ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ハイパーインフレーション読みました。

くっそ面白え……!


14話 ゲーム・スタート

訓練開始から三十四時間。

 

朝日が登った山の中で、四人の新米パイロット達が吠える。

 

『うわあああああっ!!!あああああっ!がああああっ!!!』

 

『死ねええええええっ!!!!死ねえ!死ねっ!!!!』

 

『があああああああっ!!!うおおあああああっ!!!』

 

『消えろ!消えろ!消えろ!消えろおおおおおおっ!!!!』

 

疲労と空腹で極限状態にある彼らは、半狂乱状態で、山のヒル・ジャイアントと戦っていた。

 

『ヨシ!』

 

一方で、その様子をいい笑顔で見ているのは、教官兼隊長のダニエルである。

 

ダニエルにとっては、殺す覚悟だの、戦いの覚悟だの、そんなものを決めるためにうだうだ時間をかけるのは間抜けそのものである。

 

殺そうと思った瞬間には既に引き金を引いている程度でなければ、パイロットはできない、と。

 

『そうだ、それで良い。本能と操縦をリンクさせろ。小難しいことは何もいらない』

 

『『『『があああああっ!!!!』』』』

 

『怒れ!狂え!機械に人の殺意を乗せろ!』

 

言わばこれば、「キレたらすぐに手が出る奴」を作る訓練である。

 

確かに、一般社会においては、怒る度に暴力を振るう者は忌避されるだろう。

 

しかし、パイロットはそれではいけない。

 

殴られたらノータイムで殴り返せる奴でなくては務まらないと、ダニエルは思っている。

 

機体の修理費弾薬費とか、戦場の誉とか、そう言ったものは全て二の次三の次。

 

まず第一に凶暴性。

 

即座に敵を殺しにかかる殺意、憤怒。

 

最初はそれだ。

 

そこから、次に、効率的に殺す為にはどうするか?

 

凶暴性に理性をミキシングすることを教えるつもりだ。

 

『うんうん、良いねぇ。たまに、ブルっちまって動けなくなるやつもいるんだが……、腑抜けじゃなくて大変結構だ』

 

轟!と風を切る四機のネクロ77型。

 

走る速度は、時速にして300kmを超えている。

 

本来、このような速度を出せたとしても……、超高性能なショックアブソーバーにより衝撃がほぼないとしても……、人間という生き物がここまでの速度を出そうとすると、心のどこかで躊躇いが生まれるものだ。

 

戦場では、その躊躇いが命を奪う。

 

本人のものだけでなく、仲間の命をも。

 

戦争など最初から正気ではない、狂気のもの。

 

であればこそ、戦い方よりまず先に狂い方を学ぶべきだ、と。

 

ダニエルはそう教えた。

 

 

 

そうして、更に八体分のヒル・ジャイアントの死骸を集めたダニエル達。

 

無論、新人パイロット達の雑な倒し方で、大部分の素材が駄目になってしまったが、それでも今回の戦いによる機体損傷を補って余りあるほどの資材が手に入った。

 

新機体や予備パーツを生産し、弾薬や、ちょっとした新武装などを作り上げたダニエルは、更なる遠征の計画を立てながらも、報告のためにエスポジート家に出向く……。

 

「シニョール・ダニエル?今度は何だね?」

 

アンダーボスのスパーダは、既に胃薬の瓶に手を伸ばしていた。胃痛がくるだろうなと予想済みなのだろう。

 

次期ボスの姿としては情けないが、こんな頭のおかしい化け物と交渉ができている時点で、考えられないほどの大物だ。

 

「まず、ヒル・ジャイアントを八体仕留めた」

 

「ヴっ」

 

胃を抑えるスパーダ。

 

錠剤の胃薬をラムネ菓子が如く噛み砕き、炭酸水をがぶ飲みする。

 

「……ふう、分かった。こんなこともあろうかと、金銀プラチナなどを買い集めておいたのだ。それと引き換えでどうだろうか?」

 

「もちろん、それで良い。それで、また機体を増やすから、人員を増やしてもいいか?今回は五機作るんだが、二体はそっちに、三体は俺がスカウトしたパイロットを乗せたい」

 

「ゥヴッ……」

 

またも、胃を抑えるスパーダ。

 

その姿には、現代日本のブラック企業勤めサラリーマンを見ているかのような憐れみすら湧いてくる。

 

「わ、分かった。人員の選出をしよう。他は何かあるかな?」

 

「後は金が欲しいんだが、なんとか融通できないか?」

 

「か、金?」

 

「ああいや、現物の金じゃなくても、株式とかの資産でも大丈夫だ」

 

「あー……、何に使うか聞いても?」

 

「傭兵の社員にパーツを売るんだ」

 

「………………????」

 

「つまり———」

 

ダニエルは、構想を説明した。

 

