「さて、聖王国の悪党の諸君。俺が人外の王だ」
「は、はぁ?!ジ、ジンさん、あんたは……」
人外の王であることを説明。
「な、成る程?まあ、理解しやしたが……。人外の王が、人間の悪党に何の御用で?」
「何、ちょっとお前らに人間社会を裏から支配して欲しくてな」
「ちょっと、ではないじゃないですかねぃ……」
げんなりした顔を見せるフルボ。
「大したことは頼んでねえよ。ただ、人類の発展を阻害して欲しいだけだ」
「何で、そんなことを?」
「簡単だ。人間はすぐに増える。そして欲深い。だからこそ……、間引きしなければならない」
「人間の、間引き……」
「対価として、こちらの国の貴重な品と……、そうだな、永遠の命なんてどうだ?」
「それはそそられやすねえ……、何分、人の一生は短いもんですから」
「ジンさん、それって本当?!永遠の若さと美しさを手にすることができるの?!」
売春の元締め、ベッラが言った。
「試しに飲んでみろ、若返りの薬だ」
「ベッラ、飲む気ですかい?何が入っているか分からな」
「ごくっ」
「あー、この馬鹿女は……!!」
「うぅう……、あああっ!!!」
「大丈夫かベッラ?!」
すると、三十代程のベッラは見る見るうちに若返り、二十代手前程になった。
「あは、あはは、あははははは!!!見てよフルボ!!この肌のハリとツヤ!!若い頃の姿よ!!やっぱり私は美しいのよ、あははははははははは!!!!」
「うおお、本物ですかい……?!本気で若返りを……?!」
「お前らにもくれてやる、持っていけ」
全員に渡す。
荒事担当のヴィゴーレもこれを口にする。
「ヴィゴーレ、飲むんですかい?!」
「む、俺、身体、丈夫。毒味」
すると、四十に差しかかろうという年齢だったヴィゴーレは若返り、二十代程に。
「おお、オオオ!力、溢れる!!若い頃、戻った!!」
「ヴィゴーレまでこんなに若返るとは……」
「フルボ、安心しろ、これは原材料は果実の絞り汁なんだ」
「その、果実とは?」
「ふむ、お前は妖精族の魔力が生命を活性化させることは知っているか?」
「ええ、胸糞悪い話ですが、貴族なんかは薬箱代わりに妖精族を飼っているって話でさあ」
「その妖精族の魔力を大量に集めた作物には、生命を活性化させ、結果として若返らせることができるという効果を発見してな。この若返り薬はそれで作ったんだよ。人体実験は攫ってきた人間や罪人の人外で何百と繰り返したが、副作用はない」
フルボは、少し考えたあとに、薬を飲み干した。
「う、おおお!凄えじゃねえですか!本当に若返った!あはははは、最高だ!!」
他の幹部も薬を飲み干し、若返った自分の姿に喜んでいた。
「薬の名称はそうだな、アムリタとしておこうか。このアムリタを、十年から二十年毎にくれてやる。どうだ、俺のために働いてくれるか?」
フルボは仲間に目配せする。
「……俺達で良ければ、幾らでも力を貸しまさぁ。その、見返りは期待してよろしいんで?」
「ああ、最近は蘇生薬なんてものも作っていてな。他にも美味い酒や食事、便利な道具に嗜好品……、その辺りも期待しておけ」
「へへへ、最高ですね」
「次は武力について見せてやる」
転移。
レムリアの北の空き地にて、兵器訓練。
標的用の鉄製フルプレートアーマーが複数設置されている。
「時にフルボ、お前はあんなのが襲いかかってきたらどうする?」
「騎士様ですかい?いやあ、正面からじゃ無理ですねえ……。一人二人殺せば追い詰められてこっちが殺されて終わりでさあ」
「そうか。だが、これを使えば簡単だぞ?」
AK-47を取り出す。
「何ですかいそれは?槍?」
