ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ああーう。


23話 とあるエキドナ族の供述

私はエキドナ族のとある学者よ。

 

教授をやっているわ。

 

研究の成果を年に最低一度は発表して、論文を書き続ける限り銀貨十枚、講義をすれば更に銀貨五枚、毎日手に入るわ。

 

それに、発明品を売るともらえる「特許料」と言うシステムと、本の売り上げなんかで、日に金貨数枚分稼げる学者もいるわ。

 

「教授、予算申請通りました」

 

あら。

 

まあ、こんなに?!

 

こ、これは、王様のサイン……。

 

『列車の研究は実にいい。物流は我々を豊かにし、支配領域を広げるだろう。我々の更なる発展の為ならば、エデンは出資を惜しまない。これからもその叡智を我々の為に役立てて欲しい』

 

ああっ!

 

なんたる名誉!

 

私の研究が王様の目に止まるなんて!

 

その上、白金貨五十枚分の莫大な予算!!

 

その上列車とレールの見本までくれるだなんて!!

 

あ、白金貨は金貨百枚分の価値がある貨幣ね。最近、急遽作られたわ。

 

さて、これなら、試作品の仮組みだけじゃなくて、本体の正式採用版も作れるし、換えのパーツも作れる!

 

軽く試算したところ、レールも1000km分は作れるわね!

 

十年、いや七年で列車を実用化するわよー!

 

 

 

私の通勤している学院は、四番街の第八学院。工学系の学院よ。

 

この辺は敷地が広くて、大きな音を立てても苦情が来ないの。

 

逆に芸術や考古学、文学、哲学の学院は、人の沢山いる首都の方にあるわ。

 

芸術家は今、安くなった紙と、画期的な発明「鉛筆」によって、沢山の絵を描けるようになり、全体のレベルが上がっているらしい。

 

他にも、王様が持ち込んだ楽譜という、音を記号に直す発明により、自らの曲を紙に残せるようになったわ。

 

更に、王様の故郷である異界の楽譜も提供され、芸術界隈は大いに盛り上がっている。

 

考古学は、各国に調査をしに行くための資金提供、人に化ける魔法を教えてもらうことができるようになり、沢山の考古学者が世界を飛び回っている。

 

文学は、やはり紙の大量生産と活版印刷の普及により、沢山の詩集や小説が、かなり安い値段で手に入るように。

 

また、王様の持ち込んだ文学の評価も高い。

 

哲学も発展し、生活に余裕ができた私達は真理を追求することにより一層力を注いだ。

 

ここでもまた、王様の持ち込んだ哲学の思想も議論された。

 

その他にも医学も急速に発展してきているわね。

 

今までに、腹を斬り裂いて臓器を切り貼りし、患部を切り取り病気を治す、なんて考えは異端だったわ。

 

王様は人間だから、人間のデータしかないけれど、多くの魔人やモンスター娘は、人間に近しい肉体や臓器構造を持つの。

 

だから、王様の持ち込んだ膨大なデータを基に、製薬、人体実験などが行われているわ。

 

もちろん、人体実験に使われるのは重罪人や死体よ、安心して。

 

それにしても、ほぼ不治の病とされていた労咳を治す薬だなんてね。それだけでも大発明よ。

 

もちろん、工学業界も大盛り上がりなんだから。

 

王様に見せてもらった車!列車!飛行機!船!あれを再現するのが私の研究目標よ。

 

いずれは全世界に私達の作った列車を走らせるの!

 

王様はそんな私の夢を後押ししてくださったわ!

 

何て素敵な方なのかしら!

 

最上位種のドラゴンを捩じ伏せるくらいにお強い方なのに、その上に叡智と美しさも兼ね備えているんだから!

 

 

 

さて、と。

 

それじゃあ講義をしようかしら。

 

二時間の講義よ。

 

ラミア系に向けて、私の知り得た、理解したことを話すの。

 

他にも、私が講義を受けに行くこともあるわ。もちろん有料だけれども、大変興味深い講義をしているところもあるんだから。

 

はぁ、良いわねぇ。

 

昔みたいに、食料の確保だとか、村に攻め入るモンスターや人間の相手だとか、村の仕事だとか、そう言う些事に煩わされなくって良いんだもの!

 

今では、お金を払えば、貴重なはずの卵だって好きなだけ食べられるし、防衛隊がいるから自ら戦うこともないし、インフラは整備されて、身の回りの世話は雇ったメイドがしてくれるんだもの。

 

私達はただ、毎日学院で好きな研究をして、たまに講義をして、後は好きに休めば良いの。

 

控え目に言って最高の生活よ!

 

 

 

はい、講義終わりっ!

