登録とやらをする。
その為に顔を出す必要があるらしいので、俺達は兜を取った。
ああ、そうなんだよな。
全員、ある程度は兜とかで顔を隠しているんだよ。
別に後ろ暗いことがある訳じゃあないんだが、顔を守らないと攻撃を喰らってしまうだろう?
このゲームは重厚ファンタジー、オシャレ重視で兜をつけなければ、顔面に流れ矢が突き刺さって大ダメージなのだ。まあ死にはしないけどさ。
無論、顔面に防具をつけなくても防御力を高められるMODもあるが、俺はそれが何となく嫌だったので導入していない。
とりあえず、全員が兜を脱いだ。
「は、あ……?」
「なんだ……?!」
「う、美しい……!」
その辺の奴らが驚くのも無理はない。
俺達は全員、MODによって死ぬほど美形になっているからな。
今まで、街を歩いているうちに気がついたのだが、この世界の人間は顔が良くない。
都合のいい漫画の世界のように、登場人物がモブも含めて全員美形!なんてことはない、と言う訳だ。
いわゆるナーロッパというやつなのだから、登場人物は美形にしろよと言いたい。
普通におかしいだろ。異世界人はみんな美形で、主人公の方が不細工だから、周りから邪悪なオーク扱いされて排斥されると聞いたぞ俺は。
変なところで異世界のお約束を外してくるのやめろ!
……いや、やめよう。
これはこれでそういう現実なのだ。
常識的に考えて、民衆全員美男美女の世界なんてあり得ねえもんよ。
自分の目の前にある現実と向き合わないのは拙い。
とにかく、現代の地球よりも、化粧や美容のレベル、衛生感覚の違いなどからして、この世界の人間は俺達からするとひどく醜かった。
皆、矮躯で、汚らしく、臭い。
ある程度見れた容姿なのは、先ほど会った騎士や、一部の金持ちのみだ。
普通、アニメや小説などでは、貴族は醜く、立場の低い人の方が美しく描かれるものだが、現実はその真逆という訳だ。冷酷だな。
「エルフ……?!滅亡したはずじゃ?!」
「ドワーフまで……!」
「伝説の種族じゃねえか!」
「そ、それに、あの男は……!あの白銀の髪色……!間違いない!」
「「「「古代人だ!」」」」
はあー?
何言ってるか分からんね。
俺の種族は、ヴォルスランドの最北端に住む最果ての民「エボリア」だ。
他にも、戦闘民族「オルグ」や、龍の民「ドラグーン」、かつてローマのような大帝国を築いたが見事に没落した「エルフ」、天変地異で行き来できなくなった地下の世界から来た住人「ドヴェルグ」など、様々な種族がキャラメイクで選べた。
だがどれもバランスが悪いので、初期ステータスが一番高いエボリアを選んだんだよな。
エボリアは初期ステータスが高いし、最初から初心級の魔法を覚えているのがアド。
だが、他の種族と比べると得られる経験値が0.75倍くらいと成長が遅いのだ。
まあ俺は最初からやり込むつもりで買ったからな。その問題はプレイ時間を伸ばすことで回避した。
何にせよ俺達は、ど田舎のジャガイモ顔しかいない工業高校に突如降臨したハリヴッドスターのような……例えようのない感覚を味わった。
そして登録だが、それはすぐに終わった。
名前、人種、外見的特徴、使用武器くらいしか聞かれないのだ。
どうやら、ギルド側は人員を管理するつもりがあまりないらしい。
冒険者ランクが少なくとも「銅」くらいにはならないと、正式にギルド員として認められないという訳だ。
その辺は、「ギルド」の名の通り徒弟制度だな。
丁稚や弟子には人権がなく使い捨てのゴミクズで、職人になって初めて一人前として認められる。
そしていずれは親方に……ってな。
冒険者で言うならば、「木片級」「鉄級」は丁稚、弟子。「銅」から職人なんだろう。
そして「銀」なら親方で、確かに親方ともなれば市民権も得られるだろうな。
要するに、「銅」未満の冒険者は、冒険者未満の存在だから、しっかりとデータを取ったりはしないって訳だな。
逆に言えば、「銅」なら、名前や人種以外にも、経歴に出身地、特技や本人の似顔絵に、受けてきた依頼についてや、素行面の記録、「銅」に格上げした職員の署名など、かなり詳細な書類を作られるようだ。
さて、とにかく、木片に名前と人種を書いてもらったものを首から革紐でぶら下げて、俺は早速依頼を受けに来た。
基本的に冒険者は学がなく文字は読めないのだが、依頼が張り出されている掲示板には、酷く簡素なことしか書いていない。
例えば、「ゴブリン」「十匹」「メッシュ村」のように、ごく簡単なことだけだ。
いくら文字が読めないとは言え、これくらいは文盲でも分かる。
大体にして、依頼を受注しにカウンターに依頼票を持って行けば詳細を教えられるしな。問題はない。
ああ、因みに、この世界の文字はちゃんと読めるぞ。
英語らしいからな。
で……、依頼票。
とりあえず、受付で話を聞き、今可能な依頼は全て受けることにした。
採取の依頼はこの場で全て終わらせることができたが、討伐の依頼は直接現地で戦わなければならない。
そして採取の依頼も、この街の人口は精々二、三千人なので、そう大きなやることはない。
ほんの少し、錬金術素材である薬草や、獣の革、獣の肉辺りを少し放出すると、それだけで終わってしまう。
薬草の必要量なんて高が知れているし、革や肉は現状そこまで足りていないという訳でもない。
結局、クリアできた依頼は七つ程度。
鹿革、鹿肉、傷薬の材料である弟切草やヨモギに、熱冷ましのドクダミ。避妊薬の鹿蹄草と、鎮痛剤のクサノオウ……。
漢方のように見えるが、ゲームにおいては、加工して薬にするときに魔法を使うので効果が大きく上がるという設定だった。
また、薬草集めの依頼が多いのは、冒険者は学がないので薬草採取とかできないという話で、依頼が余っていたらしい。
逆に、モンスターの間引きや獣狩りなどは、それを専門にやっている冒険者も多いので、依頼票を独り占めとはいかないんだと。
そんな訳で、今できる依頼は全て終わらせた。
次は、依頼を受けて、近くの森や山に行く……。
金もなく、身体の調子も悪い。
こんな日はプリンを食うしかない。
個人的な意見なのだが、プリンはファミマのが口溶けなめらかで美味い気がする。
あと今、面白半分で古代転生ものの設定を書いていたら、主人公が若干綺麗なパガン・ミンみたいになった。
古代人をまとめ上げて建国して国のトップになるには、やはり独裁者でもお出ししないと無理では?と言う判断。