ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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最近忙しいので書き溜めを放出しまくってもう残り少ない。


27話 とあるミノタウルス族の供述

おーう。

 

俺ァ、ミノタウルスのパン屋だ。

 

その図体でパン屋かよ、って?

 

いやあ、そりゃ良く言われるけどよ……。

 

確かに俺はミノタウルス族の中でもデケェ方だがなあ。

 

俺よかもっとデケェ奴もいるんだぜ?

 

最近流行っているレスリングっつー格闘技があるんだがよぉ。

 

それの大会があるんだがな、凄えんだ。

 

俺は2m30cmぐらいなんだが、レスラー達は2m50cmくらいのデカブツだらけだからな。

 

しかも強えんだこれが。

 

200kgを超える巨体同士がぶつかり合って、ぶん投げて!

 

特にあれだ、レスリングの王者、剛腕のボヴァン!

 

あれを見たか?!

 

凄えんだ!兎に角強え!

 

200kg級のミノタウルスを片手でぶん投げちまうんだぞ!

 

もんの凄え怪力だ!!

 

……でも、多分、王様はもっと強え。

 

何せ、ミノタウルスにレスリングを教えたのは王様だからな。あの2mそこらの身体で、あいきだかジュージツ?だかで、指一本でプロのレスラーのミノタウルスを吹っ飛ばすんだ。

 

ありゃバケモンだな、うん。

 

 

 

まあ、見世物を楽しめるくらいに、懐と時間に余裕ができたってことよ!

 

だが、王様は、何故だか休めと言う。

 

週に二日は休めと。

 

休まず働く方が、偉い人らからすりゃ嬉しいんじゃ?とは思うが、違うらしい。

 

なんでも、適度に休んだ方が結果的に効率は上がる、とのことだ。

 

確かに、病気や怪我を抱えたまま無理に働いて、ぶっ倒れる奴もいたなあ。

 

そんなことされるのが一番迷惑だから、毎日決まった時間、延長なしで働いて、週に二日、それとは別に年に三十日は休め、だと。

 

そう言われりゃ、休むようになってから、疲れが取れて、見世物を見に行く時間があって、毎日が楽しい。明日もまた頑張って働こうと思える。

 

こんな風に、不満なく暮らせれば、盗賊になったりすることはねえだろう。

 

成る程、良くできてんなあ。

 

王様は賢い。

 

とんでもねえよ、あのお方は。

 

それで、だ。

 

王様は、即位なさってからすぐに、国直しを始めたんだ。

 

凄えぞお、俺なんかには理解できねえ、国の仕組みを根本から変えちまったんだからな!

 

……まあ、詳しくは分からねえが、税が安くなったことと、小麦の買い取り義務がなくなったことが挙げられるな。

 

ん?知らねえのか?

 

小麦ってのは、普段はある程度は国が買ってるんだが、余っちまったら俺達パン屋が買わされるんだ。足りなかったら買わせねえくせによ!

 

まあ、色々あった、民に対して不公平な法律は全部撤廃!

 

そもそも、税金の使われ方が悪かったらしい。

 

貴族が贅沢しなけりゃ予算は浮くんだ。

 

無駄な経費をカットして、必要なところに流す。

 

勿論、器のちっちぇ貴族共とその腰巾着は反乱や暗殺を試みたが、そんなもんはぜーんぶ無駄だ。

 

王様は誰より賢くて強いからな。

 

 

 

……俺達パン屋からすりゃあ、変わったなと思うのは、嫌な法律がなくなったってところだわなあ。

 

そんで後はやっぱ、あれだ。

 

新しいパンのレシピの公開。

 

こりゃ良いのか?

 

こんな、世界中の美食家連中が挙って食いに来るレベルのパンのレシピを、あらゆるパン屋に教え込んだ。

 

特に、イースト、とか言う精霊を粉にしたものを混ぜてパンを焼くと、びっくりするほどふっくら焼けるんだ。

 

いや、イーストは目には見えない生き物だと聞いたからな。つまりは精霊のことだろ?違うのか?

 

まあ、何だって良いわな。パンの質が上がるなら、パン屋として断ることはねえ。

 

しかも、このイーストって精霊は、干した果実を漬けた水なんかに湧くらしいから、捕まえるのも簡単だ。

 

そして、菓子パンや惣菜パンの発明。

 

確かに、パンに干したグレプの実なんかをおまけ程度に混ぜて焼くことはあったが、これは凄いぜ?

