さて、諸々の報告を確認するためにジョージアの街まで移動。
リィン達から軽く報告を聞いて、マリーから研究結果と各国の状況を聞く。
特に問題はないようなので、冒険者ギルドに出向く。
すると、受付の女から、手紙を渡された。
俺に手紙?
誰だ?
……ふむ。
貴方は勇者に選ばれました、(中略)聖王国に来い。聖王国第一王女より、ときたか。
ああ、ああ。
そいつは。
面白そうじゃねえかァ?
ゲギャハハハハハハハハ!!!
てめえから獅子身中の虫を受け入れるってんだからなァ?
おめでてー頭してんだなァ、オイ!
笑えるぜ!!
頭の中で予定を組み立てる。
そうだな、そうだ。
人間を飼い殺しにするシステムを構築しなきゃな。
今考えているのは、定期的な人間の国への軍事的な攻撃、阿片を広める、人間国家における裏社会を統治し、人類の発展を阻害すること。
裏社会、と言うものはどの時代にもどの国にも存在するものだ。そして、民衆にとっては、王や兵隊よりも密接に関わる存在であることが多い。
場合によっては、政府と手を結んでいたり、武力や経済力を以って政府を操作したりすることだってある。
目標としては、裏社会組織に阿片の流通を任せ、その利益を以って組織を強大にし、裏から人間国家を支配する、と言う形式にしようと思っている。
表立って支配すると、必ず反抗勢力が湧くだろうしな。
ゲリラ的に徒党を組まれるのが一番面倒だなァ。
ゲリラ戦が得意な俺が言うんだから間違いねえぞ。敵にやられると厄介なんだよ、ゲリラ戦。
かと言って人間を滅ぼしてもな……。
人を殺したくて戦争をやってるのに、人がいなくなったらつまらねぇよなァ。
程よく発展を操作してやらねえとな。
さて、地球で言うイギリスの位置にある聖王国に移動。
もちろん船でだ。
帆船で移動したのは流石に初めてだな。
万一沈んでも、武器庫で船や救命具を出せるから、不安はなかったが。
さて、聖王国……。
成る程、「らしい」な。
実に人間らしい。
一神教を掲げ、神の愛をと騙る……、そんな連中が作り出した大通りや王都は煌びやかだ。
だかしかし、一歩路地裏に入れば、打ち捨てられた病人、障害者、老人、孤児……。
街の中には、ちらほらと奴隷や物乞いが。
穢れを金メッキで覆い隠した薄汚い人間の街だ。
ルネサンス以前を彷彿させる薄汚さだな。
いやあ実に良いな、醜くて。
殺す時が楽しみだ。
この街に絨毯爆撃したらどうなるだろうか、というような愉快な想像を頭に思い浮かべながら、王城に出向く。
その途中で、街を見回り、税率や法律、文化や歴史などを軽く調べておいた。
しかし、図書館などは王家が独占しているらしく、手に入る知識には限界があるな。
こちらの冒険者ギルドにも顔を出したが、特に面白い情報はない、か。
方々で話を聞く。
……ふむ、どうやらこの国は、五百年程前に勇者が作ったらしい。
元は人外の支配領域だったらしいが、奪い取ったそうだ。
一瞬、人間が人外に勝てるか?と思ったが、よく考えると、まあ、そうそう負けないだろうという結論に至った。
人間も人外も大体十億人程いるが……、人外はピンキリだ。
人外は、コボルトや妖精、スライムのような、訓練をしていないただの人間でも殺せてしまうような雑魚が多い。
フェンリルやドラゴンのような奴らは、殆ど自分の住処から出ない。
それに、この世界には、魔力という要素のお陰で、女子供や老人でもある程度の戦闘能力は保証される上に、人間でも勇者に認定されるような強力な個体は、ドラゴンに匹敵するくらいの戦闘能力はあるだろう。
その上で、人外は中々増えないというのもある。
強い個体ほど寿命が長くなる傾向があるが……、強い個体ほど出生率が低いのも分かった。
人間なら、一組の番から、十年二十年で下手すれば十匹くらいは増える。寿命は三十年程だが。
ん、ああ、中世の人間の寿命なんてそんなもんだ。それに、だ。十匹くらい増えると言っても、脆弱な種族だからな、病気や怪我だなんだと生まれたうちの半分以上は死ぬ。
