久々に読んだが、やはり名作……。
絵柄とかキャラクターはあまり好きじゃないんだけど、漫画としての魅せ方もストーリーも、どれも極めて最高の素晴らしい神作だなあ。
ヒルザ殿がタムストールに帰ってくるまでに、小麦は全て売り、帰ってきたヒルザ殿には新しい麦のパンを振る舞うと良いでしょう。神がそう仰られています。
みたいな、意味深なことを言って、今ある汚染された麦を処分させた。
流石に捨てろとは言えんから、適当に売ってしまえと言ったが……。
まあ、食べ続けなければ平気のはずだ。
広く浅く、汚染麦が流通するくらいなら、まあセーフだろう。
具体的にどうなるかは不明だが、一度食べる程度なら大丈夫……、なんじゃないのかね?
食料なんて慢性的に不足しているこの世界で、麦を、それも高価な白麦を捨てろとは言えなかった。
正論を押し付けることは簡単だが、それでは納得してもらえないだろうからな。
進んだ世界にいた文明人であるという自覚があるならば、文明を押し付けるのではなく、融和的な姿勢で対話することこそが、本当の文明人だと俺は思うぞ。
そんな訳で、ヒルザ殿を連れて一年間、巡礼の旅に出る訳だが。
300パラードももらえるんなら、一年かけてやる価値は充分にあると言う判断だ。
「ステーブル伯爵の四男、ウィリアムです!今日から、サー・アークの従者をやらせていただきます!」
「私はエルフの吟遊詩人、アオイドスと申します。サー・アークの歌を歌い、その功績を讃えさせていただきます」
そして、二人のおまけ。
ウィリアム君は、ステーブル伯爵が「是非連れて行ってやってくれ」と頼んできた。
どうやら、この世界では、騎士になる為には現役騎士の騎士見習い(従者)として数年働いて、騎士になるための勉強をしなければならないらしい。
そんな訳で、俺の元で勉強させてくれ!と頼み込んできたのが、このウィリアム君って訳だ。
まだ十二歳の子供だが、肝が据わっていて、いつもにやけたツラをしたガキだな。
黒髪の、鼻筋がくっきりとした地中海系。
で、それと、ウィリアムの世話役兼、ステーブル伯爵家の食客である、エルフのアオイドス。
ベリーショートの金髪に緑色の瞳、凄まじく整った顔と、笹耳。
何故か男装した、中性的な美女だ。
「『厩』の家のウィリアムか」
「となると……」
「「ウィリアム・マーシャル」」
「で、アオイドスはそのまんまだな」
「名は体を表す、ってことか」
この二人を供回りに追加して、ヒルザ殿とその近習が貴族馬車に乗って、移動開始……。
「にしても、一年かけて巡礼ねえ……。しばらくは名声稼ぎしなきゃならないのに、これで大丈夫なのか?」
カマラが、軍馬に跨る俺の前にちょこんと座りながら、そう呟いた。
「大丈夫だ。この世界では、近場でも『巡礼の旅に出る』だけで賞賛を受けるからな。それが、異国の果てにある『聖地イルシール』なら、物凄い偉業だよ」
「確かに、碌に整備されてない道を、盗賊やモンスターに野生動物を退けながら、病気や怪我に耐えつつ長旅をするってのは、凄いことなんだろうが……」
「こればっかりは、飛行機で一晩で地球の裏側にまで行けていた現代人には分からん感覚だろうな」
俺達がそんな話をしていると……。
「おお、何と!偉大なる騎士様は、聖地への巡礼すらも怖くはないと!なんたる勇猛か!」
と、ポロロンとハープのような弦楽器を鳴らすのは、吟遊詩人のアオイドス。
吟遊詩人というよりは、演劇のような声の張り。
大きな声にビビったカマラが、俺の腕を掴んで震える。
しょうがないので、カマラをあやすように片腕で腰を掴むように腕を回してやる。
全く、ガキみたいな奴だな。
「そうビビることはねえだろうに。ヅカか何かだと思えば良いだろ」
「僕は音楽はクラシックしか聴かないんだよ!歌劇なんてうるさくて見てられるか!」
「知識はあるのに、粋や酔狂を理解しない奴だな、お前」
「やかましい!僕はそう言う、非論理的な事は……、ひっ!」
「それにこの、凄まじい馬車!こんなに見事な馬車は見たことがありません!馬も強く逞しい!私の国ならば、この馬車と馬を売れば、王族の娘を貰えてもおかしくはありません!」
一方で、歌うように俺を褒め称え続けるアオイドスには、ビビるカマラは見えていないようだ。
むしろ、カマラは俺以外の全員を怖がってまともにコミュニケーションを取ってないからなあ。