まず、グリムギアの説明から。

 

グリムギア……、今の傭兵団員が使っている、モンキーモデルであるグリムメイルもまた同じなのだが、グリムギアにはある特徴があった。

 

それは、『共通規格構造』である。

 

グリムギアの、別の種類の機体に、別の機体の腕や脚を移植しても、武器を持たせても、正常に動作するということだ。

 

整備点検が非常に安易になることも当然だが、これにより、搭乗者が機体を自由にカスタマイズすることもできるという利点がある。

 

「……なるほど、銃にスコープを取り付けたり、バレルを伸ばしたりしてカスタマイズする、みたいな発想ということか」

 

有能な仕事人にして、支配者でもあるスパーダには、格別の理解力があった。

 

ダニエルの言葉の妥当性というべきか、それの意味するところを正確に把握する。

 

「だが、シニョール?流石に、グリムメイルほどの超兵器では、例えパーツ単位とは言え売買できるほどの物理的な金銭は集められんよ」

 

「やっぱり?んー、じゃあこっちでポイント制度とか作ってどうにか回すわ。すまんな」

 

そう言って、場を辞そうとするダニエル。

 

「……シニョール・ダニエル。私は、貴方が怖いよ」

 

それに、スパーダはこう言った。

 

もう、色々と限界なのだろう。

 

絞り出すような声だった……。

 

「それって、俺が何を考えているか分からないから、怖いってことか?」

 

「そうだ……。貴方には一体、何が見えているんだ……?!」

 

怯えた目だ。

 

少なくとも、怯えさせる側のマフィアがしていい眼差しではない。

 

それに、ダニエルは。

 

ふむ、と嘆息し。

 

「エスポジート家の滅び、だな」

 

と、直截な言葉を吐いた……。

 

「どういう、ことだ?」

 

「スパーダ、あんたは頭が良い。分かるんじゃないか?違法な仕事だけでは、いずれ食っていけなくなると」

 

スパーダは、空の胃薬瓶をゴミ箱に投げ捨てて、言った。

 

「それは……、分かっている。だが、それは今じゃない」

 

「ま、あんたが生きているうちまでは大丈夫だろうよ。だが、次の世代はどうだ?」

 

「それはっ……!」

 

言葉に詰まるスパーダ。

 

脳裏に浮かぶは、最愛の娘の顔。

 

「スパーダ。俺はいつもふざけた態度のいけ好かない野郎だろ?それは性分なんで治せん、すまん。だが、俺を拾ってくれたあんたらエスポジート家には感謝してるんだ。これはマジのマジだぜ」

 

「そう、なのか」

 

「ああ。で、俺はこれからも何百年と生きるんだが……、あんたの子供らが路頭に迷う姿は見たくない」

 

「………………」

 

「もちろん、訳ありである俺の隠れ蓑でいて欲しいってのもあるぞ?けどな、信頼できる人間ってのは、そう簡単に増やせないんだ。それはあんたも分かるよな?」

 

「ああ……」

 

「良いか、スパーダ。俺はあんたら、エスポジート家を信頼してるんだ。だから、俺にできることは何でもする。その為の傭兵団だ」

 

「具体的に、傭兵団をどうしたいんだ?」

 

「そりゃあ、当分は規模を拡大して……、国と同等くらいの戦力を抱える」

 

「国と戦うつもりか?!」

 

「場合によってはな。だが誤解するなよ?俺は、『箱』を作ろうって言ってるんだ」

 

「箱、とは?」

 

「世界最大最強の傭兵団……、否、傭兵派遣会社を作るんだ。そしていつか、世界の全ての国が、俺達の管理する傭兵派遣会社から傭兵を奪うように雇い合って、俺達の管理する傭兵達が国々の代わりに戦争をする!……『代理戦争』の始まりだ!」

 

「代理戦争……だと?!その言い様だと、自分の部下の傭兵を殺し合わせると言うことか?!」

 

「場合によってはそうなるだろうな。だが、勘違いするなよ?それくらいに規模が広がった頃には、多数の別々の傭兵団を代理雇用する純粋な『企業』になっているはずだ。数も増えているだろうし、傭兵間に仲間意識なんてなくなる……そんな時代が来る」

 

「それはっ……!」

 

「だが、スパーダ。信じてくれ。あんたらが俺を裏切らない限り、俺はあんたらを信頼する。……俺の久しぶりの友人だからな」

 

それを聞いたスパーダは……。

 

胃を抑える手を、思い切り自らの顔面に叩きつけた!

 

「……信じて良いんだな、シニョール・ダニエル?」

 

「ああ、誓うよ」

 

「……分かった。力を貸そう」

 




サイバーパンク学園、ちょこちょこ書けてます。

最近はマジで時間も心の余裕もないから、下手すりゃ毎日更新もなくなりそう……。
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