悪寒と実際に寒いのとの違いが分からんくて困る。
成人するまで生きておいて自分の体調すら把握できないとかカス過ぎるだろ俺……。
よし、これでとりあえず、生存するだけなら大丈夫だな。
次は、サーバント達から情報収集といくか。
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《三手先を読む》
・サーバント達と会話をする
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昼。
森の中での旅、しかもまた「本格的中世ファンタジー」の世界観だと言うのに、バリバリにヴィクトリアンエイジ感全開の黒いロングスカートエプロンドレスを着た、精神異常メイドサーバントに声をかける。
「ドロシー、今までのことを説明できるか?」
料理を配膳するために、美しい黒髪をお団子状に纏めている彼女は、俺にトマトのスープが入った椀を渡しつつこう言った。
「説明とはどこからでございますか?出会った時から?」
「いや、最近から今まで」
「それでしたら……、最近は、暮れの節句のアマダム祭で、久しぶりに息子達と会いました。孫を含めると百を超える一族が集まって、ヴォルスランドの首都アークルにある屋敷で、盛大なパーティーを催しました。あれは壮観でございましたね」
うむ、これは合っている。
アマダム祭は、創造神アマダムを奉るという名目で騒ぐ、クリスマス的なイベント。
この日は家族で豪勢に祝うのが当たり前。
なので、身内のNPCを集めて、パーティーをした。
そして、三が日を終えて、再び旅に出たんだが……。
「そうして、旅を再開して、キャンプを作って寝ていたところ、目が覚めたらいきなり知らない土地にいた……と認識しております」
うげ、やっぱりか。
これ、もしかするとゲーム世界じゃなくて別世界かもしれないんだよな……。
何故分かるかというと、先ほど開いたアイテム生成機に、見慣れぬアイテムの名前が多数あったからだ。
アイテム生成機は、ランダム生成アイテムの取得テストのためのMODだからな。
つまり、この世界にあるものを何でも生成できることになるのだが……、ゲームの頃とは違う、見慣れぬアイテムも何故かあった。
となるともう、世界の方が違うんじゃないのか?ってね。
「あ、因みに、ボスがうだうだやってる内に周辺の探索してきたんでやんすけど、ここ、アークルどころかヴォルスランドですらないでやんすねぇ」
そう言ってトマトスープにじゃぶじゃぶパンを浸している行儀の悪い少女は、豹獣人の盗賊、キャシィ。
深い緑色の外套と、灰色の革鎧を脱いで、ラフなシャツ姿でパンに齧り付いている。
脱いだブーツを揃えずにその辺に転がしているのが、スラム育ちの女盗賊らしい。
匂いのこもった足からフワッと湯気が出ていてよろしいですね!
「ヴォルスランド大陸じゃないってことか?」
「そうでやんす。この辺の地形、全然知らないでやんすし、出てくるモンスターも見たことないでやんす」
「は?お前、モンスターと戦ったのか?!」
「あ、いや、でも雑魚だったんで!ヤバいやつならちゃんと逃げるんで大丈夫でやんすよ!」
「……ったく、油断はすんなよ?」
「はいでやんす!」
「因みに何出た?」
「いや、なんかツノ生えた兎?とか、小ちゃいオルグ族みたいなのとか……?」
まさか、ホーンラビットとゴブリンとかとでも言うんじゃないだろうな……。
アイテム生成機をチラ見。
あ、うん。
この世界、そういう系のファンタジーだ……。
「本格的中世ファンタジー!」から「なろう系雑ファンタジー」に転移か……。
まあその辺は良いや、それよりも今後の生活についてだ。
食器を片付けて、俺達は焚き火を囲むように集まった。
「驚かないで聞いてほしい。実は……、ヴォルスランドとは違う世界に来てしまったみたいなんだよ」
「「「「はあ、そうですか……」」」」
えぇ……。
「何でそんな驚かないんだよ?大事件だろ」
「いや、もう何回もやっているじゃありませんの」
悪魔の角が生えた美少女と美女の境目ほどの年頃の魔法剣士、シャーロットはそう言って胡乱な眼差しを向けてくる。
「そんなことしてないだろ?別に……」
「『ファンタルジア』『マシントピア』『地下世界』『鏡の国』『インフェルノ』『空中大陸ラプト』……、『サイバーシティTOKYO』と、あとは『デバステーション・カリフォルニア』でしたかしら?思い浮かぶ限りでは……」
え?
「……異世界の記憶あるのか?!」
大型のクエスト追加MODで導入した、異世界転移MOD!
そういうのもあったな!
だが、その世界の記憶があるのか?
お前らはスタンドアロンMODとはいえ、互換性のないクエスト追加MODには対応していないんじゃ……。
いや、無理やり連れて行ったし、AIは正常に稼働していたと思うけども。
「……は?!馬鹿にされてますの?!ずっと!一緒だったでは!ありませんか!!!」
そう言って俺の肩を掴んで叫ぶシャーロット。
あ、記憶あったんだ?!
じゃあ、マジの異世界転移にビビってんのは俺だけ……ってコト?!!
これは情けねえな。
だがとにかく、サーバント達はちゃんと記憶がある、と。
「いやでも、今回は帰れなそうなんだよね。ファストトラベルも発動しないしさ」
「あら、そういうことでしたのね。もしかすると、この世界に骨を埋めることになるかもしれない……、と。ですから、動揺なさっていらっしゃったのですね、合点が行きましたわ」
あ、寿命の話は大丈夫だ。
とあるクエストで俺達は全員不老不死になったから。
その辺の話は良いとして……。
「そうだ、元の世界に帰れないかもしれないんだ。帰る方法も、皆目検討がつかない」
「いつもそうでは?」
「いや、今回は違う。いつもの異世界は、必ず帰れるような仕組みになっていたんだよ実は」
だってゲームだもん。
「ですが、今回はそうではなく……、何をどうやっても帰れないかもしれない、と?」
「そうなるな」
すると全員が少し考え事をする……。
そして。
「まあ、息子も独り立ちしましたし、親としての責務も果たしました。思い残すことはありませんことよ」
と、皆、そのようなことを言ってきた。
覚悟完了なさっている。
「わたくし達は皆、魂が尽き果てるまで貴方様に傅くと心に決めておりますの。確かに、我が子の顔を二度と見れぬと思うと辛いですが……、貴方様のお側に侍る方が重要ですわ」
……なるほどね。
「だが……」
それは、NPCとして作られた感情なんだ、と。
俺は口にしようとして、やめた。
こいつらは本当に生きているんだ。
愛情の否定など、そんなことはしたくない。
例え、俺がこいつらに、俺を愛するようにMODとして作った過去が、記憶があったとしても……。
それでも、こいつらの心も、意思も、こいつら自身のものだ。
それを否定するつもりはない。
「……分かった。これからも、俺について来てくれるか?」
『はい!』
笑顔の了承の声が重なった……。
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《三手先を読む》
・サーバント達と会話をする◯
———クエスト成功
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うおお古典的ダンジョンもの、勇者サマとダンジョン攻略するシーンがイマイチ盛り上がらねえ!
主にダンジョンの良くない面にクローズアップしながら、ダンジョンを進んで、最後に魔王との決戦という展開なのですが……、面白く書けねえ!!!
勇者編が終われば、次はちょっとした小話をいくつか挟んでからまた何か書きます。
『極楽鳥ラッシュ編』か『バカ王女漫遊編』かだな……。