「我が名はセルシウス!セルシウス・ナイトホーク!騎士ブラッドよ、私と一騎討ちをしろ!」
マインザッハ砦にて。
砦を攻めていたら、なんか出て来た。
グリンバルの騎士様だろう。
鋼鉄のフルプレートアーマーは、頬から側頭にかけて羽根のような吹返?みたいなのがあり、黄緑色のマントをつけている。
エングレーヴが掘られた金属の飾りが縁についた長方形の大盾を携えて、青い瞳を血走らせ、こちらに怒鳴り声を上げたその男。
間違いなく貴族。それも、ここでの地位が高い奴だろう。
その騎士は、大型のメイスと盾を構えてこう叫んだ……。
「ラピス神の加護は我にあり!貴様のような蛮人共に、我が国の領土を踏み荒らされる訳にはいかんのだ!」
ふーん。
まあ、殺すか。
「御託はいい、やるならかかってこい」
「覚悟ーーーっ!!!」
お、きたきた。
メイスは、1メートルにもなる大型で、洋梨型の扇状鉄板が並んだもの。確かハンガリーの方で使われてた型のものだったか?
色は黒色で、造りは頑丈。恐らくはこの世界の上級な金属でできていると伺える。
評価するならば、入門、初心、一般級を超えたその上のクラス、「熟練級」の武具だろう。
俺を傷つけられる武器ではあるな。
「フッ……ぉお!!!」
体格のいい騎士の、剛力の一撃。
最初の頃に森で見た、レベル20くらいの熊のモンスターならば、当たりどころにもよるが即死レベルの一撃だな。
横薙ぎに振るわれたその一撃を……。
「オラ」
俺は、ごく普通に、片手で防いだ。
日差しを遮るように手を翳しただけで、金属がぶつかり合うような轟音が撒き散らされる。
「ぬぅ……ん!!!」
しかし、一撃を弾かれても狼狽えず、武器を落とすこともない。
訓練されているな、手首と肩で柔らかく衝撃を受け止めていた。
少なくとも、この世界ではあまり見られない「武術」の技がそこにはあった。
そして連撃。
次は袈裟懸け、斜めにメイスを振り下ろす。
「おっと」
だがそこにはちょうど手のひらがある。
メイスの先端を握って……。
「さあ、どうす……」
「ハァアっ!!!」
問いかけようとした瞬間、メイスを離して、即座にシールドバッシュ。
「判断が早いな」
軽量な金属板でできている大盾でのぶちかましは、かなりの速度と実力が乗っていて、例えるならば軽自動車に撥ねられるくらいの勢いがあった。
恐らくは、騎兵の突撃にも真っ向から立ち向かえるであろう、凄まじい一撃だ。
「だが、相手が悪い」
「〜〜〜ッ!!!」
1mmも。
俺の足は、身体は。
この凄まじい体当たりを受けても、動かされることはなかった。
「誇れ。俺相手に、十秒保ったことを」
「おのれ———っ」
突き。正拳。
単なるパンチ。
左手で抱えた大剣のない、右腕での単なる拳の一撃。
それで、軽金属でできた大盾の美しいエングレーヴが、見るも無惨に凹んで変形した。
それと共に、鋼鉄のフルプレートアーマー、その装甲の上から見ても分かるくらいに、騎士セルシウスの左腕はへし折れて。
「———ァああ!!!」
そのまま、車に撥ね飛ばされたみたいに、数メートルも吹き飛んでいった。
綺麗な黄緑のマントは擦り切れ、鎧に刻まれた金色の飾りもへし折れて土に塗れて、本人も血を吐いて昏倒。
俺は剣を掲げて、勝鬨、咆哮を上げた。
どちらが勝者かは、明白だった。
そんな訳で、アスレッド軍の士気は最高潮。
こんな分かりやすい勝ち戦で、士気が上がらない訳はない。
