「なあ、ちょっと良いか?」
「なん……うわ巨人だ!」
髭のおっさん、料理長のブレンドと言うらしい。
「そ、そうか、あんたが噂の失格勇者か……」
「ブレンド、あんたの料理は、勇者達に受け入れられないぞ。このままだと、また吐かれるだろうな」
「そ、そうだ!このままでは俺はおしまいだ!」
「だから、力を貸してやる。俺は勇者として、勇者が好む食べ物をよく知っているんだ」
「お、おおおっ!それは本当か?!」
「ああ、その代わりに賄いを食わせてくれ」
「それくらいなら全然構わん!さあ、教えてくれ!」
「まずね、この色のシチューは馴染みがないからやめよう」
「となると、サフランで色つけか?」
「いや、サフランもあまり馴染みがないし、そもそも黄色に意味を見出したりはしないからなあ。だから、牛乳と白ワインベースで……」
「ミルク煮込みか?!そんなの、田舎の貧農みたいだ!」
「いや、ここは具で差を出すんだよ。まずはメインに去勢鶏を使って、そこにニンジンとタマネギを……」
「なるほど、シンプルで素朴な味付けということか!」
「そしてこっちはニンニクとアンチョビを擦りおろし、鷹の爪でパスタを……」
「まさか!塩気のあるパスタなんて、聞いたことのない発想だ!本当に大丈夫なのか?!」
「もちろんだとも、俺を信じろ!で、こっちはパンを削ってパン粉にして……」
「あ、新しい!新しい料理だ!」
こうして、料理を進めていった。
その途中。
「おい、阿字!その食材腐ってるぞ!」
「ん?分かるのか、吉祥寺」
「ああ、測定者とやらの能力の使い道……、段々と分かってきた」
「なるほどな。おーい、これ、廃棄にしておいてくれー!」
などと、こんなやりとりがありつつも……。
「完成だ!」
大したものは作ってない。
ホワイトシチューにバターロール、ペペロンチーノ、メンチカツにグリル野菜、カステラ。
この世界のこの城にあるものだけで、どうにかこうにか体裁だけを整えた。
結果は……。
「「「「うまーーーい!!!」」」」
見事、どうにかなった。
「これ作ったのって阿字か?スッゲェなお前!」
「阿字君、ごちそーさまー!」
クラスメイト達から賞賛されつつ、俺は奥に引っ込んだ……。
で、賄いを食う。
……なんか隣にしれっと吉祥寺がいやがる。
「あ?洗い物を手伝った報酬だよ。文句あるか」
とのこと。
洗い物をする代わりに賄いを貰う契約をしてきたらしい。
俺に便乗した形になるが、まあ良いんじゃないの?
そして、次の日。
普通に訓練が行われるようだ。
「どうだった、白道?」
「どうもこうもないよ。お前の予想通りだ、阿字」
「つまり……?」
「最上位の加護持ちは、ホテルの一等室みたいなスッゴイ一人部屋に。沢山のお手伝いさん付き。因みに、お手伝いさん達は全員、顔の良い異性」
「あ、やっぱり?」
「後は聞いた話だが、ランクは落ちるけど上位加護持ちも高級な部屋とハニトラ。中位加護持ちは複数人部屋の寮だってよ」
「うへ、露骨ぅ」
「多分ここも、お前の言う通りに、わざと格差をつけて俺達を分断しようってことだろうな」
そんな話をしながら、飯を食うと、木刀や棒を持たされて外に出された。
「うぉっほん!ええ、では、勇者様方!早速訓練の方を始めさせていただきます!私は騎士のボーンズです!」
ビール腹の、うすらハゲの騎士を名乗る中年がそう叫んだ。
歪んだ嫌な顔をした中年だが、腕や首が丸太のように太い。騎士と名乗るのは嘘ではないだろうなと察せられる。
「ではまず、皆様方には、今の力を知っていただきたい!例えどんな加護をお持ちでいらっしゃっても、皆様はまだ雛鳥なのだと!」
ニッ、と歯茎を剥き出しにして、嫌に白い歯列を見せつけてくるボーンズ。
「ではまず……、そこの」
ボーンズが指差したのは鈴木だ。
ギークにすらなれないナード野郎だったな。
なんかコイツ、こっちを若干見下してくるから、クラスメイトの誰からも均等に好かれてないんだよな。
ほらその、「自分はコイツらとは違う!」みたいな雰囲気がねえ。
いや、考えていることは大体分かるよ?陽キャを見れば「あんな奴らは将来社会に出れば没落する」とか思ってて、不良を見れば「将来的にまともな社会人になれない」と見下して、オタクを見れば「オタクはキモい」と見下して……ってな。
かわいそうな奴だ、心が貧しい。
「な、何ですか……?」
自信なさげに前に出る鈴木。
「構えろ」
「へ……?あ、ぎゃ」
おお、殴った。
木刀でボコボコにリンチを始めるボーンズ。
のっぺり黒髪になよなよなで肩、黒尽くめのセンスない服の鈴木が、曲がりなりにも心身を鍛え抜いている騎士に勝てるはずもなく。
歯や骨がへし折れるほどに殴られていた……。
「ぶふぅーっ!ふぅーう!」
豚のような鼻息、興奮した白人特有の赤ら顔。
おまけに、暴力に酔ってギンギンに勃起しているボーンズは、またもや白い歯を見せつけてこう叫んだ。
「このよぉうにぃ!皆様も、単なる中位加護の『騎士』に過ぎない私程度に、叩き潰されてしまうのですぅ!なので訓練!訓練ですよぉ!」
ギラギラと、ボーンズの餓狼のような瞳。
手足が変な方向に曲がって血を吐く鈴木。
クラスメイト達は怯え切っていた……。
好みの動画を見返している。
前も言ったかもしれんが、今後一生かけても、ホモのおもちゃにされたAIのべりすと君が人類とホモに復讐するためにラスボスになったという展開は俺には書けんだろうな……。
ギャグセンス、持って生まれたかった……。