ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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寒くて死んでます。


5:初心者のよくある展開

「新入りの教導〜?」

 

「なあ旦那、そこを何とか頼むよ」

 

俺は、日課の薬草採取を終えた後、ギルドの酒場で高級コニャックを楽しんでいた。

 

無論、この世界にはコニャックなんてものはないので、地球からの持ち込みだ。

 

そこに現れたハリーが、面倒事を投げてきた、という訳だ。

 

「同郷のガキでさ、死なせたくないんだよ。どうにか頼めないか?」

 

「そう言われましてもねえ」

 

「……仕方ない!じゃあこれで頼む!」

 

これは……!

 

レリック級マジックアイテム、『狂った羅針盤』……!!!

 

「仕方ねえなあ……!仕方ねえよ、仕方ねえ……!」

 

俺はホクホク顔(無表情)でアイテムを懐に入れた。

 

「え?自分で言っておいて何だが、それで良いのか?狂った羅針盤は、特に意味があるアイテムじゃ……」

 

「いやこれ、『大海領域』とか海で使うと、海中に沈んだマジックアイテムの位置を教えてくれるんだよ」

 

「……『大海領域』で海中に行くことなんてないだろ?あそこは基本的に、飛行系のマジックアイテムで飛び越えるもんだ」

 

「いや俺は行けるから」

 

ダイバースーツ買えば良いだけ。水中用の弩もあるし完璧。

 

酸素ポンプは流石に壊れるから、水中呼吸ができるようになるマジックアイテム……『魚人のエラ』や『空気タバコ』とかが欲しくなるが、それでも海底探検は価値がある。

 

「そ、そうか」

 

ドン引きするハリー。

 

何にせよ、レリックを貰った以上、俺は働くぞ。

 

「あー、その、じゃあ紹介するぞ?こっちの髪が短い方が『テルマ』で、こっちの髪が長い方が『ルイーズ』だ」

 

「「よろしく」」

 

テルマは、赤毛をベリショにして、右目の下に蛇の刺青が入っている。この世界では刺青はポピュラーなものだ。

 

背丈も女にしては高めで、アマゾネスほどではないが身体つきがしっかりしている。

 

鉄の胸当てと斧、ラウンドシールドを装備。

 

一方のルイーズは、烏羽のような青黒い長髪に、引き締まった肉体を持っている。

 

顔つきはキリッとしていて、性格がキツそうだ。

 

ロングソードと革鎧を装備。

 

うんうん、装備はこんなもんなんじゃない?などと思いながら見ていると……。

 

「なあ、ハリーの兄貴?本当にこいつから教わらなきゃならねーのか?」

 

「そうですよ、ハリーさん。こんな、武器も持ってない運搬人に、何を習うのですか?」

 

二人の新人女冒険者は、思い切り文句を言った。

 

「おいおい……、教えただろ?サターンはこの道十年の大ベテランで……」

 

ハリーは擁護しようとするが……。

 

「はっ!『竿師サターン』がか?」

 

「皆、噂しています!実力もないのに女性の上級冒険者に取り入った悪党だと!」

 

「それに、こいつの冒険者章!十年もやってるらしいのに、下級の『鉄級』だぜ?!」

 

「こんな奴に教わることなんてありません!」

 

うーん、申し訳ないが何も言い返せない。

 

ハリーもそう思ったらしく、眉間を押さえていた。

 

「と、とにかく、サターンは凄い奴なんだよ。試しに、一度教えを受けてみろ。俺だって、サターンに教わったから今があるんだぞ?」

 

「「……はい」」

 

明らかに「不満です」と言うツラをした二人。

 

さて、どうなることやら……。

 

 

 

「じゃあ、早速行こうか。荷物だが……」

 

「うるせぇ!指示すんな!」

 

「ハリーさんの顔を立てているだけで、貴様には何も期待していない。黙ってついてこい」

 

ふーん。

 

まあ、別に良いけどね。

 

「荷物だが、攻略の期間によって量と中身を調整すべきなんだよね。アホな冒険者は適当にビスケットと干し肉だけ突っ込めば良いと思ってやが」

 

「「黙ってろ!」」

 

「いや無理。一応、形式上は仕事したってことにしておきたいから。じゃあ続けるぞ?まず、ダンジョン攻略の時に最低限必要なのは」

 

「黙れって言ってんだろ?!」

 

テルマは、俺の襟首を掴んできた。

 

