次の改革予定地は、ブリッツの集落だ。
一旦、空間魔法でジョージアの街に戻り、ブリッツを連れてきた。
ああ、一応言っておくが、暇な時にはちょくちょくジョージアの街に帰っていたぞ。
冒険者としての活動もやっている。
空間魔法で、一度行った場所には戻ってこれるから、暇な時は各地で冒険者稼業をしている。
さて、今回はブリッツの集落をどうにかしよう。
「ブリッツ」
「キシシ、なあに、ご主人様ぁ?」
「俺は頭が痛い」
蛮族……。
フェンリル族より蛮族。
洞窟や屋根しかない鳥の巣のようなものに住んで、そこらの虫や小動物、植物を適当に喰らい、行商人を襲って物資を確保し……。
「この、馬鹿どもが!!!文明的な生活ができねーのか!!!」
「「「「?」」」」
こい、つらは。
「はぁー……。取り敢えず、近くの部族のハーピィ系を集めろ!!」
「良いけど……、あんまり集まんないと思うよ?」
「何故だ?」
「ハーピィ系は、世界各地に散ってるから」
「成る程、渡り鳥のように生活しているのか」
「うーん、まあ、そういうタイプもいるけれど……、ハーピィ系って、住処とかどうでも良いと思ってるんだよね」
そういうものなのか。
「おい、お前!!」
ん、何だ?
「あ、おかーさん」
「お前の母親か」
「お前がブリッツの婿か?!」
「いや、ブリッツの主人だ」
「そうか!!お前、さっきの凄かったな!!」
さっきの?
「空をキーンって、大きな音で飛ぶやつ!鉄の籠!」
飛行機のことを言っているのか。
「空も飛べるし、新しい長はお前で決まりだな!!」
すんなりと受け渡された支配権。
「そうか。よし、では、お前達蛮族共は全員移動だ」
仕方がないから、全員、レムリアで面倒を見よう。
集まったハーピィ系は千万ほどか。
サンダーバードを中心に、ハーピィ、ガルーダ、コカトリス、フェニックス、ロック鳥、シムルグ、ステュムパリデス、ガンダルヴァ、セイレーン、フリアイ、珍しいところではフレズベルグなどが集まった。
サンダーバードは電気を、ガルーダやフェニックスは火を、フレズベルグは風を操るが、まあ、使えない。何の役にも立たない。
まず、ハーピィ系は不器用だ。
何せ、両手が羽だからな。
まあ、最低限、スプーンと鍬は持てるようだから、農作でもやらせりゃ良いだろう。
……ってか、人型から遠い魔人やモンスター娘は、基本的に、念力の魔法が使える。問題はないだろう。
それと、戦士にもしておいた。
特にサンダーバードは強力だ。
対人戦において、雷を落としたり、放電したりする上に空も飛ぶとなると、対人鎮圧兵器になる。
ちゃんと加減もできるらしく、静電気程度から雷くらいまで調節ができるので、普段は街のパトロールをやらせて、問題があればスタンガン程度の電気で鎮圧するように指示。
因みに、頭はそんなによろしくないとは本人達は言うが、何とか基礎的な物理学を教え込んだところ、電熱で焼き切る、電磁力で鉄の塊を飛ばすなどの工夫が見られた。
特に、人力レールガンは高威力で、下手をすればフェンリル族よりも火力が出る戦略兵器としても使えるだろう。
他のハーピィ系にも物理学を教え込んだら、ガルーダやフェニックスはより熱い炎を、フレズベルグはマッハを超える速力を出せるようになった。
そう、それと、ハーピィ系の最大の特徴は、飛行能力だ。
なので、それを活かして、輸送や輸出入をさせる。
話を聞いたところ、並のハーピィで最高時速は200km近く。上位種なら800km、最速のフレズベルグなら1500kmを超えるそうだ。
それで六時間から十時間程度は飛んでいられるとのことで、まるで飛行機だな、とは思ったね。
積載量は100kgくらいだが、そこは、アイテムボックスの魔法を無理やり覚えさせ、数トンまで拡張。
これで、輸送や輸出入をやらせる。
一般的なハーピィには、街の中での宅配や、人を乗せて飛ぶタクシー的なものを。
上位種なら、それに見合う仕事。例えば、火が操れるなら、風呂焚きを。
航空距離が長いものは外国への輸出入をやらせる。
それ以外にも、コボルトやワーウルフに混じって農作業をやる奴もいる。
……ここ一年で、レムリアの人口はさらに増えた。
戸籍を作るように指示してあるが故に、人数は把握しているが、爆発的な人口増加だ。
何でも、この辺りの地方中に、獣人の楽園があるという噂になっているらしい。
楽園、と聞いて首を傾げたが、この世界の文明レベルは中世。まともな仕事があり、酒が飲め、肉が食え、少しの賭け事などが楽しめる時点で楽園なのだとか。
俺の主観だが、ワーキャットやワータイガー、オセロット、ピューマ、グリズリーなどの肉食風(実際には雑食だが)の魔人やモンスター娘の集まりが良い。
現段階で二、三千万人程だろうか。ハーピィ系をプラスして四千万くらいか。
このままの調子で入植者が増えると、十年後には数億を超える見通しだ。支配領域は、ロシア側に伸ばす予定。
この世界の基準では、大国だ。隣のガリア皇国よりずっと大規模だろう。
ガリア皇国は、あっても旨味がないな、そのうち潰すか?
