝蔵院流槍術を中心に幾つかの武術を修めている。
流石に、喧嘩が強い程度の素人には負けん。
腕を掴んで捻り上げる。
「あいだだだだだぁ?!!!」
「やーめろっつってんだよこのボケナス。今は仲間内で喧嘩している場合じゃねぇだろうがよ」
「ク、ク、ク、クソおおおおっ!!!これではなんだか、オレ様が噛ませ犬の雑魚キャラみたいではないかあああっ!!!女の子にモテなくなったらどうしてくれる?!!!」
「安心しろ、既にモテてないから」
「ぐぬぁーーー!!!」
さ、て、と……。
手元には一応、荷物がある。
そして、荷物の中には、美術の時間に使っていたスケッチブックがあるな。
俺はそれに、前衛芸術っぽい文字を書きながら、ジョックの白道に耳打ちした。
「白道、しばらくあの姫様とやらと話して、時間を稼いでくれないか?二分で良い」
「何でだ?……ああ、分かった」
俺の手元の文字を見て、深く頷く白道。
全く、頭の回るジョックは頼りになるね。
そして二分後、俺はこう叫んだ。
「ところで、俺の書いた絵を見てくれ。こいつをどう思う?」
「何だそれー!よくわかんねーなー!今こんなことをやっている場合じゃないだろー!ふざけんじゃねえー!」
白々しいことを言って、俺からスケッチブックを取り上げて、みんなの前に放り投げる白道。
まあ、文字には見えないだろう。
アニメのタイトルのようにデザインされた読みにくい文字で、イラストが描かれている。
この世界の人間には、これを文字と認識することはできないはずだ。
だが、日本人なら日本語が読める。
俺のイラスト風文字は、警告文だった。
内容は簡単だ。
今後の俺達のことについて。
地球に帰るのは限りなく難しいから、力を合わせて生き抜くこと。
今後、加護の格差で、露骨に差別されたりするだろうが、分断をしようとする作戦なのでめげないこと。
ハニートラップなどに引っかからないよう気をつけること。
俺の見立てでは、姫様とやらは一切信用できないこと……。
一応、うちのクラスに馬鹿はいても知的障害者はいないからな。
全員、この文を読んで理解したらしく、大人しくなった。
さて、やれるだけのことはやったかな。
とりあえず、案内に従って、与えられた自室に行こうか。
それはそれとして、最強存在がシリアスストーリーをぶち壊しにするギャグものも書きたい。
生まれつきなんかそういう宿命の下生まれた「主人公」は、異世界召喚されて勇者になったり、デスゲームに巻き込まれて優勝したり、ゾンビパニックに巻き込まれて生還したりと、何故かありとあらゆるところで「主人公」にされてしまう。
もういい加減うんざりなので、片田舎の高校でゆったり高校生活をしていたのだが……、再び始まるデスゲーム!化け物に転生して蘇った元カノ!親が実は国家公認の暗殺組織のボスだった!最近いい感じの雰囲気になってる女の子が魔術結社の幹部!などと、もう本当に酷いことに……。
「ヤメロー!俺を主人公にするんじゃなーい!」
そしてキレる。
「あーそう、もうええわ。今まで培った圧倒的なパワーで、全ストーリーをぶち壊しにしてやる!!!」
みたいな。