いわば、この辺りはまだまだ序章に過ぎません。
黒骸骨の最低限の訓練が終わり、試しに密輸を始めた頃。
「私はハイエルフ族、ギャラクシ部族が族長、ソレーユの娘、エトワールと申します。年齢は800程の若輩者ですが、精霊魔法と、通常の魔法、弓は少々心得があります。よろしくお願いします」
「俺はエルダードワーフ族、オブラ部族が族長、パラフーゾの娘、マルテーロだ!まだ240だが、戦士としては一流だぜ!」
「僕は……、ハーフリング族のリリィだよ。ハーフリング族は世界を放浪して過ごす種族だから、特に偉い部族の一員とかそういうのではないから悪いんだけどね。歳は56で、特技は斥候と少しの魔法と短剣かな」
俺の仲間になる連中が挨拶をしにきた。
「ええ、よろしく。私はハヅキ。勇者に選ばれた人間で、歳は25、変わった武器とナイフ、そして魔法を使います」
俺も挨拶を返す、と同時に軽く見てやる。
エトワール、エルフの言葉で星。その名の通り、星のように煌めく美しいプラチナブロンドのロングヘアが特徴か。背は少し高めで乳や尻もかなりデカい。人間ではあり得ない翠の瞳と長く尖った耳が人外としての特徴か。嫌味なくらいに顔が整っているのもエルフの特徴なのかね。
筋肉の付き方から多少は弓を扱えることが分かる。それでも、ハイスクールのクラブ活動並よりかは上か。
魔法が得意なんだろうが、それは見た目では分からねえな。人外の特定種族は魔力そのものが見えるらしいが。
だが、服装はフード付きのマントの下には短いズボンと長めの靴下にブーツで太ももは完全に隠してある、上は長袖のコートだな。背中に弓と矢筒、長めの杖を持っている。
マルテーロ、ドワーフの言葉で金槌。名前はそんなだが、女だ。身長は130cm程だろうか?小さいな。しかし、筋肉質な身体をしているのが服の上からでも分かる。耳が少し大きく、少し尖っている。手足も大きめだ。
長めの赤毛を紐で二つに縛っている。顔はガキっぽくて生意気そうだ。乳はまるで無いが、尻は筋肉がついていてよく締まりそうだ。
厚めの鉄の胸当てに、毛皮付きの革鎧。革には鋲が打ってあり、防御力の向上が図られている。金属のプレートは肩にもあり、その上で手甲、脚甲、太ももを隠すウエストアーマーをしている。武器は人間には扱えないであろう、肉厚な大斧と打撃武器としても使えそうな小型の円盾。武装は中々だな。
リリィは花の名前だろう。ハーフリングは各地を放浪して生きる種族であるが故に、決まった言語を持たないからな。ハーフリング語は無いって訳だ。そして、女だ。マルテーロより更に小さい上、子供のような見た目をしている。しかし、それなりには鍛え込まれているようだ。
顔はガキっぽいが穏やかそうだな。少し垂れ目だ。髪は栗毛を短めに切っているようだが、一房だけ伸ばされて、編んである。ガキの身体だが、穴があれば良いか。
服はズボンとシャツの上に、最低限の革鎧と小道具が入っているであろうポーチが腰の後ろに、腰の横にはダガーナイフ。
ふむ。
この世界基準なら割と有能そうなのを連れてきたんじゃないだろうか?