 

うーん、今日は沢山の生徒から質問責めにあって、疲れちゃったわね。

 

今日は早めに切り上げて、休みましょう。

 

さて、お昼は、と。

 

……エデンでの料理は、米もしくはパンを、香辛料を沢山使ったカレー、つまりはスープに浸して食べる、という形が一般的なの。まあ、私みたいに懐に余裕がある人は、これに野菜料理と肉料理もしくは魚料理を追加するのが普通ね。

 

あ、そ、そのね、私達ラミア系って、身体が大きいでしょう?だからお腹が空いちゃって。リザードマンみたいな他の爬虫人と比べて、二倍三倍は食べるわね。

 

いやん、恥ずかしいわぁ。

 

でも、ドラゴンとかその他の魔人、モンスター娘の上位種みたいな、多くの魔力を持つ種族や、身体が大きい種族は、どうしても食事量が多くなりがちよ。

 

まあ、エデンの料理が美味しいってこともあるんだけどもね!

 

さあ、行きつけの飲食店に入って、と。

 

ここ、値段の割に美味しくて、ラミア系向けに卵も用意されてるのよ。

 

なによりラッシーの味が好みで、肉料理も美味しいのよ。全体的に若者向けね。

 

まあ?私も?まだまだ若いし?まだ五百歳だし?全然イケるし?

 

値段、は、銅貨五枚でパンか米、それとカレーと呼ばれる汁物が出てくるわね。これが一番安いもの。

 

私は、銅貨二十枚分は食べたいから、ナンと呼ばれる薄く焼いたパンに、複数種類のカレー、ビリヤーニーという具材とご飯を一緒に炊いたもの、そして肉料理にケバブ、それとアチャールと言うピクルスを頼む。

 

「ラミアのお客さんは沢山食べてくれるんで助かりますわ」

 

店主に言われる。

 

うふふ、そう?

 

この時の飲み物はラッシーという、発酵させた牛乳に砂糖を入れた飲み物。

 

これが美味しくてね……。

 

香辛料で辛めに味付けされた料理の最中に、この甘酸っぱいラッシーを飲むと、辛さが中和されて、もっと食べたくなるの。

 

ああ、やめられないわ〜!

 

 

 

帰りに、本屋に寄って、本を買う。

 

あらやだ、ランスヘッド先生の新作じゃない!買いね!

 

後は私、週間の新聞と、雑誌も何冊か購読してるわ。

 

新聞はねえ、今週の初めに読んだけれど、まあ、主に広告と、世の中の出来事がメインかしら。

 

今回は、そうね、この辺りを荒らし回っている盗賊が捕まったって聞いたわ。それと、レムリア産のウォッカとビールの宣伝とか。

 

雑誌は……、「月刊四番街」と「ラミアの巣」、「月刊エデン」ね。

 

月刊四番街は情報誌で、新聞の内容をより掘り下げたものや、四番街の学校の著名な発明についての概要なんかが書いてあるの。

 

ラミアの巣はラミア系女性向けの女性誌で、美味しい卵料理のお店や、人気の服なんかについて書かれているわ。

 

そして、月刊エデンは、エデン全体の情報誌。売れ筋の本なんかについて書かれてるわ。

 

さて、今日は残りの時間は、読書して過ごしましょう。

 

 

 

うーん、やっぱりランスヘッド先生の小説は良いわねー!

 

細やかな恋愛描写、心の機微……、そして、愛とは何かという哲学的な問い。更にエロス。興味深いわ。

 

っと、紅茶が。

 

「どうぞ、ご主人様」

 

うふふ、ありがとう。

 

うちで雇ったリザードマンのメイドよ。

 

リザードマン……、正確にはリザードメイドかしら。この子、女の子だしね。

 

気が利いて、紅茶を淹れるのが上手い子よ。

 

紅茶には高級なはずの白い砂糖を多めに入れて、ミルクも入れて楽しむのが私の流儀ね。

 

因みに、人間の街では、砂糖は金銀と同じような値段で取引されるらしいわ。

 

レムリアでもエデンでも、香辛料や胡椒、砂糖は、銅貨でやり取りされるくらいには安いけれど。

 

国力の差、かしらね。

 

それと私はこれね、大麻。

 

煙草でも良いのだけれど、こっちのほうが「気持ちいい」わ。

 

元々、薬草を焼いて、その煙を吸うという文化は、ラミア系では一般的だったのだけれども、最近の検査では、それが極めて有害だったりと判明したの。

 

だから、よりクリーンな大麻や煙草が流行り始めてね。

 

ああ〜、これは良いわぁ、最高よぉ。

 

ふわっとした気持ちのまま、好きな本を読んで、紅茶の香りと風味を味わう。

 

これが爬虫人の贅沢よ。

 

ああ〜。

 

さいこぉ、これぇ……。

 




殺戮シーン書きたいのに……。

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