ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ハーピィの無精卵食べさせられたい。


24話 とあるリザードマン族の供述

俺は爬虫人の国、エデンに住む、とあるリザードマン。

 

どこにでもいる、ありふれたリザードマンだ。

 

エキドナの学者様やドラゴンの将軍様と比べれば、幾らでも替えのきく、凡人凡夫さね。

 

それでも。

 

それでも俺は、この生活をくれたエデンに、偉大な王に感謝している。

 

エデンができる数年前の生活がどんなもんだったか分かるか?

 

昔は、リザードマン達はな、洞窟やらあばら家やら、薄汚い家に住んで、石の穂先がついた投げ槍を投げて、獣やモンスターを狩って暮らしていたんだよ。

 

そりゃあ、悲惨だったぜ。

 

住処はガタガタで、大雨や風の強い日は、家が壊れたり崩れたりしちまうんだ。

 

そんなところに住んでると、それで寝てる間に水浸しになったり、酷い時は崩れた家に押し潰されて死んじまったりするんだ。

 

身体が脆い年寄りや子供なんかは、それでよく死んだぜ。

 

それで、狩りをやって生きていたからな。

 

狩りだぜ、分かるか?

 

その他にも、木の実を集めたりなんかはしてたが、主な食い物は狩りの獲物だ。

 

だから、獲れねえ日は食えねえ。

 

惨めなもんだぜ、テメエのガキすら腹一杯にしてやれねえんだからよ。

 

飯が食えねえで死んだやつだって、何人もいる。

 

ガキ共が言うんだ、お父さん、腹が減った、腹が減った、ってよ。

 

それに応えてやれねえ親の気持ちが分かるか?

 

水も泥水で、下手をすりゃ腹を悪くする。

 

それだけじゃなく、モンスターの被害もある。

 

村にはちょくちょくグレートアリゲーターやらヴェノムヴァイパーやらが現れやがる。

 

しかも奴らは狡猾で、弱い女子供から狙ってくるんだ。

 

ギガントタートルなんか来たらもう終わりだ、村を捨てなきゃならねえ。

 

昔、俺の住んでいた村がギガントタートルの通り道になったことがある。

 

あの時は、村の男達がギガントタートルを引き付けている間に、みんなで逃げるしかなかった。

 

俺の親父は、その時にギガントタートルを引き付ける役を買って出て、それから、二度と戻っては来なかった!

 

……それがよ、今は凄えもんだ。

 

石で作られた丈夫な家は崩れる心配はねえ。

 

見てくれも立派で、清潔だ。

 

もし壊れても大工がいる。

 

食事も美味いし、栄養がある。

 

カレー……。

 

香辛料をふんだんに使ったそのスープには、野菜や家畜の肉が使われている。

 

こんなに美味いもんは他にない。

 

野菜なんてもんは食ったことがなかったが、そこらの草と違って仄かに甘く、滋味豊かだ。

 

家畜の肉も、ここらのワニやモンスターの肉とはまた違った旨味があり、脂が乗っている。

 

それと、穀物でできた色々なパンや米。

 

いつだか王様が言っていた、炭水化物と呼ばれるそれらを腹一杯に食べると、体力が体の底から湧いてきて、バリバリ働けるんだ。

 

水だって、水道のおかげで澄んだ水が飲める。

 

そして、軍隊ができたから、モンスターは街に入ってこれずに殺される。

 

最高だ。

 

最高だよ。

 

お陰でガキ共は飢えることがなくなったし、安全で清潔で、安心できる場所に住める。

 

そして、誰より強い王様に支配していただけるんだ。

 

こんなに幸せなことはない。

 

 

 

今の俺は本屋の店員だ。

 

うだつの上がらない狩人の一人じゃない。

 

もう、狩りをする必要は、ないんだ。

 

朝、起きる。

 

朝の鐘は毎日決まった時間に鳴るから、それを目安にして起きる。

 

妻がぐずるガキ共を起こす。

 

朝飯の時間だ。

 

メニューはもちろん、エデンの国民食、カレーだ。

 

揚げたパン、プーリと共にカレーを食べる。

 

今日のカレーはジャガイモのカレーだ。

 

この芋は本当に美味いんだよな。少し甘みがあって、ホクホクしてて。

 

腹にたまるのも良い。

 

プーリとカレーを腹一杯食うと、俺は仕事に、まだ小さいガキ共は遊びに、妻は家事をやる。

 

ガキ共は家の周りで遊ばせてやる。

 

まだ四つだからな。

 

それに、今は、子供を働かせなくても良いくらいには余裕があるんだ。

 

もう少し大きくなったら、文字や計算を教えてやって、そこらの店の手伝いなんかやらせようと思う。

 