だが、所詮レベル1の初心者。

 

俺の強靭な体幹は小揺るぎもしない。

 

「く、なんだこいつ!」

 

「もういいテルマ、放っておこう。勝手に喋らせておけ」

 

「最低限必要なのは、マジックアイテムや採取品を入れるための容器に、アンチドーテポーションだな。それと、非常食を一食分。非常食についてはギルド内の公式販売店からビスケットを買えば良いだろうな。アレは味はクソだが栄養面はしっかりしている。今回はどれくらいの期間潜るんだ?」

 

「「………………」」

 

「では、日帰りとして計算するか。日帰りとなると、難度1〜3程度の草原領域で薬草採取がちょうどいいはずだ。採取用の鎌や湾曲したナイフを持っていけ。何故かと言うと、薬草の薬効がある部分は葉の方で……」

 

「……テルマ、良いか?」

 

「おう」

 

「「せーの!」」

 

あ、走り去っていった。

 

 

 

「はあ、はあ、はあ……」

 

「こ、ここまでくれば、追いつけまい」

 

ダンジョン内、草原のど真ん中でへばる二人。

 

「———『逃げる』というコマンドは、実際かなり有用だ。『勝てない、殺されてしまう!』以外にも、『こいつを相手しても旨みがない』と言う時には、割り切ってさっさと逃げた方がいい」

 

「「で、出たぁ〜?!!!」」

 

お化けかな?

 

「お、おおっ、お前!何で、アタシ達の『前』から出てきたんだ?!」

 

「そ、そうだ!一体、いつ私達を追い越した?!」

 

いや普通に転移魔法で……。

 

……まあ良いや。

 

「まあその辺は良いじゃん?それより、ダンジョンの話をしよう。お前らはここを、単なる草原かと思っているかもしれないが……、ここは紛れもなく『ダンジョン』の中なんだよ。油断して良い訳じゃない」

 

「う、うるせぇー!そんなのは分かってんだよ!!!」

 

「いや、分かってない。現に今、お前らはモンスターから奇襲されている訳だ」

 

「は?何を言って———」

 

その瞬間、地面から顔を出した大みみず……、ジャイアントワームに足を食いちぎられたテルマ。

 

若い女特有の、張りのある太ももが、ぱつんと弾ける。

 

「い、ぎゃああああっ!!!」

 

いきなりの激痛に、女とは思えないほどの悲鳴を上げて、武器を取りこぼし蹲るテルマ。

 

「いだぃ、いだあ"あ"あ"……!!!」

 

ジャイアントワーム。その名の通り、巨大なミミズだ。

 

長さは2メートル、太さは人の腕ほどの大きな管虫。しかしミミズとは違い、回転する鋭利な口舌は、人間の肉くらいなら容易に抉り取る。

 

「ぐ、来るな!ぐるなぁあ"!!!」

 

穴の空いた太ももからの出血を抑えつつ、恐怖に歪んだ顔で後退りするテルマだったが、複数のジャイアントワームに群がられて……。

 

「いぎっ?!!ぎゃあああああああああ!!!!!」

 

そのままテルマは、複数のワームに貪り食われる……。

 

柔らかな腹部に、何匹ものジャイアントワームがのたうつ。栄養がある『中身』に入って食らい尽くすのが、虫系のモンスターというものだ。

 

「テルマっ!!!」

 

急いでルイーズがロングソードを抜くが、もう遅い。テルマは死んだ。

 

手近なワームに斬りかかるが……。

 

「クソッ!弾かれた!」

 

角度が悪く、ワームのブヨブヨの皮膚に刃を弾かれた。

 

ワームの方も、のろまで、攻撃はルイーズに殆ど当たらないのだが……。

 

「ああっ!何で!何でぇ?!一杯練習したのにぃっ!!!」

 

死への恐怖で刃が鈍り……。

 

「毎日頑張ったのに!何で?!斬れない、斬れないよぉっ!」

 

ゆらゆらと不規則に動くワームに翻弄されて……。

 

「ああっ!いや、いやだ、死にたくない……!いやああああっ!!!」

 

あ、死んだ。

 

眼孔に飛びついたワームが、そのまま頭蓋を食い破り、脳味噌を破壊したようだな。

 

んー……。

 

「残念、ここであなたの冒険は終わってしまった!ってところか」

 

 




唐突なリョナ要素が出てきたけど、僕はリョナラーではありません。

これだけははっきりと真実を伝えたかった。
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