ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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お菓子作りが得意な傭兵。

でもなんか、ゴッドファーザーのイメージなのか、悪者って甘いもの好きそうなイメージがあるよね。

故に主人公は甘いもの好きです。好き嫌いはありません、人肉も食ったことあります。

ってか、ギリギリの戦場じゃ好き嫌いなんてできないし。


44話 船に乗って

船に乗りながら、パーティメンバーと会話をする。

 

狭い船だしな、嫌でも毎日顔を合わせるだろうよ。

 

と、言っても、数日間の短い航海だ。すぐにスパシアに着くだろう。

 

スパシアは、スペインとフランスを合わせたような国土の、大きな反魔人国家だ。

 

しかし、会話か。

 

あとで裏切った時にどんな顔をするかが気になる。劇的なショーの為には、準備も大切か。

 

では、そうだな。

 

「そういえば、聖王国までの船旅はどうだった?」

 

「どうもこうも……、最悪だったぜ」

 

「食料には蛆が湧いて、気の抜けて酸っぱくなったエール、腐った塩漬け肉……。あらかじめ持ち込んでおいたエルフの森の果物で飢えをしのぎました」

 

「僕もアイテムボックスの非常食でやり過ごしたかな。海の上の食事は本当に美味しくないんだよ」

 

会話をする。

 

どうやら、この時代の航海は辛いらしい。

 

アイテムボックスの魔法やクリエイトウォーターの魔法がある分、新鮮な食料や水の確保は一応は可能なようだが、魔法の使えない一般的な人間はやはり、大航海時代以前の船旅と同じような様相だったらしい。

 

アイテムボックスの中身は時間が止まるからな。エトワールとリリィは、長い船旅になることを予想して、あらかじめアイテムボックスの魔法で食料を確保していたらしい。

 

水は、生活魔法の「クリエイトウォーター」で何とかなる、入浴や洗濯も、生活魔法の「クリーン」でどうにかなるからな。

 

「そうだったのか。でも、私のアイテムストレージには大量の食料と武器、道具や材料があるから、道中の物資の心配はいらないよ」

 

「そりゃいいぜ!って、どこにそんな金があるんだよ?」

 

「ダンジョン攻略で世界記録を更新してね。ダンジョンの宝と素材を売り払って、莫大な資金を手に入れたんだよ」

 

「へー、いくらくらいだ?」

 

「金貨五千枚くらいかな」

 

「ご、五千?!!そりゃ凄え!一生遊んで暮らしてもなくならないぜそりゃあ!!」

 

「だから、道中で資金の心配をする必要は……」

 

と、俺が言うと。

 

「そういうのは駄目だよ、ジン君」

 

リリィが口を挟んできた。

 

「それはジン君が頑張って稼いだお金でしょ?僕達も路銀は持ってるし、足りなければ現地で稼ぐんだからね!」

 

金銭は受け取らない、か。

 

「分かったよ。でも、食料と物資くらいは出させてくれないかな?アイテムストレージには私の一生をかけても使い切れない程の量があるからね」

 

「でも……」

 

「元々、豊作や大漁で余った大量の物資を格安でまとめ買いしたものだからね、君が思っている程懐は痛んでいないとも」

 

「それなら、ジン君にお金を」

 

「いやいや、これ以上お金があっても困るよ。私は子供も親戚もいないし、これ以上稼いでも意味がないんだ」

 

「……うーん、分かったよ。ジン君がそう言うなら」

 

よし、これで「武器庫」の物資を使っても許されるな。

 

アイテムストレージの魔法も実際に作ったが、使うのは殆ど「武器庫」だ。

 

いつも言っているが、「武器庫」は魔法でもスキルでもない、もっと上位のもの、言わば権能だ。

 

リスクなしで、無限に物資を生成できる、と言うのは、技術がどれだけ進歩したとしても追いつけないように思える。

 

 

 

今、俺達は甲板の上にいる。

 

船室は空気が悪く、息がつまるからな。

 

頬を撫でる海風は程よく冷たい。

 

さて。

 

甲板の上に備え付けられた、客用の腰掛けに座りながら、取り留めのない話を。

 

この世界での活動自体は十年と少しであるが故に、少年時代を捏造しなければならないが、まあ、嘘は得意だ。

 

銃を作り出した錬金術師の子供で、この世の理を追求する「カガク」と言う学問を修めたこと、少年時代は銃を使った戦闘術と魔法の鍛錬に励んだこと、青年時代は冒険者としての活動で様々な経験をし、各地を転々としたことを説明した。

 

その間、メス共の生い立ちについてを話半分に聞いたりしたな。

 

まあ、特に変わったことはねえよ。

 

「そうだ、ヨロパ地方のガリアで飲食店を経営していることは言ったね?そこで出す予定の飲み物とお菓子があるんだけれど、どうかな?」

 

と、軽く媚を売っておく。

 

「良いのかい?」

 

「ええ、甘いものが苦手でなければ、だけど」

 

「甘いものが嫌いな女の人なんていないさ!」

 

そうなのか?別にそんなことはねえんじゃねえかな……。

 

「あ、私も甘いもの大好きですよ」

 

「俺も好き」

 

そうか。

 

今回は本当に、俺が経営しているビストロ・グリーズで出す予定の菓子と俺が飲みたいだけだがエスプレッソもついでに出す。

 

「どうぞ」

 

「「「おお……!」」」

 

どうした。

 

「初めて見るな……」

 

「小麦の生地を揚げたものと……、これは?」

 

「羊の乳のチーズの匂いだね……」

 

出した菓子は、カンノーリだ。

 

暇潰しに見たマフィア映画にも出てたっけな。

 

イタリアの菓子で、揚げた筒状の生地に、甘いリコッタチーズやマルサラ酒なんかでできたクリームを詰めたものだ。

 

シチリア辺りで食われてたのが、イタリア系の移民がアメリカでも作るようになって……、まあ、その辺はどうでも良いか。

 

俺はカンノーリを齧る。

 

ふむ、美味いな。

 

「……驚いた。こりゃ美味え」

 

「本当ですね……。これ、食べたことはありませんが、美味しいです。香りも良くって、口当たりも良いですね」

 

「んー、少なくとも、メリカでは食べたことがない味だね。どこのお菓子なんだろう?」

 

「オリジナルですよ」

 

因みに、カンノーリは何故か、黒骸骨の面子に好評だった。

 

さて、メス共は、食べたことのない菓子に驚きつつも、ティータイムを楽しんでいた。

 

 

 

船旅は、そのようにして、美味い食事を食わせていたら、すぐに終わった。

 

明日からはスパシアでの旅だな。

 

まずは陸路で、人外国家を避けつつ、できるだけ魔大陸(オーストラリア)に接近、近づいたら船で移動、と言うことにする。

 

魔大陸からの船に乗れば良いからな、特に困ることはない。

 

と、言うより、魔大陸で魔王を倒した後にネタバラシ、かね?

 

じゃあ、行くか。




サクッと進めて転生者いじめします。

二、三年くらい一気に話が飛びます。

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