そんなことを考えながら、ハーピィ系を入植させる。
「サンダーバードは一番街、フェニックスとフレズベルグ、ガルーダも一番街で良いだろう。ハーピィは三番街だ。他は二番街に」
「「「「はい!!」」」」
街の住人に案内させる。
一番街は最上位種、二番街は上位種、三番街は通常種、というように分ける。
……都市計画などはできない、とは言ったが、元の世界では、世界中の都市を飛び回ったビジネスマンだ。
ん?戦争もビジネスだぞ。
その上、戦略的に攻め辛い都市ならば計画できる。
更に、元から、人口が爆発的に増えることを予想して、大きく街や田畑を広げていたし、その他諸々の計画から、土地は広めに取っておいてある。
その土地に、ハーピィ系の家を建てていく。
「凄い凄ーい!」
「うきゃー!」
「建物が生えたよー!」
ハーピィ系は、知能が低く見えるが、単に子供っぽいだけで、読み書きや簡単な計算くらいは覚えさせられることが分かった。
むしろ、フェニックスやフレズベルグは、魔法を使いこなす上に知能も高いことが分かった。
その上、念力の魔法が上手い。
俺も使えるが、ハーピィ系の上位種は人間の手足並みの精度で念力を使える。
つまりは、ものの規格を、人間のものに統一しても問題がないということだ。
ドアノブも回せるし、スプーンもペンも使える、本も読めるし、当然着替えもできる。簡単な料理もだ。流石に銃は撃てないそうだが。
つまり、両手が使えない障害者のように思う必要はないのだ。
これは非常に楽だな。
俺が出せる物品は大体が人間の規格のものだからな。
要するに、労働力として考えていいということ。
次に、気候の問題だ。
この辺りは寒くないか、と聞いて回ったところ。
「?、寒いの平気ー」
「暑いのも平気」
「じめじめは羽が湿るから嫌ー」
とのこと。
……こいつらはメルキア、そう、大体メキシコ辺りに住んでいたが、元々、発祥の地がどこかは分からないらしい。定期的に住処を変えて生きてきたそうだ。
基本的に、そこらで人間や原住民にちょっかいを出して、怒られて、あわや討伐というところで逃げ出す……、そうやって生きてきたらしい。
蛮族だな。
「いいか!人からものを奪ったり、命じられていない暴力を振るったりしないことだ!守れないものには罰則、最悪の場合は殺す!」
「「「「はい!!」」」」
「法律を守って、他人に迷惑をかけなければ、この地に永住することを許そう!!」
「「「「はい!!」」」」
全く、疲れるな。
しかし、人間の領域で悪さをしてきたハーピィ系を入植させるということは、人間側の敵愾心を煽れて良いなァ?
ククク、どう思うんだろうな?
悍ましい人外共が徒党を組んでいると知った人類は、どう出るんだ?えぇ?
因みに、サンダーバード共はどうも味覚がアレらしく、唐辛子を育てさせたら大喜びだった。
そして、タコスが人気。
エログロが書きたい!