ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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あれ?傭兵良いことやってない?と思うかもですが、国力をつけて恩を売って自分の駒にする気ですから騙されちゃならないぞ!


18話 とあるコボルト族の供述

わん。

 

僕は、そう。

 

レムリアに住む、とあるコボルト。

 

お城から遠くの、六番街に住んでる。

 

六番街の55番地、オーメルストリートの三軒目。

 

そこが、僕の家だ。

 

 

 

レムリアは良いところだ。

 

前の集落みたいに、獲物が捕れなくても、お金があれば飢えないし、食事は美味しいし、お酒も飲めるし、拳闘も見れる。

 

何より、人間の街みたいに、馬鹿なコボルトだからって、足元を見られたり、馬鹿にされたりしない。

 

僕は、僕達は、それだけで、とても嬉しい。

 

毎日、ちゃんとした仕事があって、毎日、お給料がもらえて、毎日、食事ができる。

 

雨も風も通さないしっかりした住処と、寒さを凌ぐ毛布、食料を蓄える冷蔵庫と、綺麗な水、着るものもある。

 

浴場に行けば身体は綺麗になるし、病気になってもお医者さんがいる。

 

下水道は、汚れた水を捨てても嫌な臭いをしないようにしてくれる。

 

週に二日は休みがあって、祝日にも休める。

 

お祭りなんかも年に何回かある。

 

レムリアは、本当に良いところだ。

 

 

 

至高の王ジン様は、遠目で一度見たくらいだが、とても尊敬している。

 

王様のお陰で、僕達の生活が楽になったからだ。

 

でも、王様を見れるのは、お金持ちの、学校に行っている子供や、お城の近くの一番街に住むことを許された人達くらいだ。

 

たまに、視察?と言って、グラース様と街を見て回ることもあるらしいけれど、お城から遠い六番街に来てくれたことはあまりない。

 

くぅーん。

 

人間の街みたいに、差別されることはないけれど、僕達、弱いコボルトと、上位種の皆様の間には、確かに格の違いがある。

 

コボルトは、どんなに強くても、人間の大人くらいまでしか強くなれないし、魔力だって、賢さだって、人間にすら敵わない。

 

僕達は、弱いんだ。

 

でも、そんな弱くて馬鹿な僕達に、新しい生きる道を用意してくれたのが、王様だ。

 

僕達は本来、粗末な石の武器で、小さな動物や虫を捕って食べて、穴倉やあばら家、廃村で、なんとか生きてきた。

 

まあ、身体が、人間の子供並の大きさだから、食べる量もそんなに多くないし、家族みんなで協力して生きているから、何とかなってきたけど。

 

そんな僕達が、毎日、美味しいご飯とお酒、そして、たまの娯楽が楽しめるのは、王様のお陰だ。

 

 

 

さて、そんなことより朝だ。

 

農家の僕は、朝日が昇る頃には起きる。

 

少し眠いが、一番下の弟がポンプで汲んできた水で顔を洗って、目を覚ます。

 

ああ、そうそう、この辺りは木の家が多いけれど、どれも広めだ。

 

なんでも、王様が、コボルトは家族が沢山いることや、家族や親戚で固まって暮らすことを知っていたからだそうだ。

 

やっぱり、王様の目の付け所は違うなあ。

 

と言う訳で、広めの家に家族全員で身を寄せ合って暮らしている。

 

僕の家では、お父さんとお母さん、兄弟姉妹が僕を含めて七人だ。

 

本当は十人いたんだけど、昔、病気や飢えで三人の兄弟姉妹は死んでしまった。

 

でも、レムリアに来てからは、どこの家でもそう言う話は聞かなくなった。

 

子供が死なないのは良いことだ。

 

……さて、食事にしよう。

 

「お母さん、朝ご飯は?」

 

「ソバの実のお粥よー」

 

いつもの、である。

 

ソバと言う植物の実を、牛の乳と水で煮たものだ。

 