あまりにもこの世界が酷いので、俺の判定が甘くなっているところはあるが……。
人間はどうやら、聖剣を使った勇者に肖って剣を使うとか、そう言う慣習があるからと馬鹿でかい帽子をかぶる魔法使いが多いとか、頭がおかしいようだが。
俺からすればリーチの長い槍を持て、サイドアームに剣を持て、華美さに気を取られて余計な装備を持つな、脇や太ももは太い動脈がある急所だから隠せとか、色々言いたいことがあるのだが。
特にフルプレートアーマーの冒険者など、本当に気狂いだと思うぞ。
ああ、いや、ウーノみたいな人外は別だ。基礎的な体力や筋力が段違いだからな。
ウーノはフルプレートアーマーを着込んでいるが、あれは各種耐性、静音、軽量化のエンチャントがかかっているし、ユニコーン族は牛馬を凌ぐ筋力体力があるからな。総重量が30kgを超える鎧を着ていてもおかしくはない。
グラースのような獣人は、毛皮に覆われた部分は、生半可な刃物を通さないくらいに丈夫で、天然の鎧と化しているから、軽装でも良い。
罪人の解剖や人体実験などで調べた結果、身体の物理的な耐久力や生命力、回復力や病気などへの耐性も、上位の種族になればなるほど高いことが分かっているしな。
さて、こいつらは、人間と殆ど変わらない見た目をしている。性能は人間より少し高い程度と思って良いだろう。
装備も、身の丈に合ったもので、尚且つ最低限度の防御力や攻撃力を満たしているように思える。
頭の中がお花畑のアホを連れて行けと言われたら、見えないところで殺して、一人旅に切り替える気でいたが、これくらいなら連れ歩っても良さそうだ。
それに、エルフ、ドワーフ、ハーフリングも人外。こちら側に来てもらわないと困る。
何せ、エルフはその美貌から人間のペットに、ドワーフは工員に、ハーフリングは……、まあ良いとして。
こいつらは、放っておくと人間側を富ませる結果になってしまうからな。
人間の奴隷として飼い殺されるくらいなら、俺の下僕になった方が幸せなんじゃねえかな。いや、悪意抜きで。
さて、例のクソアマに一言挨拶してやって、早速出発。
適当に歓談しながら買出しをする。
「では皆さん、買出しをしましょうか。取り敢えず、船旅の最中に必要なものは買い込みましたから、今後の旅で必要そうなものと、嗜好品なんかを持てるだけ買い込むことにしましょう」
「お堅いよ勇者サマ!」
「マルテーロさん?」
「呼び捨てで良いよ!俺も名前で……、呼びづらいな。ハズキ、ハヅ、ヅー……?」
「できれば、ジンとお呼び下さい」
「そっか、ジングージ、だもんな」
「では、私もジンさんと呼ばせていただきますね」
「僕もジン君って呼ばせてもらうね」
「エトワールさん、リリィさん」
「私にも「さん」なんて要りませんよ」
「僕もリリィで良いよー」
「それに、敬語も無しで!俺達、仲間だろ!仲良くしようぜ!」
「……分かったよ、みんな。これからよろしく」
ニコニコと話しかけてくる三匹のメスをあしらう。
ぶん殴って犯してやりたい衝動に駆られるが、我慢しなきゃなァ?
クハハ……、これは「ネタバラシ」の時が楽しみだ。
「そうだね、提案があるんだけど」
「何ですか、ジンさん?」
「出発前に、お互いの実力を確認するために、軽く冒険者としての依頼を受けてみようと思うんだけど」
「そうですね、連携やお互いの弱点の確認などが必要でしょう」
「賛成だぜ!」
「僕もそれがいいと思う」
じゃあ、やるか。
黒骸骨に人間国家を裏から支配させて良いように操りつつ、転生者に適度な冒険をさせて、それを神視点で見物。最後はプチっと潰すという、ニャルラトホテプみたいな男(主人公)が企画したトゥルーマン・ショーみたいなことをやるのがこのssの趣旨です。
第一転移者は中学生のオタク系女。『魔剣の勇者編』。それは確定。
次に、テンプレなラブコメ的転移者の男子高校生一人、女子高校生三人のパーティ、『光の勇者編』。
高校生のひとクラスごと転移による、『色の勇者編』。
テンプレ高校生四人+「普段はクラスの若干いじめられっ子で目立たない一般人(笑)」一人の『巻き込まれ転移者編』。
アラサーのおっさん一人の『理の勇者編』。
までを予定しています。順序は前後するかもですが。