なぜ俺はこんなムダな時間を……。
「つ、ついたぞ……」
村長の言を信じて、一路南へ。
馬車なら半日ほどで、『アスレッド』という国のルーネンブルグという街に着くと聞いていたが……。
事実、三日ほどかかった。
距離感ガバやめてくれよ……。
いや、俺が道に迷ったってのもあるが。
ま、まあいい。
ちゃんと着いたんでな。
開いた城門に、俺は馬車で乗り込んだ……。
「「「「止まれ!」」」」
はい、そして自警団らしき連中に囲まれました、と。
「わー、懐かしいね、パパ!」
俺をパパと呼ぶこの褐色肌の少女は、ドヴェルグの職人ブルーナ。
クソデカハンマーにやたらデカい手袋と靴という、カートゥーン的な特徴を持つ彼女だが、実はこう見えてちゃんと成人している。
パパ呼びの理由?
これは子持ち既婚のおばさんが、旦那を「パパ」と呼ぶ系のアレだ。決していかがわしいアレではないので安心安全だな!
「ああ、まあ、そう言われりゃ懐かしいな」
「兵士に囲まれるのなんて久しぶりだよー!ヴォルスランドじゃ、アタシ達に逆らえる国なんてもう一つもなかったもんね!」
そうね。
MOD導入による強化や、やり込みによるプレイヤースキルの向上により、俺は個人で国が滅ぼせるという格闘漫画の最強キャラみたいな立ち位置にあったからな。
兵隊なんて、ビビって俺に話しかけてくることは久しくなかった。
……いや、こちらの自警団諸君も大分ビビってんなこれ。
俺が『龍帝シリーズ』一式を装備しているからか。
どっからどう見ても「闇の帝王」とか「暗黒卿」って感じだもんな。
然もありなんって感じ。
「だ、誰だお前は?!」
何だチミは?ってか。
そうです、私が光の使徒にして闇の尖兵であり破壊神のしもべを兼任する吸血鬼ハンターにして魔女の護剣でもある帝国軍特別顧問の史上最強契約者です。
……とは言えないので。
「遠い大陸から来た、遍歴騎士だ」
と答える。
うーん、流石のロールプレイ力、と自画自賛させていただく。
恐ろしく上手い猫被り。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね!
真面目な話、このゲームのAIは極めて優秀だから、交渉スキルとかを発動させるにはこうしてカリスマ感を演出しなけりゃならないのだ。
適当なタメ口で薄ら笑いを浮かべているようでは、スキルは働いてくれない。
一部ではVRゲームのことを、「俳優養成所」や「特殊工作員作成ツール」などと言う奴もいるが、まあ、大体合ってる。
そんな訳で俺は、カリスマ騎士っぽい感じのオーラを出しつつも、エキゾチックな雰囲気と野生味をエッセンスとして加え入れ、それを戦士としての武威でまとめる。
これで、「未知の大陸から現れた伝説的最強遍歴騎士」として印象を固めるのだ。
「お、お前ら!槍を引けっ!引けっ!!!」
隊長らしき、革兜に赤い羽を刺した男が一般兵達に槍を納めさせる。
多分、この隊長は、外国人とはいえ騎士に槍を向けたことで、外交的な問題やら何やらが生じると悟り、部下を抑えたのだろう。
出来が良いな。
「わっ、私は、ルーデンブルグ自警団が隊長、代官モンテス・モルガー様に仕えるエイスと申します!さぞ高名な騎士様と存じますが、この私には交渉の権利がありませぬ!只今、主人を呼んで参ります故、お待ちを!」
そう言って、十五分程度。
フルプレートに騎馬の男がやって来た。
バケツヘルムで顔は見えない。
いや、ヘルムを取った。
地球で言えば地中海系、堀の深い顔に燻んだ赤髪の、中年の男だ。残念ながら、俺のようなハンサムではないが、誠実そうな男だった。分厚い唇が特徴的。
「私は、アスレッド王に仕える騎士にしてルーデンブルグが代官、モンテス・モルガー!貴公の目的は何か?!」
この名乗り、俺もやらなきゃならないの?