ほのかに甘くて、お腹に溜まるから、幸せな気持ちになれる。

 

何せ、集落で暮らしていた頃は、お腹がいっぱいになるという経験がなかったから。

 

それに、甘いものもなかった。

 

薪も無駄にできないから、温かいものも食べれなかった。

 

そもそも、朝に食事ができることもまず無い。

 

食前に、祖霊に祈りを捧げて、食べ始める。

 

「おいしー」

 

「ああ、弟、こぼしてるこぼしてる」

 

「おかわりー」

 

賑やかに朝食を済ませたら、仕事だ。

 

僕達の仕事は小作民……、地主さんの土地を借りて、そこを耕して、野菜や穀物を作る仕事だ。

 

因みに、冬の、植物が実らない時期は、雪かきや工場なんかで簡単な作業をやらせてもらったりしている。

 

王様が言うには、例えコボルトでも、貴重な労働力になるんだそうだ。

 

強くて偉大な王様の下で働けるなんて、幸せだ。

 

 

 

さあ、仕事だ。

 

地主のヘルハウンドさんの元に行って、点呼をとり、仕事を始める。

 

仕事は決して楽じゃないけれど、この国のみんなの食べ物を作る大切な仕事。

 

それに、成果が出るか分からない狩りを一日やるのとは違って、働けば確実に、銀貨一枚はもらえる。

 

半分は冬の蓄えになるとしても、それでも一日三食食べるには困らないだけのお金がもらえるんだ。

 

この国では、一食食べるなら銅貨十枚はほしい。

 

しかし、税金や、沢山いる兄弟姉妹、お年寄りを養っていくには、少し足りない。

 

なら、どうするか?

 

それは簡単。

 

安いものを買えば良い。

 

一食銅貨十枚、というのは、ちゃんとした飯屋に行ってのことだ。

 

安い材料を買って、自分の家で作れば、もっと安くできる。

 

それに、昼ご飯は地主さんが食べさせてくれるので、節約にもなる。

 

今日も、朝に頑張って働いた後は、食事を出してもらった。

 

日替わりのスープ……、今日は豆とニンジンのトマトスープだった。それに加えて、パンプーシュカ。それに干し肉ももらえた。

 

お腹を膨らませた僕達は、午後も沢山働いた。

 

 

 

夜は、お母さんが買ってきた食材で料理を作る。

 

仕事が終わる時間は五時前くらいだ。

 

暗くなる頃には仕事は終わりだ。

 

時間、というのは、一日を二十四で分けた、時の流れの目安らしい。

 

五時になると、鐘が鳴るから分かる。

 

あと、高いけど、時計も売っている。

 

でも、時計なんて、偉い人くらいしか使わない。

 

さて、晩御飯は、スープとパンだ。

 

基本的に、レムリアの食事はスープとパン。裕福な家庭なら、これに肉や魚、サラダが追加される。

 

スープには、クズ肉のソーセージが輪切りにされたものと、ジャガイモ、キャベツが沢山入っている。味付けは塩とハーブだ。

 

それに、パン屋で買ってきたのであろう、ふかふかのパンをお供に食べる。

 

パンはとても安く、一個で銅貨二、三枚。クズ肉のソーセージは、腕の半分くらいの長さと太さで銅貨六枚くらい。

 

「ああ、美味いなあ、美味いなあ。こんな美味いもの、昔は食べられなかった」

 

お父さんが美味しそうにパンを頬張る。

 

確かに、コボルトは、滅多にパンなんて食べられなかった。

 

肉だって、狩りが上手くいった日にしか食べられなかった。

 

普段は、木の実や果物のようなもの、弱いモンスターや動物の肉、野草なんかを食べていた。

 

パンなんて、今までは数えるほどしか食べたことがない。それも、黒パンだったし。

 

こんなに簡単に白パンが手に入るなんて、本当に僕達は恵まれている。

 

さあ、明日は休みだ。

 

拳闘を見に行こう。

 




でも、魔人やモンスター娘から見たら理想の王。

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