 

徹底的にやるんだ。

 

パンに混ぜる!挟む!詰める!

 

徹底的にな。

 

サンドイッチ、ハンバーガー、ホットドッグ。

 

色んなもんが作られた。

 

勿論、味は最高だ。

 

特にこれ、ハーピィの卵とミノタウルスの乳を使ったカスタードクリームのパン!

 

これは数量限定で、一日三十個しか売らないんだが、それでも毎日売り切れるんだよな。

 

ん?

 

ハーピィの卵は近くに住んでいるハーピィ族の女達から、人間の握り拳一つ分くらいの大きさの卵を買っている。

 

一つにつき銅貨三枚だ。

 

日に三つくらいは産めるそうで、毎日十個くらい買い取っている。

 

それと、ミノタウルスの乳は、母ちゃんと、娘達からもらっているな。

 

両方とも非常に良い味だ。

 

そうだなあ、何でかは知らんが、鶏の卵より、ハーピィの卵の方が、何というか濃厚で美味いんだ。

 

ミノタウルスの乳も、牛乳より味がまろやかでこれまた美味い。

 

こんな美味いものと、上質な白砂糖をたっぷり使った甘あいカスタードクリームは、最高の味だと名高いぞ。

 

 

 

さて、パン屋の朝は早え。

 

日が出る前、朝の鐘の何時間か前には起きて、仕込みをすんだ。

 

「はーい、ご飯よー」

 

母ちゃんが昨日の余り物のパンを焼いて、昨日のうちに買っておいたハム、そしてサラダとスープを並べる。

 

ん?

 

ああ、俺達ってか、ケンタウロス系もサテュロスもみんな、生で野菜が食えるぞ。

 

料理しなくても十分美味いだろ?

 

棒状に切ったニンジン、そしてレタス、トマト、キュウリのサラダ。

 

王様がこの国に与えた野菜はどれもとんでもなく美味えのよ。

 

このドレッシングってのもたまらねえ。

 

肉も好きだぜ。

 

いやあ、肉なんて高価なもんは、そうそう食えなかったんだがな、王様のお陰で全体的に安くなって、俺達みたいな庶民でも毎日肉が食えるのよ。

 

それと、タマネギのコンソメスープも良い。

 

コンソメって言うスープが流行ってんだ。

 

 

 

あー、それで、もう仕事だ。

 

忙しい忙しい。

 

朝飯をゆっくり食ってる暇なんてねえぞお。

 

「お父ちゃん、私のお乳、ここに置いとくね」

 

「私のも」

 

おうよ、ありがとな娘達よ。

 

母ちゃん、カスタード作っといてくれ!

 

「私と妹のお乳はミルクパンにするね」

 

おう、頼んだ!

 

俺は兎に角パンを焼くぜえ!

 

娘ー!看板頼むー。

 

「はいはーい、開店、と」

 

さあ、仕事だ!

 

 

 

朝の鐘が鳴る頃、つまり、普通の人が起きる時間。

 

その頃に丁度店を開く。

 

うちは菓子パンがメインの店で、客も女が多い気がするな。

 

惣菜パンがメインの店はちょっと遠くにある。うちは菓子パンメインの女子供向けだぁ。

 

うちのミルクパンは粥にして赤ん坊に食わせると喜ばれるんだと。

 

それと、クリームパンも毎日売り切れる。

 

そんで、余りもんは施療院に安値で売るんだ。

 

あ、余りもんっつっても食えない訳じゃねえぞお、時間が経ってもうちのパンは美味いんだからな!そりゃ、焼きたての方が美味いが、食う上では問題ない。

 

施療院ってのは、身寄りのない老人や障害がある奴が住む場所でな。

 

税金や寄付で運営されるんだと。

 

他にも、色々な店の余り物や、職人見習いの作った服や食器なんかが寄付されるそうだ。

 

昔は、身寄りのない老人や障害者なんて、貧民街でドブネズミみたいな暮らしをしていたもんだがなあ。

 

王様は慈悲深いお方だな。

 

 

 

それじゃあ、仕事も終わったし酒でも飲みに行くか!

 

王様に、この国に乾杯!

 




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