次に呼んだのは、マヤ、キャシィ、レアの三人。
「この人選は何でござるか?」
「アホそうなので適当なこと言っても大丈夫な奴らを呼んだ」
「ひでーでやんす?!」
「あっはっは!アホそうなのは当たってるね!」
東の国の剣聖、龍人のマヤ。黒い髪を白紐で縛った、天然な印象の美女。基本的に何も考えてない。
豹、それもヴォルスランドでは希少種であるチーターの獣人、キャシィ。本物のチーターのような黄褐色の髪を適当にざく切りしている。顔は良いが言動がかなりアホっぽい。
最も旧き、最初の人狼、レア。黒いウルフカットの頭からは狼の耳、腰には尻尾。クールそうなハンサム女子に見えるが、頭空っぽのアホ。
アホ相手ならまあ、適当にやっても良いだろう。
俺は、肩の力を抜いて対応する。
「で、話は理解してるか?」
「「「分かんない!」」」
ヨシ!
何も良くないが、ヨシ!
「じゃあアレだ、なんかあんまり記憶がないから、お前らの話を聞かせてほしいってことだ」
「へ?良いでやんすよ。えっとねえ……、おいらはボスのこと、大好きでやんす!」
んー、何も分からなくて気持ちがいいな。
俺はキャシィを雑に撫で回す。
「ボスは、チャチでチンケな盗賊だったおいらを拾って、一端の戦士になるまで仕込んでくれたでやんす!感謝感激でやんす!」
「お、そうだな」
そんな感じだったな。
「最初は、そんなボスに恩を返したいから頑張ってたでやんすが……、よく考えたらボスの隣が一番居心地が良いなーって」
「ふむ」
「ってか、ボスがちょっとおかしくなったとしても、世界で一番強くてカッチョイイ戦士で、金持ちで何でもできて、おいらのこと沢山愛してくれるのには変わりないでやんしょ?何も困ることないでやんすよ?」
なるほど、理解できる。
「それに、おいらはもう、ボスの匂いを嗅ぎながらじゃないとイけない体なんで……♡」
そう言いながら、俺に抱きついて胸板の匂いを嗅ぎ始めるキャシィ。
猫だからなこいつ。こういうことをする。
尻尾の付け根のところをトントンしておいてやろう。
「と言うか、まーたそんなことを言い始めたでござるかー?もう良いでござるよそう言うのー!殿は、『悩みながらも成長する等身大ヒーロー!』みたいなのじゃないでござろう?」
元も子もないことを言い始めるマヤ。
まあそれはそう。
「それはそうだが、お前らにちょっとくらいは誠実そうなポーズを取っておいてやろうかなーっていう、俺なりの気遣いだぞ?」
「もうそれを口に出してる時点で気遣いできてないでござるよね?」
まあそれはそう。
「でも、後々になってお前らに『なんか違う』とかって言われたらなんか辛くね?」
「ンモー、殿の癖になんか可愛い悩みを……。あのでござるな、殿?拙者らは、殿がどうなろうと、永遠にお供いたすと誓っているんでござるよ」
「だから、俺がその……」
「その辺りはもう納得済みなんでござるー!そりゃあ、殿もこうなって以降はなんか変に慎重になったでござるし、拙者らにもすごーく気遣いしてくれてるんで、変だなーとは思ってるでござるけど!」
変だなーって思われてたのか……。
「でも!それも殿の新たな一面なのだと、拙者らは納得したんでござるよ!……寧ろ、こうなっているのに、優しくて逞しいままでいてくれる殿に、拙者らはバリバリ惚れ直してるんでござるよー!!!」
ふーん。
「マヤ……、かわいいなあ!」
好き。
気安く話せるタイプの女の子……、良いよね!
「と言うか、殿の言葉が本当なら、普通は戦えないし、戦おうとも思わないのでござるよ?本当に一般人が殿の肉体を得たところで、戦火に身を晒そうなどとは思わないのでござる。それが、殿は、前と変わらずで……」
あー、そうね。
その辺は……、俺の性格によるものかなあ?
前も言ったが、俺は日本人であったこと以外は何も覚えていない。
名前も、顔も。家族も仕事も。
……だがしかし、持っている知識や技能はまともじゃない。
コンピュータやVR機器などの取り扱い、軽いプログラミング能力。まあこれは良い、ゲーマーの基本だからだ。
けれど、ちょっと非合法っぽい感じの知識が多いのはこれ、何なんですかね?
バレない死体処理の方法とか、拷問のやり方とか、悪用できる法律の知識とか……。
俺って何やってた人なの????
怖いねえ……。
「殿って本当に一般人だったのでござるか?盗賊やモンスター相手とはいえ普通に殺すから、イカれているのかなあ、と……」
うん、はい。
「うん……、その……、一般人ではないのかもしれないが、社会の中で生きて、VRゲームを趣味にしているくらいには一般的だったと思う、ぞ?」
「ええー?本当にござるかー?」
因みに、だが。
こうして話している最中も、マヤは俺の腕を抱きながら隣に座り、俺の足に自らの尻尾を絡ませている。
で、レアは。
「ふふっ、あまり難しい話はしないでもらえるかな?」
「どうしてだ?」
「僕には何言ってるかよく分かんないから、さ」
と、クールなドヤ顔で、自分はアホですと宣言してきた。
『原初の人狼』という非常にカッコいい立場でありながら、これなのだ。かわいいね。
側から見れば、女子校で王子様と呼ばれている女子生徒みたいな、凄え美人なのに中身これなの面白いよな。
「ふふふ……、なんか最近、主人君は難しい話が好きだね?嫌いじゃない、よ?聞いていると、なんか頭が良くなった気がしてくるから……!」
だ、駄目だこいつ!
俺がこんなに話したのに、何にも理解してねえ……?
「だ、大丈夫かお前?ちゃんと説明を聞いてたか?」
「うん、もちろんさ。その上で、言うよ?……よく分かんないけど、僕は主人君大好きさ!」
困った……、ちょっと勝てない……。
「本当に分からないのか?」
「ふふっ、なんかいっぱい考えてたら、頭がゴチャゴチャして訳分かんなくなっちゃってね……」
うわあああ!
何で何も分かってないのに、そんな賢そうなツラができるんだ……?!
「でも、僕はね?ちゃんと分かっているのさ」
「何を?」
「なんだかんだ言って、主人君は僕とずっと一緒にいてくれる、ってことをね!」
う、うん……。
まあ……、うん。
「お前がそれでいいなら良いんじゃないかな……?」
予想以上のアホだったが、本人が満足してるなら良いや……。
よーし、皆さんの応援のおかげでプログラマ転生の続きを6話ほど書けました!
もっと頑張りたいところですが、もう正月休みも終わって力が出ない……。
百年くらい休ませてくれ……。