「いいか、これは銃だ。銃とは、金属でできた弾丸を、火の秘薬の爆発の衝撃で飛ばすものを指す」
「はあ」
「見ておけ」
フルプレートアーマーを蜂の巣にする。
「うるさっ?!」
フルプレートアーマーを見せ、説明する。
「……はは、何ですかい、これは。戦の常識がひっくり返る。これじゃ鎧なんて誰も使わなくなりやすね。おまけに詠唱もなしにこの射程と火力。これが女子供でも使える?」
フルボが冷や汗を流す。
「こ、これは、魔法を使わずに作っただと?!素晴らしい!革新的だ!是非仕組みを教えてくれ!」
技師のオペライオは感動したようだ。
「これからは定期的にここに通って、銃の扱い方について教えてやる。そうしたら銃を融通してやるからな」
他にも、榴弾砲、手投弾、ミサイル、戦車、戦闘機、戦艦……、様々なものを見せた。
夜には酒宴を開き、贅を凝らした食事と酒を出してやった。
ドワーフのオペライオは、蒸留酒を酷く気に入り、定期的に売ることを約束してやった。
他にも、紅茶やコーヒーは、エルフの会計役コントが、タバコや大麻は賭博の元締めジョカトーレが酷く気に入り、定期的に売ることに。
「この焼いた牛の肉の美味いことよ!食うために育てた、老いていない牛の肉はこんなにも美味いのか!」
「これ、凄いわね……、私も娼婦だった頃は貴族の愛人になって色々と良いもの食べてきたけど……、このケーキのような素晴らしいものは初めてだわ」
「フライドチキン、美味い。鳥の肉、高い。それが沢山。凄い」
「これは美味しいね、ミルクのシチューか!見たことも聞いたこともないけど、まろやかでいけるじゃないか!」
「この野菜のスープ……、コンソメと言うのですか?これは良い。銀行家だった頃にも食べたことがないですよ。本当に美味しい」
「くぅ〜!このエビフライってのはたまりやせんねぇ!俺ァ、実は港町の出身でしてね。エビは大好物なんでさあ。いやあ、何年振りだろうかね、こんなに美味いエビを食うのは」
と、好評だった。
「それで、フルボ」
「へい」
「お前にはこれから、密輸と麻薬の元締めになってもらう」
「密輸、は分かりやすが、麻薬とは?」
「使うと快楽が得られるが、やがて廃人になる薬だ」
「何です、それは?」
「阿片だ。知らないか?」
見せてみる。
「ああ、これ、鎮痛剤の素じゃありやせんか?俺ァ、昔は医者を目指してましてね、見たことがありやす」
そうか。
確かに、阿片は元々、鎮痛剤として使われていたな。
「だが、これは摂取すれば多幸感を得られるだろう?」
「確かに……。これを売り捌けば金になりやすね」
「これはタバコに混入したもの、これはアヘンチンキ。是非売り捌いて広めてくれ」
どちらかと言うとタバコの方が中毒になりやすいからそっちを広めてくれ。
そうして、この五ヶ月間はフルボ達の教育に精を出した。
フルボ達は、最低限、軽いCQBと銃の取り扱い、分解整備の仕方、自分の仕事の更なる発展方法などを理解した。
全員ほぼ人間の割には覚えが良くて有能だなこいつら。
悪党だから、メリットを提示すればしっかり働くし。
聖王国とその植民地であるメリカ大陸を裏から支配する組織、名称『黒骸骨』。
これからどうなるかね、楽しみだ。
詳しい設定はそのうち語るかもですけど、フルボは港町のスラム街出身で、モグリの医者やってます。毒の調合と投げナイフが得意で、仕込み杖での剣技もチンピラにしておくには惜しいくらいにはあります。
他にも娼婦の子供だとか、幼い頃に姉を亡くしたとか、師匠であった医者に性的暴行をされていただとか、もうお前が主人公やれよみたいな設定が。そのうち書きたい。