ホーライが唯一、カマラと仲がいいくらいか。
ホーライも、カマラのことを、「学識と顔以外は全部ゴミの可哀想な子」としっかり正確に認識してサポートしてくれてるので、大きな問題はないが……。
おっと、そろそろ昼休憩だ。
飯にしよう。
定期的に転移術師のリープからお届けされる、聖堂騎士団の荘園(を借りた実験農場)産の新鮮な食材を使って、俺自らが料理を作る。
……騎士が料理を作るみたいな「賎業」をやるなと周りからは言われるが、この世界の飯はマジで不味いので、これだけは頼むと言い含めてある。
そうして、愛用の大鍋でできたのは、優しい味付けの田舎風ポトフである。
錬金術師のエイラに作らせた、顆粒コンソメ的なアレを、煮込んだ野菜とソーセージにぶち込むだけの、酷くインスタントな家庭料理だ。
それに、堅焼きのライ麦パンを浸して食べる。
食事は大抵、いつもこんなものだ。
だが、従者達は、旅の野営の最中にこのレベルの食事が出てくるのは驚異的だと思っているらしく、食事の時間をいつも楽しみにしている。
ついでにヒルザ殿も、俺達と同じものを食べている。このポトフは、それくらい上等なもの扱いらしい。
ああ、それと、無理に和食は出さない。
この世界の人々は、食べ慣れていないものをわざわざ進んで食べたりしないからな。
慣れていないのに和食を無理矢理食わせるのも申し訳ないだろう?
この世界にはこの世界の習慣があるんだ、俺達のやり方の方が科学的に正しくても、それを押し付けちゃならない。
俺達は所詮、異世界人なんだ。
郷に入っては郷に従えと言うだろう?
どうしても我慢できないならば、こちらの世界の人の中で合わせてくれる人を探すか、もしくは、見えないところでこっそりやろうぜって話だ。
×××××××××××××××
「お前、奴隷商人なんだろう?奴隷商人は悪だ!」
道端で、漆黒の鎧を着た男が、奴隷を連れ歩く商人を恫喝していた。
「ま、待ってくれ!そんなことを言われても困る!私だって、買ってくれと言われたから買ったんだ!」
黒騎士と商人は、激しく口論をする。
「何で買うんだよ!買ってる時点で悪だろ!」
「いや、何で買ってはならないんだ?!法で許可されているんだぞ?!というか、私から奴隷という財産を奪う気か?!」
「財産だと?!お前……、人間を何だと思っているんだ?!」
「えぇ……、何だこの人?話が通じないぞ……!!」
「僕の国、日本では、奴隷制度のような野蛮なことは禁じられていた!しかも……、こんな小さな女の子をよくも!」
「いや、獣人は女子供でも体力があってよく働くから……」
「こんな小さな子を、学校にも行かせずに働かせているだとぉ?!許せないぞ!!!」
「は?はぁ?学校って……、貴族が通うやつか?何で魔族の奴隷を学校に行かせなきゃならないんだ?!本当に意味不明だぞ!!!」
「黙れ!お前のような非文明人の野蛮な悪党は、僕が天誅を下してやる!」
「グワーッ!!!」
舞い散る鮮血。
奴隷商人は、黒騎士の凄まじい豪剣で、縦半分に分割された。即死だ。
「ご、ご主人様ーっ?!!!」
猫獣人の可愛らしい茶髪の少女が、猫耳をペタンと寝かせながら、悲痛な叫び声を上げた。
「もう大丈夫だよ、お嬢さん!」
「ひ、ひいっ!この人頭おかしいよぉ!」
「可哀想に……、自分がどれほど恵まれていないか、分からないんだな……。でももう大丈夫だ!君は……、自由だ!!!」
猫獣人の少女は、一瞬、ポカンとした顔をする。
そして、周囲を眺める……。
「ま、ま、まさか、こんな人里離れたところで、私を、解放、するん、ですか?」
「ああ!奴隷は解放しなきゃな!僕は進んだ日本から来た文明人だから、悪い奴を倒して、良い文明を広めるんだ!」
瞬間、真っ青になる少女。
獣人故、人よりはまあ力があるが、街の外で、奴隷という身分すらなく放り出されるとなると……。
「ひ、ひぃ、嫌、嫌あっ!お、お願いします!貴方の奴隷にしてくださいっ!そうじゃなければ、ここで殺してえっ!」
泣きながら黒騎士に縋り付く少女。
それを受け止めた黒騎士は……。
「えぇ〜?参ったなあ!奴隷美少女なんてテンプレ展開だけど、やっぱり悪いしなあ〜!」
と、満更でもないといった様子で、少女を抱きしめていた……。
つまり……、俺流チートスレイヤーってコト?!?!!?!!
なんか書いているうちになろう主人公アンチみたいな感じになっちゃった……。