しかし人外は、というと。
コボルトなんかの弱小種族は、人間と同じぐらい増えて同じくらい減るが、例えばそう、フェンリルを例に挙げるか。
フェンリルは、寿命は数千年程だが、一組の番が、数百年に一人くらいしか生まないのだ。
遅い、遅過ぎる。
まあ、これも、人間より遥かに丈夫な肉体と長い寿命を持つ種族だからなのだろうと思うが。
但し、一度生まれれば死にづらいのも特徴か。育つのも寿命からすれば早いしな。
……と、まあ、そんな訳で、兵力は増えにくい。
そんな中で、ぽんぽん増える上に、結構な頻度で強力な個体が生まれる人間とは、戦うとなると中々に侮れない種族な訳だ。
そんな連中が、まるで危機感のない人外を敵視して、積極的に殺そうとしてくる、となると、まあ。
「負けるわな」
と思う訳だ。
恐らく、聖王国建国も、危機感ゼロでボケっと原始的な生活をしていた人外を、勇者の群れが虐殺したというのが真相だろうな。
いやあこれ、俺が来なかったら、あと五百年くらいで人外は駆逐されてたかもな。
さて、王城。
ロマネスク建築に近いだろうか、野暮ったいような印象を受ける、少し丸い屋根の城だ。荘厳なステンドグラスや彫刻は見られないが、恐らくは建国の王であろう者の彫刻が庭の真ん中に飾られている。
ふむ、思ったよりも飾り気がないな。
まあ、恐らくは、歴史的な建物だからと言って補修以外に手を加えていないのだろうな。
そんなもんか。
さて。
「あの、すみません。これを」
「んん?何だ?」
門番に懐の王家の証印を見せる。
……と言うよりアホかこいつ。うちの兵隊なら目の前で不審人物が懐に手を入れた時点でフリーズ、取り押さえるぞ?
爆発物や拳銃だったらどうす……、いや、そんなものはないのか。
しかし、突発的なテロにはどう対処するんだろうな?
「こ、これは、王家の証印!ま、まさか貴方は……!!ど、どうぞこちらへ!!」
しかも中に招くのかよ。
ボディチェックも無しに?
セキュリティ管理ヤベェな。
黙って後ろをついていく。
「こちらでお待ち下さい」
高級そうな部屋に通される。
高級そう、と言っても、人間の常識の範囲内だ。うちの城の方が良い作りしてるな。
そしてメイドが何人か。
……身のこなしを見るからに、本当にただのメイドだ。
俺の支配する国々でのメイドや女中は、戦国時代の小姓のように、様々な訓練の上で、戦闘訓練もやらせてある。
まあ、そんなもんだ、そんなもんだろう。警戒し過ぎってことはねえ、よな?
「ワインです」
……あ?
あー、そうだな。
紅茶が飲まれるようになったのは、確か、1662年頃に、イギリスにポルトガルの王女様が嫁いできて、その時に、中国からとれた茶葉と砂糖を持ち込んで、貴重な砂糖を紅茶に入れるのが贅沢でクールだと貴族の間で流行ったのが起源だ。
しかし、この世界の中国といえば麗国。人外の国だ。人間至上主義の聖王国は、麗国と貿易なんてしないだろう。
仮に紅茶が手に入っても、人外の国のものを王家で大っぴらに使うことなんてできないだろうな。
だから、飲まれるのはエールやワインか。
貴族ならワインと言う訳だな。
ふむ、どうするか。
ほぼ敵地と言っていい場所で出された飲料を飲む、か。
実験の結果、俺の肉体は大半の毒を無効化もしくは軽減すると分かっている。
ここで飲まなければ不審に思われるかもしれない、か。
ほんの一口、口に含む。
……不味いな、酒造技術の未熟さが伺える酷い出来だ。
喉に通す。
異常はない。
「……普段、ワインのような高級品を口にする機会はあまりありませんので、慣れませんね」
と、残りは残す。
メイドは少し嫌な顔をしたが、それを無視して待つ。
すると、やがて案内役の兵士が来て。
俺を、女王のいる部屋に案内した。
先のことをあまり考えないで書いているのでこの先はちょっと遅れそう。
他のやつも更新せねば……。