さて、レムリア、エデンの改革と並行して、ウーノの国を改革する。
「私の国はヴィエラと言ってな、ケンタウロス系やミノタウロス、サテュロス、ワーディアー、ジャッカロープ、アルミラージ、カーバンクルなんかが住んでいるんだ」
「そうか。国名は変更する」
「あ、ああ。それで、近隣には聖王国とスパシア、ガリアがあってな。ガリアはまだしも、聖王国とスパシアは反魔人国家だ」
「スパシアは潰す」
「そ、そうか。海を挟んだ先の半島にもノルヴァという反魔人国家が」
「潰す」
「ほ、本当か?」
「これが十年後の予定支配領域だ」
スペインからギリシャ、現レムリアであるウクライナの隣辺りまで、ヨーロッパ全域を支配領域とする。
「な、ななな!こ、こんなにか?!私の代でこんなに支配領域が広がるのか?!」
「そのうち聖王国も獲る」
ヨーロッパってかユーラシア大陸、オーストラリア大陸、アフリカ大陸は魔族のものにする。
北アメリカと南アメリカでは、人間を養殖しようと思う。
適度に調整して、増えてきたら戦争させる、ようにする予定だ。
こっちの大陸を平定したら、百年ごとくらいのペースで人間の国に攻め入ろうと思う。
楽しそうだろ、虐殺パーティー。
「さ、て、と」
まあ、ある程度の文化はあるようだ。
簡単な酪農、農業、製鉄と一通りはやっているようだ。
「まずは指導権を手に入れるぞ、ついてこい」
「あ、ああ」
王城に乗り込む。
「!!、ウーノ様だ!」
「ウーノ様がお帰りになられた!」
「伝えてこい!」
無視して侵入。
「き、貴様!ここがどこだと」
射撃。
安心しろ、ゴム弾だ。
俺だって馬鹿じゃない。これから支配しようって国の住民を無闇矢鱈に殺すかよ。
「がぁっ……」
「な、なんだと?!くっ、衛兵!増援をぶぇ!!」
射撃。
「あ、あのだな、うちの民を傷つけるのは」
「殺してはいない」
さあ、進もうか。
そして玉座へ。
ユニコーンの王に拳銃を突きつけ、宣言する。
「今日から俺がこの国の王だ」
「なんだと?!」
「貴様!」
「王の御前であるぞ!」
俺はギャラリーにフラッシュバンを投げ込む。
すると、総崩れ。
皆、頭に手をやり、蹲った。
「今日から俺がこの国の王だ」
「む、むう」
「お父様、彼は私の婿殿です。将来的には王になる資格が」
「し、しかし、今はいかん。隣国のポルトランドが攻め入ってくるという情報があってだな」
この国はドイツとフランスの一部を合わせたような領域が領土。
スペイン、イギリス、ポーランドは敵国らしい。ついでにノルウェーやスウェーデンも。
イタリア辺りは友好的だそうだ。
で、今は、ポルトランド即ちポーランド辺りが攻めてくる、と。
プロジェクターにポルトランドの王城を映す。
「これがポルトランドの現在の映像だ」
「えい、ぞう?儂は今、ここからポルトランドを見ているということか?」
「そうだ。物分かりが良いな。それで、ポルトランドが……」
さっき撃っておいた弾道ミサイルが王城に複数発突き刺さる。
そして爆発。
「……な」
「このように、更地になったら、どうだろうか?」
「……こ、れは、本当の出来事なのか?作り物ではないのか?」
「ポルトランドは反モンスター派の人間国家だ。潰しても問題ない」
「こんな、ことが……。神の雷、か……」
「民よ!聞け!!近年巷を騒がせるポルトランドとの戦争だが、なくなった!何故か!ここにいる諸君らの新たな王、ジン様が、神の雷を以ってポルトランドの王を壊滅せしめたからだ!!」
民を集めて演説。
前王にしてウーノの父アルブムは演説の才能があるようだ。
俺も演説。
あらかじめプリントアウトしておいた現在のこの国の支配領域と、将来的な支配領域を図で表した紙をばら撒く。
文字はあまり書いていない。どうせ読めない奴が殆どだろうしな。
「こ、こんなに支配するのか?」
「国土が倍以上になるのか」
「そんなことできるのか?」
疑問の声が上がる中、更に俺は叫ぶ。
「貴族の権利を縮小し、あくまでも行政人という立場にする!更に、民には読み書きや計算を教え、囲い込みにより農地を整備し、平民の生活の質を向上させる!四輪農法により、収穫量も増やす!」
「本当か?」
「なんだそりゃ」
「読み書きを?」
「新たな国の名は『アルカディア』!!この国は豊かになるだろう!!」
騒めく聴衆を無視して、仕事を始める。
国の改革など、一人でやるならば、十年単位での時間が必要だろう。
だが、こちらには、いくつもの反則技がある。
「上級魔法、アバタークローニング!!」
膨大な魔力を用いて、百万人ほどに分身する。
それぞれが国中に散って、あらゆる分野に助言をする。
西では、囲い込みで入り組んでいた畑の所有権を測量して変更、そして四輪農法の施工。
四輪農法とは、大麦、クローバー、小麦、株のように、四種類の作物を交互に育てることにより、一年中作物を得られ、結果として家畜を年中維持できる、というものだ。それと、ハーバー法だな。水と空気と石炭からパンを作るとは伊達ではないな。
東では、女達に料理を教え。
驚いたのは、女のミノタウルスやサテュロスは妊娠していなくても、一定の年齢に達すれば母乳が出せるということだ。
味見したが、それぞれ牛乳、羊の乳に似ていて、それよりも質がいいことが判明した。
北で読み書き計算を教えて。
知能は人間並。年内に読み書きと計算は覚えられるだろう。
南で反乱した貴族を皆殺しにし。
正確には俺は殺していないが。捕まえてエデンに送って、人体実験させる。命は貴重な資源。
まあ、そうやって、国中を回った。
俺は建物の多くを建て直し、インフラを整備し、当面の食料も支給した。
つまり、改革において、変化の最中の不安定な時期が存在しないのだ。
そうなると、国民は反対することなく変化を受け入れる。
農地の囲い込みで区画が整備され、手持ちの畑がなくなったり小さくなったりして溢れる人員は、職業訓練の後、商人などへ。
それでも余る国民は、先日滅んだポルトランドを占拠したので、そこに入植させる。
それとついでに、元ポルトランドの西辺りに、新王城を建てた。モデルはサンタンジェロ城。
元から一億人を超える人口のあったこの国は、人口が溢れ気味だったらしい。
余っている人材は新王都に連れて行く。
さて、あと数年もすれば、他国に売る程の食料自給が可能だろうし、家畜も増やしてやった。
住むところやインフラも整え、職業訓練もしている。
レムリアのように学校の設立もした。
貴族を名乗るものには特に色々学ばせる。
それと、国営のギャンブルも。
娯楽は大事だ。
内容はケンタウロスの競馬とミノタウルスのレスリング。
そして国営の酒造。
ワインやブランデーを作ることに。
森も多いので、樽の素材が重要なウイスキーも作ってみるか。
アルカディアでは、一次産業に力を入れていきたい。
数年後、食料自給率二百パーセントの大国になった。
あ、そうそう。
殺したケンタウロス系やミノタウルスを食べてみたが、牛馬の肉に近い味がしたぞ。
つまり、ロン毛でヒゲの野生的イケメン。