多分これ礼儀とかそういうやつだな。
やっておこう。
「俺は、ヴォルスランド大陸の遍歴騎士にして神々との契約者、ブラッド・ミスラスだ。この街には、住居探しの一環として参った」
「住居探し……?」
「古代の魔法遺跡を探索しているところ、その遺跡に秘された術が発動し、それに巻き込まれて俺は妻と共にこの地に飛ばされて来た。帰る手段を探すと共に、仮の拠点として屋敷の一つでも欲しいと思っている」
ということになっている。
「……なるほど、異国の遍歴騎士。しかし、申し訳ないが、この国では『市民権』のない者に土地を売ることはできない」
「では、どうすれば市民権とやらは手に入る?」
「街に対して貢献がある者だろう。傭兵としてならば、今は反乱軍との戦争中であるこの国に雇用されるかもしれんぞ」
「他には何かないのか?商業的成功や、強力なモンスターの狩猟などはどうだ?」
「商業?騎士が何故、金などという不浄なものを扱うのだ?まあ、モンスターとの戦いは誉にもなろうが……」
あっ。
察し。
脳筋貴族パターンね、大体わかった。
多分これ、身分制度が「貴族:戦う者」「神官:祈る者」「農民:耕す者」の三つに分かれた、本当の中世だなこれ。
で、商人は賎業、金貸しは悪党、みたいな……。
「とは言え、確かに土地を買うには金も必要といえばそうだな。私は土地がいくらなのか知らんが」
はいはい、騎士は戦うのが仕事なので、金勘定の話なんてしないし知らないんですよね。
多分これはこの人の副官とか、文官に聞いた方がいいやつだろうな。
「街に対する功績とは言うが、その功績とはどうやって評価される?お前の匙加減か?」
「いや、傭兵ギルドがある。そこで登録を受け、仕事を続けていれば、いずれ市民権が認められるはずだ」
なるほどな。
「よく分かった。では、街への滞在は許可するんだな?」
「うむ……、良いだろう。戦争も多い、我が都市に強き武人が滞在しているならば、それだけで街を守れる可能性が高まるというものだ」
ん?
「この街のために戦う必要があるのか?」
「それはそうだろう?この街の傭兵ギルドに登録するのならば、この街のために戦う義務がある」
あーはいはい、そんな感じね。
冒険者ギルド!冒険者は自由!とかではないんだね。
「詳しい話は隊長から聞け。では、さらばだ」
と、代官モンテスは去っていった。
そして俺は、隊長から件の「傭兵ギルド」の位置を聞いて、そこを訊ねる。
また、その途中に隊長から話を聞いて、この地に対する理解を深めた。
情報収集はこんなものだろう。
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《終わらぬ旅路》
・異世界について調査する◯
———クエスト成功
《市民の証》
・市民権を手に入れる
《傭兵の栄光》
・傭兵ランクを「銀」にする
・オプション:傭兵ランクを「金」にする
《きらきらの金貨》
・土地を買うための金を手にする
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今作はどうにか30話の節目くらいまでは書いておきました。もうちょい書きたいです。
今作のコンセプトは、「ファイアーエムブレムみたいな戦記もの風ファンタジー世界にやって来たMOD持ちドヴァーキンが一人でクエストをこなしまくることにより戦略をひっくり返して戦記ものを台無しにする」、です。
この世界、パワーバランス的には、どんなに強い奴でも人の領域を出ず、一人ではモンスターも倒せない。ドラゴンを倒すとなると千人の軍隊が必要。軍隊を蹴散らす個人なんてあり得ないって感じなんですよ。
そこに、一人いればガチで千人斬りするクソバカが殴り込むので面白い訳ですね。見てる分には。