一方で、この砦のエース的存在だったらしい騎士セルシウスを失ったグリンバル軍は、農兵達は勝手に逃げ出し、傭兵達も及び腰になっていた。
敵前逃亡は死刑!とか勇ましいことを人類がほざき始めたのは実は最近のことで、昔のこういう兵隊共は不利になると割と結構逃げるのだ。
それも仕方ないよな、強制徴兵されて、国を守る意思なんざ湧くはずもない。
で、騎士達もまた、負け戦であると判断したらしく、既に撤退の構えを見せている。
どうやら、ベテランの老兵、老騎士を残して、若い騎士達から逃すつもりのようだな。
俺は最初に、「逃げるなら見逃してやる」と宣言したので追うことはないが……、アスレッド軍の他の奴らは違う。
積極的に逃げる騎士を倒して、できれば捕獲しようとしていた。後で保釈金をせしめようという魂胆だろう。
アスレッドは基本的に儲かる産業がある土地じゃないからな。金勘定もできないような脳筋ばっかりだし。だからこういう臨時収入があると、ついつい張り切ってしまうみたいだ。
貧乏貴族の涙ぐましい努力ってやつだな。そっとしておいてやるか。
「どうだい、旦那ぁ!」
おっと、嫁のロザリアだ。
乱戦の最中、雑兵を文字通り蹴散らしながら、こちらにやって来たな。
「数が多いだけだ!ヴォルスランドの野盗とどっこいどっこいってとこだな!」
「そりゃ分かる!大将首は?!」
「その辺に転がしてある!」
因みに、喋っている最中も、その辺の雑兵を殺しまくってるぞ。
そうやって戦っていると……。
「う、うわあああっ!セルシウス様の仇ーーーっ!!!」
と、小さな影が背後から飛び出して来た。
「おっと」
ロザリアが軽く捕まえたそれは、子供。
十代前半くらいの少年だった。
恐らくは、騎士セルシウスの従士だろう。金髪碧眼の少年だ。
そいつは、手にナイフを持ち、俺に突っ込んできたようだな。
「勇敢だな、ガキ!」
ロザリアにとって、子供だろうと何だろうと、戦場に出てくるものは皆、戦士という認識。
何歳の子供だろうと、女だろうと、モンスターだろうと。
戦うものは容赦なく殺すのが、戦場の礼儀であると思っている。
殺し殺されるのが嫌なら、戦場に出てくるな、とも。
戦闘民族であるオルグ族の普遍的な考え方だ。
そしてそれについては、俺も同じ考えだった。
「う、うわあああっ!放せ!放せぇっ!!!」
「ガキ、これからお前を殺す。名乗れ」
「ひいっ!いやだ!し、死にたくない……!」
「あ"ぁ?!ふざけんじゃねえぞ!!!戦場に出たんなら、お前も戦士だろうが!戦士なら笑って死ね!吠えて死ね!!戦って死ね!!!」
「がっ、かは……!」
そう言ってロザリアは、片手でガキの首を掴んで吊り上げ、喉を握り潰そうとする……。
子供が死ぬのは良くない、それは、日本人の感覚からすると良く分かる話。
しかし、この世界の戦場ではそうじゃない。
それだけの話だ。
と言うか、見ず知らずの、それも敵方のガキを助ける義理も利益もないしなあ……。
ロザリアの手で死にゆく少年を眺めつつ、俺は、大剣を担ぎ直した。
もう敵が潰走しているからな。
終わりか、と。
気を緩めたその時……。
「『勇者』だ!『勇者ラディアス』が来たぞーーーっ!!!」
世界樹二周目うぇーい。三周目はまた今度でいいや。
久しぶりにメックウォーリアー5やります。おお、難易度調整ができるなんて神ゲーか?
今は何となくプログラマ転生の続きを書いてみました。とりあえず次は、外国の商業国から商人がすり寄ってきてどうすっかなー?みたいな話で行こうと思う。あとはダンジョン実習。