「貴女……、アヤカシなの?」
「いいえ、ジュラ娘ですよ?」
私を閉じ込めている部屋の扉を、あっさりと開いたのは、ケモノの耳が生えた女だった。
十六歳くらいの大人で、茶髪のショートカットで、首に赤いスカーフを巻いている。
服装も、ノーブルのように白く美しい。
もしかして、この人もノーブルなのかも……?
「スミだったかしら?私をどうするつもり?」
「食事の時間なので、食堂に案内しようかなと」
『食堂』……?
よく分からないけれど、食べ物をくれるらしい。
攫われてから丸一日、食事をしていなかった。お腹が減っている。
その申し出は助かるわね。
「な、なな、何よこれ?!!」
百人を超える武装した女!
これ全部、ミリタイなの?!
これだけの兵力があれば、シティにも、勝てないまでも抗えはするかも……?!
だからあの男は、あんなに態度が大きかったのね!
それにこのキカイの乗り物も凄い。壁を壊そうと叩いてみたけど全然ダメだったし、多分、ハガネでできているはず。
ハガネのキカイと百人のミリタイがあれば、シティにも逆らえるかも……?!
それにおかしいのは、食べ物も!
リョーショクじゃない、まともな生の食べ物だ!
シティでも上位層の私達くらいしか食べられない『クサハナ』や『ケモノ』の肉を、百人分も!
それも、一品だけじゃなく、異なる種類のものを複数!
あり得ない、こんなの!
「今日はオムライスと、玉ねぎのスープにポテトサラダですよー。デザートはアップルパイです」
「あ、ありがとう」
「飲み物はセルフサービスだから、欲しければウォーターサーバーから汲んできてね」
「え、ええ」
水が、好きなだけ……?!
「んっ?!!!」
そしてこの食べ物!
信じられないくらいに美味しい!
甘くて、しょっぱくて、味が濃い!
「貴女達は、こんな凄まじいものを普通に食べているの……?!」
「いえ、今日はちょっと……」
「そ、そうよね!今日は何か、特別な日なのよね?!」
「え?いや、その、今日はちょっと手抜きの日なんです。いつもはもっとおかずが多いんですけど、今日は移動中の食事なので……。普段は、お外に天幕を張って、みんなでバーベキューしたりするんですよ!」
………………は?
これで、手抜き?
「バーベキュー、って、何……?」
「あ……、そうでしたね。この世界は貧しいんですよね……」
貧しい……。
ノーブルの、私が?
「ノーブルを貧しいと見下せるくらいに、良い生活をしているの?!」
「あっ……、その!違うんです!貴女達のことを見下している訳じゃなくて!」
「……良いわよ、別に」
馬鹿なの?こいつ。
良い子ぶって、ムカつく……。
「そ、そうだ!ひみつきちの中を見て回りましょう!面白いものがたくさんあるんですよ!」
下手に気を回す、スミとかいう女。
子供をあやすような言い様!
気に入らない!
「先生に怒られるので、奥は見せられませんけど、シャワーを浴びて映画を見るくらいなら大丈夫です!さあ、行きましょう!」
それから私は、溺れるほどの水を浴びて身を清めて。
不思議な、キカイを使った娯楽を楽しみ。
甘い食事を楽しみながら、接待されていた……。
けれど、そのどれもが私には気に入らない!
全てが、今まで私が最高だと思っていたシティのノーブルの生活を馬鹿にするかのような、凄まじい快楽快感だったから!
考えられる?
飲めるような清らかな水を、床にぶちまけるようにして全身で浴びる!
マネーをばら撒くよりもよほど恐ろしい、シティのノーブルにすらできない究極の贅沢!!!
そして、舌が痺れるほどに甘い食事を食べながら、恐らくはとんでもないエネルギーを消費しているのであろうキカイを、娯楽のために使う!!!
……頭がおかしくなりそう。
何、この、信じられないくらいの豊かさは?
私がそうやって落ち込んでいると……。
「あ、あー!そうだ!私の特技を見てください!ほら、この紙切れが……、しゅぱっと!切り絵になりましたー!」
と、スミが何かをして、目の前のひらひらした何かを切って、ケモノの形にした。
切った?
どうやって?
「今、何を……?」
「興味ありますか?!私は実は、『切断』の力があるんです!この力で、手を触れずともものを切り裂けるんですよ!面白いでしょ?!」
必死に私を楽しませようと変なことをするスミだけど、私はそれを聞いて驚きと……、嫌な予感を感じた。
「貴方……、『スペリオル』なの?」
「へ?スペリオル……、ですか?」
「超能力を持っているのかって聞いてるの!」
「超能力……?まあ、そう言われればそうですかね?私達はこの力を、『ダイノ・フェノメノン』と呼んでいるんですけど」
私、『達』……?
まさか。
まさか、まさか、まさか!!!
「他にも、超能力持ちがいる、の?」
「他、と言うか……。私達ジュラ娘は全員、『ダイノ・フェノメノン』を持っていますよ?」
こいつら!
こいつら全員が、『スペリオル』だ!!!
なんてこと……!
そりゃあ、あの不遜な男が調子に乗るのも、私をいつでも殺せると平気な顔をして言うのも当たり前!
超能力使い、『スペリオル』が百人もいれば、シティも落とせる!!!!
休日を生贄に捧げ、プログラマ転生を10話書いた。
僕の休日返してください!