まあ、まだ分かんねえよな。

 

もしかしたら、軍人になりてえって言うかもしれねえし、商人になりてえって言うかもしれねえ。

 

その時は、信頼できるところに預けてやらねえとな。

 

それと、妻は家事をやる。

 

掃除と洗濯、料理をするんだ。

 

その他にも、工場で働いてくれている。

 

うちは子供が五人いるから、妻も一緒に働かなきゃ少し厳しい。

 

だが、仕事自体は成果が出るか分からない狩りや木の実集めよりはマシだ。

 

ずっとずっと、マシだ。

 

 

 

仕事場に行く。

 

エデンの道はかなり広い。

 

ラミア系の、デカイ体の種族に配慮してのことだ。

 

出店や屋台がある上で、更に横幅が広い道。

 

一時間くらい歩いて、店に着いた。

 

俺の仕事は本屋の店員。

 

まずは店長に挨拶する。

 

店長は、メリジューヌの女……、いや、メリジューヌはそもそも女しかいない種族だ。

 

羽根付きラミアだが、そう言うと酷く怒る。

 

おはよう、店長。

 

「あらあら、貴方ね。おはよう、今日も頑張るのよ」

 

まあ、怒らせると限りなく面倒な人だが、基本的には優しげな人だ。

 

逆鱗に触れないように慎ましく、真面目に仕事をする。

 

仕事の内容はなんてこたあない。

 

読み書きと、簡単な計算ができれば、誰にだってできる仕事だ。

 

でもまあ、俺は爬虫人が話す龍語(王様が言う所のドイツ語)を少し読めるんだ。昔、村の長老に習ったことがあってな。

 

論文などは、龍語で書くことを義務付けられているから、龍語の本も多い。だから、龍語が読めると書店員として重宝される。

 

俺の給料も、銀貨一枚のところ、龍語が読めるからそれに上乗せしてプラス銅貨五十枚もらえる。

 

他にも、獣人の話す獣語、人間の話す人語、エルフの話すエルフ語、ドワーフ語、悪魔語、虫人語、麗国で使われる麗国語、ジパングで使われるジパング語などがある。

 

王様はそれらを、それぞれ、ロシア語、英語、フランス語、ポルトガル語、アラビア語、スペイン語、中国語、日本語と呼んだ。

 

そしてその全ての読み書きを可能だ、とも。

 

王様は強いだけではなく、賢い。

 

そして、王様は、魔人やモンスター娘の為の言語、魔族語を作り、文字や発音の勉強をさせている。

 

魔族語……、王様の言うところのラテン語は、王様が世界中を周りながら広めているそうだ。

 

何故、新しい言葉と文字を覚える必要があるのかと言うと、共通の言葉があると便利だからだそうだ。

 

いずれ、他の国に人々が行き来して、違う国の人々同士が話し合って、友人になれる世界が来ると王様は言っていた。

 

これは、それに向けた教育だ、と。

 

俺達は難しいことは分からないが、王様がそうあれと思うのであれば、俺達は従おう。

 

 

 

昼、またカレーを食べて、品出しして、会計して……。

 

そして、五時の鐘が鳴る頃には仕事が終わる。

 

店長に挨拶して、店を閉める。

 

「はい、今日のお給料」

 

店長に給料をもらって、家族のいる家に帰る。

 

夜道でも、警邏がちらほらと。

 

この街は、安全だ。

 

ただいま。

 

「おかえりなさい」

 

ドアを開けた瞬間、漂うカレーの匂い。

 

それと、肉の匂いだ。

 

「今日は鶏肉が安かったから、タンドーリチキンもあるの。ちょっと奮発しちゃったわ」

 

おお、それは良い!

 

グリーンピースとマッシュルームのカレーに、タンドーリチキン。それと茹で野菜もある。

 

ガキ共と一緒に、いただきます。

 

ナンを千切って、カレーの具を掴むように浸す。

 

あむ……。

 

うむ、やはりこれだな、スパイスが効いていて最高だ。

 

それと鶏肉も……、おお美味い。

 

野菜も良いな、甘いんだ、これが。

 

食後は、パイナップルを摘みつつ、家族と今日あったことについて話し合う。

 

この時間が何より好きなんだ。

 

心が安らぐ。

 

「父ちゃん!それでね、俺はね!」

 

ああ、ああ、聞いているぞ、息子よ。

 

 

 

明日は休日、か。

 

好物のコーヒーを味わいながらも、本を読んでゆったりと過ごすつもりだ。

 

夜には知り合いと飲みに行くのも良いかもしれんな。

 

楽しみだ。

 




殺戮シーンをじっくり書きたいのだが。

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