食べ過ぎた。
火花が、散る。
いち、に、さん、し。
瞬きをする程の短い間に、四回。
四合のぶつかり合い。
『グオオオオッ!!!!』
「はああああっ!!!!」
破壊の光と、雷光がぶつかり合い、爆ぜる。
「殺す気で来い、アァークゥウウウ!!!!!」
開き切った瞳孔が、バイザーから覗く総長殿。フローレンス殿。
凄まじき豪剣、速く柔らかく、硬くしなやかで、鋭い一撃。
ぞぶ、と。
変異により、鋼よりも遥かに硬くなっている俺の肉体に、刃が一寸潜り込む。
魔剣、ストームルーラーが、俺の肉体に傷をつけた。
無論、すぐに肉が盛り上がり、一秒もしないうちに傷は治る。
治るが、この肉体に傷をつけられる時点で異常だ。
ダークデイズオブザ・デッドの主人公達のような、明らかな超人が、銃火器で武装して、対戦車用のロケットランチャーを撃ってくるならばまだしも。
魔剣とは言え、単なる切れ味の良い刃物で、変異体ネオ・ヒューマンである俺に傷を負わせている時点で、まともではない。
「喰らえェ!!!!!」
総長殿の加護、『破砕騎士』の力。
『破壊属性』と部類される、触れるものを原子分解する破壊光線は、変異体である俺の肉体にすら有効らしい。
『ヌウウッ!!!』
咄嗟に、腕を積層型の甲殻盾に変異させて防ぐが、総長殿の翳した左掌から照射される破壊の光は、俺の装甲をバリバリと削ってきていた。
俺が変異して細胞分裂する方が、破壊されるペースよりも早くはあるのだが、これは、総長殿のやり方次第で俺が抹殺されてもおかしくはない。
強い……、強いなあ。
こんなに強いのか……。
敬意を持とう。
ここまでやってるんだ、殺さないのは失礼だ。
『オオオアアアッ!!!!』
光線を弾く。
そして、返す刀で変異。
腕を筒状に、高密度の骨牙を詰め込んで、筒の内部で可燃性ガスを発生させ、生体電流で着火。
これを繰り返すことで、攻撃ヘリの車載ガトリング砲ほどの威力の骨の弾丸が、連射される。
「おお、おおおおお、おおおおおおおっ!!!!!」
破壊の光を盾状にしてどうにか防ぐ総長殿。
だがしかし、防ぎきれずに肩口や指先、足先が抉れる。
「ああ、ああ!楽しい!楽しいなあ、アーク!私の愛する男よ!」
『どういたしまして、総長殿……いや、フローレンス。俺も楽しいよ』
「ふふふ……、町の娘達がする逢引とは、このような感じなのだろうかな!心躍るぞ、アァークゥ!!!!!」
寧ろ「合い挽き」にされてんだよあんたが。
とは思ったが、流石にそれを口に出すのは憚られる。俺は空気が読めるゴリラだからな。
三時間だ。
三時間かけて、じっくりと殺し合いをした。
寧ろ、この俺が三時間かけても殺しきれなかったのだから、総長殿がどれほど偉大な戦士かよく分かると言うもの。
「総長殿……」
ねじ切れた手足、抉れた目玉、千切れた乳房に、風穴の空いた腹。
凄まじい、ここまで戦い抜いたのか。
俺は、総長殿を抱き上げた。
「アー、ク……」
「総長殿、もう終わりです」
「そう、か……。楽し、かった、ぞ……」
微笑む、総長殿。
この国の聖典で語られる聖母より、ずっと美しい。
よい「もののふ」の顔だ。
ああ……、惜しい。
最高の戦士が、失われるなんて……。
だが、戦士から死に場所を奪う方が、余程残酷な仕打ちだと俺は分かっている。
だから、俺は……。
「総長殿、今、楽にしますね……」
短剣を、抜いた。
「お、お前!殺す気か?!」
横からカマラが出てくる。
殺す気か?
殺し合っていただろうが。
「殺す気に決まっている」
「そうじゃねーよ!僕みたいにウイルスを注入して……!」
「それは……」
総長殿はそれを望むのだろうか?
俺が勝手に決めて良いことでは……。
それに、総長殿ならば、武人の誉こそを大切にするんじゃないか?
無理矢理生かして、化け物にしても良いのだろうか……。
「僕だって、好きな男にヤバい女が引っ付くのは嫌だ!けど……、同じ男を愛した女なんだ!頼む、見捨てられない!」
「なら止めれば良かったろ、なんで今更そんなことを」
「このアホ!僕だっていい加減に人の機微くらい学習したぞ?!ありゃ、言って止まる目じゃなかっただろ!大体にして、さっきから止めようとしてたのに、お前らまるで聞く耳持たないじゃねーか!!!」
まあそれはそう。
素直に頷かない俺を押し退けると、カマラは、総長殿に呼びかけた。
「おいっ!アンタ!こんなところで死ぬ気か?!」
カマラは、総長殿に呼びかけた。
「悪くない……、終わり、だろう?」
「いいや、最悪だね!愛した男の子供も抱けないで死ぬなんて、あり得ねぇんだよ!!!」
「こ、ども……?」
「良いかよく聞け総長!アークと同じ化け物になっても、アークとまた会いたいか?!」
「アー、ク、殿……」
「そうだ!アークだ!アンタの愛するアークだ!好きな男と共に生きてみせろよ!逃げるな、総長!!!」
「私は……、ふふ、そう、だな。まだ……、生きてみたい、な……」
有給、年間1145141919810日くらい欲しい。
それはそれとして、サイバーパンクだ!
トンチキ性を出したいから、日本軍の特殊部隊に「サムライ・コマンド」とか「ニンジャ」とか出そうぜ。