「あ、あーっと……?」
ジュラ娘。
ソーシャルゲームの中から飛び出した、絶世の美女達だ。
「「「「先生ーっ!!!!」」」」
「うおっ?!!」
俺は、来日した海外のスター俳優のように、ジュラ娘達にもみくちゃにされた。
「きゃーっ!先生だー!」
「やっと会えた!」
「先生、大好きーっ!」
指をしゃぶられ、顔を舐められ、匂いを嗅がれ、抱きつかれ……。
もう正直勘弁してほしい。
流石に怒りの声を上げようとして、気付く。
仮に、この子達が、俺の育てたジュラ娘だとしても。
人間なんかよりも遥かに強いジュラ娘を怒らせたら、どうなる……?
背筋に冷たさ。
悪寒が走る。
ジュラ娘は、★一つの低レアではほぼ人間と変わりないという設定だった。そして人間とは違い、『ダイノ・フェノメノン』というある種の超能力……、例えば、火を発したり、物を凍結させたりなどを使える。
が、★★ともなれば武器を持った人間を素手で捩じ伏せ、★★★からは『ダイノ・スキル』という凄まじい必殺技を行使する。
★★★★ならば、『ダイノ・フェノメノン』は更に有用で強力になり、スキル枠も二つに増え……。
最高レアの★★★★★なら、二つのダイノ・フェノメノンと三つのダイノ・スキルを扱い、更には2121年の未来兵器を上回るほどの戦闘能力があると描写されていた……。
まあ、つまり、★★★のジュラ娘でも、俺の首を素手で捻じ切るくらいの芸当は、簡単にできるのだ。
……怒らせては、ならない。
「あ、あぁ、みんなありがとう!歓迎してくれて嬉しいよ」
そう言って、手近なジュラ娘の頭を撫でてやる。
「わあっ!先生!」
「私も撫でて〜!」
クソ……。
逆らえない奴らに囲まれるとはこんな気持ちなのか。
南米でのフィールドワークの時、ジャングルの殺人部族に囲まれて武器を向けられた時を思い出す……。
まるで、猛獣の檻の中に閉じ込められたみたいだ……。
「コラ!君達!」
そんな中で声を上げたのは、青髪の女。
トリケラトプスのリッケだ。こいつも何故か、数少ない知能派に分類される。
「先生が困っているだろう!一旦離れなさい」
「「「「はーい!」」」」
リッケがそう言うと、ジュラ娘達は解散した。
「さて、先生。話の前に、まずはシャワーでも浴びてください。この環境は人間には辛いでしょう?」
なるほど、気を遣ってくれているのか。
「ああ、ありがとう、助かるよ」
「あ、それとこちら、水です」
ペットボトルを渡された。
見た目は透明な液体だが……。
まあ、ここで俺を殺す意味はない、か。
この暑さの中歩ってきたのもあり、喉はカラカラだった。
ペットボトル一本を空にした俺は、そのままひみつきちの中へと入る……。
ひみつきちのマイルームは、ゲームで設定していたものと全く同じだった。
そこの、シャワー室で砂と汗を落とす。
冷たいシャワーを浴びて、茹っていた頭が冷めた。
これは、チャンスだ。
こんな、白赤バッタのような化け物が出る砂漠地獄で、一人きりで徒手空拳など、死ぬに決まっている。
それも、飢えや渇きで苦しんで死ぬか、化け物に生きたまま食われて苦しんで死ぬかの二択。最悪の死に様だ。
ジュラ娘が何故ここにいるかとかそういうのは全部置いておこう。実際、スミに道中で訊ねたら、「よく分からないけれど、気が付いたらここにいたんです」としか言わないし。
だがこれは、利用できる!
ジュラ娘とひみつきちがあれば、この地獄のような砂漠でも衣食住が充実しているし、孤独感も感じない!
ジュラ娘が基本アホなのも、その分扱いやすいと思えば助かるもんだ。
ジュラ娘達から嫌われない限り、こんな環境でも楽に生きられるんだ!
そう思えば、幸運だったくらいだ。
俺だってもう四十歳になったが、別に枯れている訳じゃない。綺麗な女にモテれば嬉しい。
大体にして若返ったしな。
シンプルに考えていこう。
得したと思おう。
未来への切符はいつも白紙なんだよな。
さっぱりした俺は、自室内の新しい服に着替える。
そしてそのまま、プラントのある車両へと向かった。
プラント……。
特に、羽の生えた女性の姿をしたものとかそういうのではない。
ただ、虹色に輝く光を発する球体を強化ガラスで包み、鉄材で保護して、コンピュータと接続されたプラグが刺さったものだ。
これは、ジュラ娘の超能力こと、ダイノ・フェノメノンを科学的に解析して、その能力を擬似的に行使できる装置である。
水、食料、衣類の他、武器弾薬や娯楽品の類、家具や嗜好品など、ジュラ娘に与えられる全てのものがここから生産されている。
……とは言え、ジュラ娘は、★であろうとも、自分の衣服と武具は好きなタイミングで創り出せるのだが。ダイノ・フェノメノン関係なしに。
だが、一般人である俺はそんなことはできない。
丸腰は怖過ぎる。
武器を用意せねば……。
プラントのコンピュータにデータ入力。
登録されている銃器シリーズである、『エレクトス・シリーズ』から、ハンドガンとその弾丸を生成する。
それを、生成したガンベルトに巻いて、ついでにマチェットを腰に差しておく。
銃の使い方?分からないと昔のフィールドワークの時に首狩り族に殺されてたね。
武器を装備してから、それを砂色のマントを羽織って隠して、グレーのストールを巻く。
ついでにサングラスも装備。
さあ、ジュラ娘に会いに行こう。
Q:こいつ(主人公)何やってた人なの?
A:恐竜博士版インディージョーンズ。