ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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秋!

秋かあ。


24話 最高の宣伝技法を見せてやる

「これは……、売れる!売れますぞ、婿殿!」

 

人工真珠の連なったネックレスを、ハンカチで包んで持ちながら、モノクルで検分するお義父さんことグレゴリー。

 

「これは真珠ですな?真珠は、海のないこのリーフェンハイム王国では滅多にない宝石。遠い北の海国のみから輸入されるですが、製法は秘伝とされており非常に貴重と言われております。しかも、同じ大きさや真円のものは滅多にないらしく、一組のイアリングでも作れればそれだけで目が飛び出るほどの値段がつく……」

 

そう言いながらお義父さんは、手元の人工真珠ネックレスを掲げた。

 

「しかし、これはどうだね?!同じ大きさの真珠が、三十個も連なっている!断言しましょう、これならば国宝級の値段がつくと!」

 

鼻息を荒くして、他の宝石も掴む。

 

「それに、こちらの宝石も実に素晴らしい!見たことのない精巧なカットの、信じられないほどに大粒の宝石!どれもこれもが、大貴族の家宝となってもおかしくない!」

 

ああ……、工業的な機械でカットされた、人工宝石の類か……。

 

「こちらも素晴らしいです!このコンポート……いえジャムでしたか?澄んだ甘さに果実の柔らかな酸味が絡んで、舌が蕩けるほど美味しい……!しかも、透明な瓶から見ると美しい色味で、まるで食べる宝石ですね!」

 

スティーリアも喜んでいる。

 

「売れそうですか?」

 

「婿殿、これを売れなかったら、私は商人の看板を下ろすでしょうな!」

 

そう言ったお義父さんに、大量の在庫を押し付ける。

 

「それで……、策とは何か聞いても?正直、何もやらなくてもこれだけのものは確実に売れると思うのですが……?」

 

うん、それね。

 

「王様に献上して、パーティにこれらの商品を出してもらいます」

 

俺がそう言うと、お義父さんはポカンとした顔の後。

 

「それは、君…….。良いじゃないですか……!」

 

またもや瞳を$マークにして、微笑んだ。

 

 

 

そんな訳で俺は、またもや王城に向かった。

 

一応、朝に先触れを出してあるので、マナーもばっちりさ!

 

ちゃんと話を通しておいたので、普通に玉座の間へと通される。

 

「アッシャー卿よ、今朝起きたらいきなり風の精霊にお主が来ると伝えられてたまげたぞ。せめて、余の家令に伝えてくれぬか……?」

 

「ああ、それは失礼。家令が誰か分からなかったものですから。いや、調べようと思えばできましたが、俺の手下である精霊に城の構造から人員まで全て把握されるのも気分が良くないかなと少し気を遣いましてね」

 

「そうか、その気持ちはありがたく思う。家令はこちらのセバスチャンという男だ、次からはこちらに取次いでもらえると助かる」

 

王の隣で頭を下げる、灰色の髪をした中年。異様に気配が薄いな、スパイ的なアレか?

 

「分かりました、それで要件なんですが」

 

「申してみよ」

 

「何でも、今度パーティーを行うらしいじゃないですか。王都に国内の殆どの貴族が集まり、建国の日を祝うとか……?」

 

「……招待状なら、後で送っておく」

 

「ああいえ、俺本人がどうしても出たい!とかではないです。邪魔なら呼ばなくても全然OKですからそこは大丈夫ですよ。ただ俺は最近、ちょっと商売をしようかなーなんて思ってまして」

 

「……ふむ、つまり?」

 

「宝飾品とか、嗜好品とかを献上するので、パーティーの際に貴族の皆さんに楽しんでいただけたらなあ、と」

 

「なるほど、己の商品を喧伝したいと申すか。しかし、お主を信用せぬ訳ではないが、王家主催のパーティーともなると供されるものにも『格式』を求められる。そこは解するな?」

 

「ええ、もちろん。それを知って持ってきたのですよ」

 

「ほう……?」

 

「正直、この世界の飲食物や嗜好品の質は、申し訳ないがお話にならないレベルです。貴族はまだしも、平民達は食えば腹を壊すようなものを平気で売り買いしています。味付けの技法はまだしも、素材の方がこれでは、料理人がどれほど有能だったとしても完全に無意味ですね。品質管理も未熟だから、パーティーで供されるものも鮮度を失い、味が大幅に落ちていることは想像に難くありません」

 

「我が国の嗜好品が気に食わぬか」

 

「それ以前の問題ですね。俺はこの国で一年過ごしましたが、一度もこの国の飲食物を口にしていません」

 

「では、どのようにして生きておるのだ?超越者は飢えぬのか?」

 

「こうやって、ですよ」

 

召喚。

 

いきなり、玉座の間に積まれたたくさんの箱に驚く王様。

 

「なんと……!空間系のスキルか!」

 

「違いますけどまあその辺は良いや。こちらは、故郷の宝飾品や嗜好品の類となります」

 

俺はそう言って、ハイジュエリー……地球だと千万円以上はする超高級アクセサリーの類を出して見せた。

 

ほら、あれだ。

 

なんかギャグ漫画のセレブがつけてそうな、でっかい宝石でギラギラの首飾りとかそういうのだよ。

 

これに目の色を変えたのは、同席していた王妃とたまたまいた姫の一人だった。

 

「まあ……!なんて美しいのかしら……!」

 

「お母様、私……!あれが欲しいわ……!」

 

やはり女だな。

 

王妃だろうが姫だろうが、女の子は光り物が好きなんだろうよ。

 

「パーティーにて使用していただけるのであれば、喜んで献上いたしますが……?」

 

俺が言うと、王様は諦めたような顔をして、一言。

 

「アッシャー卿、妻と娘にくれてやってもらえぬか?ここに居ない妾や娘達の分も受け取ろう。パーティーでは、アッシャー卿から献上されたと明言すると約束しよう」

 

「もちろんでございます、我が王よ」

 

「……これだけのものを献上してくれたアッシャー卿に、余は何も返せんのだが?」

 

「いえいえ、お気持ちだけで結構でございますとも。俺、こう見えても陛下の忠臣なので」

 

王様は胡乱なものを見る目で俺を一瞥すると、家令に色々と指示を出した。

 

「では、今日はこの辺で帰りますね。用があれば屋敷へお願いします」

 

俺はそう言い残して、召喚獣に転移魔法を使わせて姿を消した。

 

「転移魔法、か……」

 

王様が最後にそう呟いていたのを聞きつつ、帰宅……。

 




生姜焼きの気分かなー。
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